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3月9日(月)

今日、明日とシネ・リーブル梅田とシネ・ヌーヴォの2会場で開催。
コンペティション部門国際審査委員長であるパン・ホーチョン監督の新作『アバティーン』が日本初上映されました。

プロデューサーが語る映画『運命というもの』

監督の世界感を未来に描いた『デュアル・シティ』

教科書に載らない歴史を描く意欲作『新しき民』

日本映画を愛するイ・ユンソク監督『雨時々晴れ』

 

プロデューサーが語る映画『運命というもの』

コンペティション部門『運命というもの』プロデューサーのダン・ヴィレガスさんが会場に現れると、会場から拍手がおこりました。ダンさんと本作のアントワネット・ジェダワン監督は実生活でもパートナーとのこと。ダンさんは観客に手を振り、「この映画が皆さんの目にとまってうれしいです。楽しんでください。」と挨拶。

上映後、再度登場されQ&Aが始まりました。

「とてもキュートな恋愛映画でした。主役の2人について教えてください。」との問いに「主演の二人は共にフィリピンでは有名な役者です。アンジェリカ・パンガニバンさんは本映画の演技でシネマワンオリジナル賞を受賞し、J・M・デグズマンさんは別の映画で同賞を受賞しています。」とのこと。また、劇中に出てくる、『ワンモアチャンス』という映画は、フィリピンの古典的映画ともいえる作品なんだそう。

本作が製作サポートを受けている助成金について聞かれると、「本作は、脚本でシネマワン・オリジナル映画祭で賞を受賞しているので、200万ペソ(約548万円)の助成金が出ました。ただ、実際に製作にかかった金額は260万ペソ(約712万円)でした。(1ペソ=約2.74円で計算)」と明快なお答え。

また「主人公が自分探しのために行く地、バギオとはどんな街ですか?」の質問に、「フィリピンは基本的に暖かい国ですが、バギオは高地のためとても寒い所です。避暑地として人気で、そこを訪れる人々は、主人公たちのように様々なことに思いを巡らしたりするそうです。首都マニラからはバスで約4時間ほどです。」と、ロケ地巡りツアー情報もいただきました。

「劇中に出てくる本(全編通して象徴的なアイテム)は、出版されている本なのですか?」の問いには、「これは、監督が何年か前に作った、オリジナルの話です。これを脚本にして映画を製作しようという案もあったのですが、結果、このようにこのお話をキーアイテムとした映画になりました。」と制作過程のお話しも。この本の物語も気になります。

次回作は、今回と同じように、ロマコメ映画で、脚本を製作中とのこと。待ち遠しいです。

お客様一人一人に対してとても丁寧に、笑顔で受け答えされていましたダンさんは印象的。

 

 

 

監督の世界感を未来に描いた『デュアル・シティ』

インディ・フォーラム部門〈第11回CO2助成作品〉『デュアル・シティ』がシネ・ヌーヴォで世界初上映。上映前の舞台挨拶では、(写真左から)馬渕智未さん、谷啓吾さん、三坂知絵子さん、青葉みなみちゃん、新津ちせちゃん、長谷川億名監督、原プロデューサーが登壇しました。出演者のみなさんも初めて観るとのことで、とても楽しみなご様子。

上映後のQ&Aでは富岡邦彦CO2事務局長、長谷川億名監督、原智広プロデューサー、三坂知絵子さん、谷啓吾さん、馬渕智未さんが登壇。長谷川億名監督の初長編作品ということで、自らの世界観を成立させることに力をいれたとのことでした。冒頭のコラージュには韓国の風景も少し入っていましたが、今後は韓国やベトナム、アフリカなどの風景も撮影をしてみたい、とのこと。アクションシーンなど、それにあわせたCG効果もたくさん使っているので編集にも時間がかかったそうです。旅の出会いのような作品にしたいため、出演者にあってからシナリオを変えたという演出の裏話も。

  • 長谷川億名監督
  • 原智広プロデューサー
  • 三坂知絵子さん
  • 谷啓吾さん

汚染や難民など、露骨にありえる20年後を描きたかった、ということで近未来の2030年にこだわったという本作。「この作品は近未来日本を舞台にした「日本零年 三部作」の2作目。1作目の『イリュミナシオン』も今後上映したい。」と原プロデューサー。長谷川監督の世界がどう広がるか今後も楽しみです。

 

 

 

教科書に載らない歴史を描く意欲作『新しき民』

続いてシネ・ヌーヴォでインディ・フォーラム部門『新しき民』の舞台挨拶とQ&Aが行われ、山崎樹一郎監督が登壇されました。

会場をシネ・ヌーヴォXにうつしてのQ&Aは立ち見がでるほどの満席となりました。

岡山県真庭市にお住まいの山崎監督。お父様のご実家でもあるこの場所で、かつて山中一揆があった!という、教科書にはでてこないことを、自分たちの映画として撮りたいと3年前から考えていたそう。「全編、江戸時代の雰囲気をだすのは大変ではなかったでしょうか?」と質問に「山は当時のままで。築120年の自宅を江戸時代風に逆リフォームして撮影をしました。」と監督。観客からは「実際には何が新しい(民)なのか?」と聞かれ、「“民が手をつなぐことによって民衆ができる”。そんな状況の中、民衆から背くのが主人公・ジヘイであり、新しい民なのだと思っている。」と監督は答えられました。

「エンドロールで協力者の名前がたくさん出てきましたが」との質問に、「出会った人たちと一揆をおこすかのように、自発的に集まってくださった方々。エキストラのほか、衣装やわらじ作り、食事の準備などもお手伝いいただいた。」とのこと。冒頭と最後にも出てくる農村歌舞伎の回り舞台は「横仙歌舞伎」に出ている実際の役者さんたちや、学生時代に監督がみられてとても幻想的だったので取り入れた、という「東栄町 花祭り」のシーンなど、監督の思いと一緒に岡山の文化的エネルギーもふんだんに取り入れられた一作です。

『新しき民』は10月から、東京、大阪、名古屋と全国で公開予定。

 

 

 

日本映画を愛するイ・ユンソク監督『雨時々晴れ』

最終回、インディ・フォーラム部門『雨時々晴れ』のイ・ユンソク(李允石)監督が上映前の挨拶に駆けつけられました。

イ・ユンソク監督は成瀬巳喜男監督、溝口健二監督たちや、日本映画がお好きで、2005年日本での映画作りを決意して来日された方。

「成瀬監督たちは女性を描き、彼女たちは監督のミューズ的な存在になる。だからこそ、自らの作品でも、女性を軸に描きたかった。」と流暢な日本語でお話しでした。