開催レポート  ←前のページ次のページ→
  • LINEで送る
3月15日(日)vol.2

 

劇場映画デビュー竹内道宏監督の「SFアイドル」映画『世界の終わりのいずこねこ』

インディ・フォーラム部門『世界の終わりのいずこねこ』の上映前舞台挨拶には、キャップとメガネ姿の竹内道宏監督が、はにかみながら登場。監督は、この映画を「実在の大阪在住のアイドル・いずこねこ(茉里)のSFアイドルもの」と紹介。クラウドファンディングで募った資金450万円で制作するに至ったと話されました。

竹内監督はアーティストのライブ動画を多く手がけられている映像作家ですが、本作は劇映画初監督作品。上映後のQ&Aでは「今までライブ映像を制作してきたが、劇映画の制作は初めて。この映画で、生々しさをどう物にぶつけるかが課題としてあった。」と語られました。

観客から「この映画は隕石が落ちてきたり、木星人が出てきたり、ぶっ飛んだ設定だが、脚本の世界観をどうイメージして映画をつくったのか?」という質問に「費用が限られているので、やれるところからリアリティーを出すようにした。大前提として大阪が舞台なので、いずこねこの大阪弁を生かしてリアリティーを出そうとしたり、隕石は共同脚本の西島大介さん(ミイケ先生役で出演)にイラストで書いてもらって表現した。」と監督。

また、「映画では先生とお父さん以外の男性があまり出てきませんでしたが……」との感想には、「物語を進める上で女の子映画的側面を見せたかった。映画の中に出てくるクラスメート役の女の子達もアイドルを登用している。実は、この映画は、いずこねこ(茉里)としてのアイドル活動が終了すると決まってから決定したプロットだったのです。いずこねこの活動の終わりが見えてからの制作スタートなので、アイドルの“今”の輝きを撮りたいということがありました。」と話されました。

ちなみに、劇中で主人公のイツ子が全宇宙にリアルタイムで配信する動画のコメントは、監督が一つ一つ書き込んでいったそう。ロビーでも観客の方々の質問に丁寧に答えていらっしゃいました。親しみやすく誠実な雰囲気のある竹内道宏監督でした。

 

 

 

ベテラン監督が込める映画制作への思い『セーラ』

コンペティション部門3回目の上映となるコンペティション部門及び特集企画《Special Focus on Hong Kong2015》の『セーラ』は、完売の大盛況となり、上映後にハーマン・ヤウ監督のQ&Aが行われました。30年近いキャリアを誇る監督。『イップ・マン 誕生』といったアクション以外に『セックスワーカー』『崖っぷちの女たち』、そして本作『セーラ』といった社会派ドラマを制作し、作品の幅を広げています。司会をされた評論家の宇田川幸洋さんは「20年前に、ハーマン・ヤウ監督作品で涙が出るなんて考えられなかった」と語り、会場は爆笑となりました。

観客から映画の成り立ちについて質問が挙がり「チャップマン・トーが『雛奴』(=プロスティテューション)という中国語のタイトルだけを持って来まして。内容何もなくて(笑)、後付けで私が内容を考えました。」と監督。そして、このストーリーはすぐに思いついたそうで、ベースとしたのは、劇中、効果的に使われている曲「ケ・セラ・セラ」の、将来がどうなるが誰もわからないよねという歌詞だったとか。

また、最近の監督作品にセックスワーカーをテーマにしたものが多いことについて司会者から質問がでると「映画を制作する者として、娯楽的な作品だけではなく、社会的な問題も取り上げて行かなくてはならないという使命感があります」とし、社会的問題の中でセックスツーリズムといった、性的なサービスを提供する人たちに関心を向けて行こうという方向性、そして資本主義社会への問題意識が最近の作品傾向に現れている、と語りました。「プロスティテューションは身体を売ってお金を得る訳ですが、そういう人達は世間から偏見を持たれてしまうという状況があります。また、第三世界などの後進国では身体を売る事がありますが、資本主義社会でも身体ではないけどプライドを売って人間としての価値を貶めている人も沢山います。そして資本主義が何を売ってしまっているのか、ということを皆さんにもう一度考えて頂きたいと思います。」と話されました。

サイモン・ヤムさん演じる男性が、無償の愛ではなく身体を提供されることでセーラの援助者となります。その描き方の意図について観客から質問が。それには、監督自身の人生に対する見方が反映されているとお答えがあり「例えば、私はジョン・レノンがとても好きなのですけど、彼のことをあまりよく知りたいとは思わない。知ってしまわないほうが良いという風に思っています。このストーリーでは人間性をどんどん発掘していく訳ですが、誰しもが何か汚点を抱えています。もちろん私自身にも言えることであって、完璧な人間はどこにもいないのです」と語られました。

Q&Aは時間切れとなり、大拍手ともに終了となりました。ハーマン・ヤウ監督の今後の作品に更に注目したいと思います。

 

 

 

前代未聞の爆笑挨拶!でヒートアップ『全力スマッシュ』

コンペティション部門及び特集企画《Special Focus on Hong Kong2015》の『全力スマッシュ』の上映前にデレク・クォク監督とヘンリー・ウォン監督が挨拶に立たれました。この上映回のチケットは完売。スケジュールの関係で、上映後のQ&Aができなくなってしまったものの、できるだけファンと話したかった様子の監督たちから、少し長めの挨拶があり、2人とも冗談を交えてお話しされ、会場は笑いに包まれっぱなしとなりました。

「みなさんこんにちは。今回のアジアン映画祭でこれが最後の上映になるが、上映してもらい嬉しく思う。中には3回の上映を全部見にきてくださってる方もいて、心からファンに感謝している。」とデレク・クォク監督。ヘンリー・ウォン監督は、「またシネ・ヌーヴォにこれてうれしい。2回目だが、内装や雰囲気など、この劇場がとても好き。『全力スマッシュ』は全くの喜劇なのでぜひ楽しんでほしい。今回音も大きくして上映しますが、びっくりしないでください。香港映画は音が大きいものと思ってもらえれば良いと思います。」また、「Q&Aが無くて申し訳ないが、今のうちに聞いてもらえれば恋愛関係について以外の質問はなんでも答えます!」と司会者が挨拶を締めるよう促すのを横目に話をし続けるデレク監督に会場は爆笑。

  • デレク・クォク監督
  • ヘンリー・ウォン監督

観客から監督が俳優として映画に出演されているそうだが、という問いかけにヘンリー監督は「見ていただけたらわかりますように、私は演技が大好きで、俳優みたいでしょう?今回の映画も出てますので、じっくり観てください。本当は俳優になれなかったので、しかたなく監督をやってるんです。」と笑わせました。

続けてデレク監督は「もし今回私の演技がOKだと思ってくれたなら、次に私が俳優として出る映画の予定があるのでそちらも見て頂きたいです。それは、パン・ホーチョン監督と2人で俳優をやります。内容は、地球上の男の人が全部死に絶えてしまって、私たち2人だけになってしまうんですけど(笑) 男が地球上に2人だけになってしまったので、全ての女性たちが私たちを追いかけてきて、襲われてしまう、というような役なんです。」これは、まさに、『アバディーン』の上映時にパン・ホーチョン監督が話されていたモテモテの役を演じられた作品のお話!

大いに盛り上がった大爆笑連発の挨拶。まだまだ話しは尽きない状況に後ろ髪引かれながら監督たちは退出されました。