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3月12日(木)vol.3

 

イスタンブールからカッパドキア。次作こそは日本で撮影?!『カッパドキアの甘い恋』

特別招待作品部門『カッパドキアの甘い恋』登場。

上映後、シネ・ヌーヴォXに会場を移し、バーナード・チョウリー監督と脚本のラフィダ・アブドゥラさんのQ&Aが行われました。終始ニコニコ顔の監督は美しい英語ではっきりと話してくださったため、観客のみなさんも通訳の言葉を待たず、リアルタイムで笑ったり拍手を送ったり。会場は大きな盛り上がりを見せました。

  • バーナード・チョウリー監督
  • ラフィダ・アブドゥラさん

エジプト、ナイル川を背景にした原作小説とは違い、本作ではトルコのカッパドキアが舞台として選ばれています。「前作(『イスタンブールに来ちゃったの』OAFF2013)もそうですが、トルコを舞台に選んだきっかけは?」と尋ねられた監督。「私たちの1作目は地元マレーシアが舞台でしたが、2作目はどこかを目指して旅に出るというものでした。“このまま旅を続けよう”と思って、外国を舞台にロマンチックな映画を作ったのが前作です。トルコを選んだのは、マレーシアと同じ穏健なイスラム教国家で共通項が多いため、マレーシア人が興味を持ちやすいと考えたからです。景観も美しく、食べ物もおいしいですしね。」また、「(原作の)ナイル川は観光客でいっぱいなので、あまりロマンチックとは言えません。その点、ラフィダが書いてくれたローズバレーで二人きりのシーンは良かったです」と脚本を絶賛。

ラフィダさんも原作について触れ、「小説の中の主人公は内省的な人物でしたが、私はもう少し現代的にアレンジしました。モノローグをビジュアル化するのが難しかった」と話し、監督が「脚本にはラフィダの個性が出ていますね。強い女性のキャラクターが出来上がりました」と続け、会場の笑いを誘っていました。

いつも下見は自分ですると言う監督。今回はカッパドキアからイズミールまで車で1500kmを走破したそうです。トルコ文化省の対応がよかったため、世界遺産での撮影はスムーズだったものの、普通の場所での撮影ほど手間がかかったそう。

また、撮影中の面白いエピソードとして、ベイシェヒルのモスクで起こった「事件」のことを話してくれました。このモスクは、千年以上前に作られたタイルが美しいことで有名です。撮影中、細心の注意を払っていたにもかかわらずタイルの一部が欠損し、監督は「ああ~やっちゃったよ~」と真っ青に。ところが調べてみると、欠けた部分は1980年代に作られたレプリカだったため、胸をなでおろしたそうです。「できれば日本の歴史あるところでも撮影したい。今度は本当に本当に注意するから!関係者の方をご存知でしたらそう伝えてください!」と叫ぶ監督に、会場は再び笑いに包まれました。

そして観客から主演女優のヌル・ファズラさんについて質問。「彼女はとても美しく才能ある女性で、私たちの以前の作品にも出演してもらっています。有名なのでスポンサーもついて助かっています。」とラフィダさん。女優業のほかにも自らの服飾ブランドを展開するファズラさんは、国際的な活躍の場を求めてニューヨークに滞在中とのこと。

監督次回作、舞台は上海だとか。でもその次は……「大阪を舞台にした脚本をラフィダに書いてもらいましょう」と監督。期待は高まるばかりです。

 

 

 

日本発アクションヒーローがインドネシアで大活躍!祝・凱旋初上映『ガルーダの戦士ビマX』

特集企画《ニューアクション!サウスイースト》『ガルーダの戦士ビマX』の上映前に、SF映画に関して様々な活動をされている浅尾典彦さんが駆けつけてくださいました。

この作品は、元々はテレビシリーズ『ビマ』として日本人スタッフ9人とインドネシア人スタッフ100人の力を合わせて作られたもので、現在もインドネシアで第2シーズンが放映されているそう。そして、なんと視聴率が20%を超える人気だということ。今回は、ぜひ日本にも紹介したい!ということで前シーズンの『ビマ』と今シーズンの『ビマX』をつなぐ2話の物語を合わせてお披露目。

ウルトラマンを代表作とする石井てるよし監督、おかひでき監督が中心となって作り上げたこのインドネシアのヒーローに対し、浅尾さんは「物語のなかにはアクションだけじゃなく家族愛やこどもへの教育なども盛り込まれている」、「日本でこの劇場にいる皆さまが一番初めに見ることができるんですよ!」と胸を張って紹介されました。

 

 

 

初めてづくしだった映画製作を語る『ドラゴン・ガール』

特集企画《ニューアクション!サウスイースト》『ドラゴン・ガール』。この作品は、ブルネイ初の長編映画で、マレー系のクンフーと言えるシラットとヒロイン・ヤスミンの成長を描いていく青春アクション作。

ハツラツとした笑顔が印象的なシティ・カマルディン監督が上映前に登場。ブルネイの紹介に続いては、国で初の映画製作に取り組んだことについて、「映画産業というものが存在しない所で撮影するわけですから、クルーもいないし、機材もない、そういう面ではたくさん苦労がありました。一所懸命短い期間でたくさんのことを学びながら、周辺の国々の先輩からたくさんの知恵を拝借して、友人たちを総動員してつくりました」と語られました。また「アクション映画は暴力的な側面がクローズアップされがちで、自分の身を守ってとにかく勝ち抜いていく、そういうテーマの映画が非常に多いと思うんですね。この映画は、家族の絆を重要なテーマにすえ、特に娘が成長する中での父親との関わり合いを大きく捉えています」と説明されました。お父さん子だったというシティ監督の自身の気持ちも作品に反映されており、ブルネイの人々の日常生活も伺うことができます。伝統武術としてのシラットの魅力も捉えつつ、戒律のある国に生まれながら、決まり事にとらわれず自分を探求していくヤスミンのパワフルなキャラクターが活き活きと描かれている本作。「何よりもヤスミンという女の子の心は、皆さんの中にもある“気持ち”“だと思うんです。そのようなところをこの映画から感じて頂きたいと思います」と紹介されました。

ブルネイでは昨年8月に公開され、11月までのロングランになった『ドラゴン・ガール』。ブルネイの学校では授業で習うものの最近ではやぼったく思われていたというシラットが、『ドラゴン・ガール』のヒットによりちょっとしたブームとなったといいます。「『ドラゴン・ガール』を観てくれた多くの少女たちが、新たにシラットに興味を持ち取り組み始めたことを私はとても嬉しく思っています」と監督。シラットは監督ご自身も子供の頃、習い育って来たそうです。「下手なのですが、観るのは大好きなんです」とのこと。

次回作は、男兄弟をテーマにした作品を準備中と語る監督。ブルネイでは来月、男性監督が歴史上の人物を描いた作品を公開する予定となっており、映画制作に興味が高まっているとのこと。今後も楽しみです。 「ぜひ皆さん、楽しんで観て頂くよう願っています。またブルネイは非常にきれいな国です。映画で楽しんで訪問して頂ければ嬉しいです」

4/3にDVD発売予定となっています。