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3月12日(木)vol.4 シンポジウム「女の幸せは旅しだい」

大阪歴史博物館にて「女の幸せは旅しだい」をテーマにしたシンポジウムが開かれ、マレーシア映画文化研究会の山本博之氏(京都大学地域研究統合情報センター)が司会をつとめるなか、特別招待作品部門『カッパドキアの甘い恋』のバーナード・チョウリー監督と脚本のラフィダ・アブドゥラさんがパネリストとして登壇しました。

このシンポジウムへのバーナード・チョウリー監督の登壇は、今回が2回目(OAFF2013)。マレーシアの持つ状況のもと、監督や脚本家として描きたいこと、表現したいことなどを熱く語る時間となりました。

  • (左二人目から)バーナード・チョウリー監督、ラフィダ・アブドゥラさん、山本博之氏

マレーシアは移住してきた人たちが暮らす、異文化がまじりあう国。自らがインド系の父親と中国系の母親を持つというバーナード・チョウリー監督。だからこそ、マレーシア人は、自らのアイデンティティを探すため、旅をするのが好きな国民ではないか、とし「おそらく旅という形態をとって内から外へでることで、自らが何者かを知ろうとしているのではないか」と話されました。

自らも、ロンドンで映画に関する勉強をされていたという監督。その際、「アイデンティティは道筋であり、ルーツではない」という言葉を知り、これがその後も大きく影響しているのだとか。だから、映画もマレーシア人を描く際に、マレーシアを舞台につくる必要はない、という発想につながり「つくり出す作品では旅が続いています。」とのこと。今年の映画祭で上映されている『カッパドキアの甘い恋』ももちろんのこと、次回作も上海を舞台に複数のマレーシア人が交錯する物語だそうです。

一方、小さい頃から書くことが好きだったという脚本のラフィダ・アブドゥラさん。TV制作のプロダクションに入社した後、脚本について学ぶためロンドンへ。その後、帰国して最初の脚本がバーナード・チョウリー監督の映画だったそうです。そこから数作品を共につくられています。今回の『カッパドキアの甘い恋』は初めての原作のある脚本。オリジナルとはまた違う、大きな挑戦だったとのこと。原作の小説を読み進める中で、思わず突っ込んでしまうことも多々。その時に出てきた人格を軸に、友人のビヤ、というキャラクターをオリジナルにつくりあげたというアブドゥラさん。監督にトルコに行けるよ、と口説かれ、その役を演じることにまでなったそうです。

その他、「本作では女性が自立して旅をする」ということを描きたかった、という監督やアブドゥラさんから数々の制作秘話が飛び出しました。

最後に山本氏より、「マレーシアのことをもっと楽しく見せてくれる映画を、また届けていただきたいと思います。」と今後への期待を伝えられました。