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3月13日(金)vol.2 TAIWAN NIGHT

 

『KANO 1931海の向こうの甲子園』に続く秀作がそろった台湾作品のゲスト集結《TAIWAN NIGHT》

日本初上映となった特別招待作品部門『軍中楽園』の上映前に行われた《TAIWAN NIGHT》では、『コードネームは孫中山』のイー・ツーイェン監督をはじめ、豪華ゲストが集結。満席の会場が熱気に包まれました。

  • 台北駐大阪経済文化弁亊処処長
    蔡明耀氏
  • 大阪大学大学院言語文化研究科教授
    古川裕氏

台湾文化部の特別協賛、台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター、台北駐大阪経済文化弁亊処の協力により、〈小特集:エドワード・ヤンとその仲間たち〉を含む全7本が特集上映される《台湾:電影ルネッサンス2015》。セレモニーの初めに、台北駐大阪経済文化弁亊処処長 蔡明耀様が感謝の言葉と共に、「『KANO 1931海の向こうの甲子園』が日本でもヒットしたことは大変うれしい。映画は楽しいひと時を与えるだけでなく、歴史文化や国際友好、何よりも一人一人の心に感動を与えてくれる」と流ちょうな日本語でご挨拶されました。台北駐日経済文化代表処 台北文化センター所長 朱文清氏のご紹介の後に、大阪映像文化振興事業実行委員会を代表して、大阪大学大学院言語文化研究科教授の古川裕氏が第10回を迎える映画祭を振り返りながら、セレモニー開会の挨拶を行いました。

続いて、お待ちかねの作品ゲストの登壇。

『コードネームは孫中山』のイー・ツーイェン監督、出演のジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさん。『サシミ』のパン・チーユエン監督、俳優のタクヤさん。『逆転勝ち』のコン・ウェンイェン監督、俳優ウェン・シャンイーさん、そしてセレモニー後上映する『軍中楽園』からは美術監督ホァン・メイチンさんらが登壇しました。

イー・ツーイェン監督に見いだされ本作で俳優デビューしたジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんの現役高校生コンビや、台湾の人気ロックバンド、メイデイのギタリスト、モンスターことウェン・シャンイーさんの日本語による挨拶には、観客の皆さんからひときわ大きな拍手が送られました。

 

 

 

物語の世界感を深める美術の世界が語られた『軍中楽園』

セレモニー後上映された『軍中楽園』では、エンドクレジットが終わる前から大きな拍手が沸き起こり、波乱の歴史に翻弄されながらも一生懸命生きる「軍中楽園」の女たちの姿が観客の皆さんの胸に迫った様子。上映後の舞台挨拶では、美術監督ホァン・メイチンさんが再び登壇され、観客からの美術関連の質問に対し、丁寧に答えてくださいました。

まずは作品が出来るまでのいきさつについて、ニウ・チェンザー監督が構想に8年かけ、撮影から完成までに2年の制作年月がかかったこと、大陸から2キロしか離れていない金門島で全体の95%を撮影したが相当な困難が伴ったことを明かしながら、「どの監督にも必ず撮らなくてはいけない“自分の物語”があり、ニウ・チェンザー監督にとってはそれがまさにこのテーマだった。監督の母方の祖父も、父も軍に従事しており、また監督の父は49年に大陸から台湾に渡ってきたという家族の歴史がその背景にある」とニウ・チェンザー監督の渾身作であることを力説。また、美術面で要求されたことについては、「監督は自身の美学的観点をしっかりもっており、単にリアリティーを追求するだけでなく、そこから発展させた世界観を作り上げていく手法をとった」とプラスアルファのオリジナリティーにも力を注いだことを明かしました。

セットについては、金門島にもともとあった建物の中から、実在の831の建物ではなく、洋館を選んで改築したそう。「女性的な美を持った空間でなければいけないので、南洋文化の影響が濃い建物を使用し、廊下や部屋、オフィスを後から改築した」と作品に合わせて緻密に計算された美術造詣を施したことを語ってくださいました。

また、また、主人公シャオバオが初めて831を訪れ2階を見上げた時、窓越しに見えたニーニーの机上にあるインテリ風の本について質問が及ぶと、「831に来た主人公が、そこにいる女性の生活が分からない時に、女神のような女性を見上げる、憧れを込めたシーンになっている。部屋に置いたのは『青と黒』という当時台湾の知識人が非常に熱心に読んでいた本。彼女の背景や置かれた状況が他の娼婦たちと違うところを見せようと設計した」と答え、キャラクターの内面を美術で細部に渡って表現していることが伺えました。

美術面からのアプローチが新鮮なQ&Aを満席のお客様も最後まで熱心に聞いてくださり、大盛況のうちに終了しました。