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3月14日(土)vol.2

 

伝説の舞台芸人、トニー谷からアイデアが膨らんだという『牝狐リザ』

映画祭初のハンガリー映画と話題を呼んだコンペティション部門『牝狐リザ』

上映前の挨拶でウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督は、作品の舞台となった70年代ハンガリーの状況と映画での設定について「当時共産主義だったが、映画では資本主義の状況で描き、おとぎ話的要素を高めている。リザがイノセントなのは、ハンガリーが資本主義について何も知らないことを象徴している」と説明。作品中でもリザがバーガー屋で目を輝かせたり、雑誌コスモポリタンに感化されるなど象徴的なシーンが登場します。

リザにしか見えないトニー谷ならぬトミー谷が、次々と人を殺していく様が笑いを呼ぶ物語。99年に来日したときトニー谷を知ったという監督。そのトニー谷からアイデアが膨らみ、いつの間にか彼が中心の話になったと明かしながら、アキ・カウリスマキへのオマージュを捧げる一方、那須でリザにしっぽがはえ侍と会話するシーンは黒澤明の『羅生門』を参考にしたというエピソードも披露。

お客様から頭が真っ白になって他の作品が観られなくなるぐらい面白かった、との声も上がり、上映中も大笑い続出でした。また会場には狐女の話を教えてもらったという那須出身のご友人もお越しになり紹介する一幕も。日本のしかも那須が作品で華々しく登場しているのも納得の時間となりました。

 

 

 

大洪水の時に浮かんだイメージを元に作った不穏感に満ちたホラー『ヴァイオレーター』

  • トニー・アセホ プロデューサー
  • ドド・ダヤオ監督

フィリピンのシネマワン・オリジナルズ映画祭グランプリ受賞作、コンペティション部門『ヴァイオレーター』。徹底的なグレートーンの暗い映像と、際限なく続く雨音に、終始不穏な雰囲気が渦巻く作品ですが、2〜3年前にマニラで起こった大洪水のときイメージが浮かび、「洪水の夜に誰もが居たくない場所に閉じ込められたことを表現した」とドド・ダヤオ監督は趣旨を説明しました。

悪霊が登場人物の描き方やイメージで観客の中に植え付けられていくようだという感想に「フィリピンではカトリック信者が多いが、その中でもいろいろなイメージがあり、モンスターのような悪霊ではなく、一般的な悪霊を描こうとした」とコメント。色彩や効果音が素晴らしい、今すぐ世界に発信すべき傑作との声に、トニー・アセホプロデューサーからは東京での公開の可能性を模索しているとのうれしい報告も寄せられました。

監督も編集スタッフもデイヴィッド・リンチの大ファンであることを明かし、色彩や音へのこだわりを語ったドド・ダヤオ監督。フィリピン映画の層の厚さを実感するひとときとなりました。

 

 

 

希望を失くしている若い人たちに捧げたい!『全力スマッシュ』

ありそうでなかった熱血バドミントン映画、コンペティション部門及び特集企画《Special Focus on Hong Kong2015》の『全力スマッシュ』。上映前の舞台挨拶では、「香港人もまだ観ていない映画なので、しっかりご覧ください。音響さん、5割増しで」(デレク・クォク監督)、「笑い時に笑って、飛び上がって、十分楽しんで」(ヘンリー・ウォン監督)、「心持はいいけれど、ちょっとおバカなおばあちゃん役です。楽しんで」(出演:スーザン・ショウさん)、「脚本を読んだ時、なんてアツい人だと思った。僕も全力を込めてやった」(音楽:ハタノ・ユウスケ)と熱のこもった言葉が送られました。

  • デレク・クォク監督
  • ヘンリー・ウォン監督
  • スーザン・ショウさん
  • ハタノ・ユウスケさん
上映後のQ&Aでは、主演のジョシー・ホーが賞をとるほどのバドミントンの腕前で、本作の出資者でもあることや、イーキン・チェンも左右で打てる名手で、バドミントンを通じて結婚したことを披露しながら、デレク・クォク監督自身も子どもの頃からバドミントンに触れ、そこに人生哲学までを感じて映画化を模索していたことを明かしました。

負け犬が立ち上がるような物語の裏には「未来に対して若者たちが希望をなくしているように思え、鼓舞するような内容を考えていた。永遠にうまくいかないと思ってしまうかもしれないが、みんな同じだよと言いたい」(デレク・クォク監督)、「現代の若者がなくしてしまったアツい心や、70年代にあった頑張るぞという気合いを込めた。アジア人独特のものなのかな」(ヘンリー・ウォン監督)とその想いを語ってくれました。

実は午前中に、スーザンさんのお嬢さんとハタノ・ユウスケさんが結婚式を挙げたというサプライズ報告もあり、笑いと感動のQ&Aとなりました。