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3月14日(土)vol.3

 

苦労と努力を惜しまなかったウェン・シャンイーさんの『逆転勝ち』

特集企画《台湾:電影ルネッサンス2015》の『逆転勝ち』が上映され、コン・ウェンイェン監督と本作で役者として出演されたロックバンド・メイデイ(五月天)のギタリスト・モンスターこと、ウェン・シャンイーさんが登壇されました。

キャスティングについて、「彼とはメイデイのコンサートムービーを担当したのがきっかけで知り合ったが、この映画の主役にピッタリだと思った。ビリヤードのトレーニングにも時間をかけて真面目に取り組んでくれた。」と監督。それを受け、「役柄は自分のキャラクターと近いですか」と聞かれたウェン・シャンイーさんは、「監督は、“そのままではないか”と思っているようだが、とても努力し苦労して役作りをした」とやわらかな笑顔で答えられました。

  • コン・ウェンイェン監督
  • ウェン・シャンイーさん

会場から「一番大変だったことはなんでしょうか?」という問いに監督は「ビリヤードのシーン。いかにリアリティを持って見せられるか。セミプロの自分から見て上手に見えるよう役者にもかなりトレーニングをしてもらった。」と答え、「一部空中に浮かぶシーンにCGを使った以外は、ほとんど実際にプレーしている」と説明されました。以前からビリヤードは好きだったというウェン・シャンイーさんもまた「編集テクニックのお陰でうまく映っているが、自分としても納得のいくよう頑張った」と語られました。

本作で音楽も担当しているウェン・シャンイーさん。制作については「時間的にも長く、正解がないものを自分ひとりで決めなければならなかった」と苦労した部分を明かされました。「役者への切替えはどのようにしたか?」との問いに「メイデイではそれぞれが“自我を表現している”。それに対して役者は“自我を消していく”作業。 ミュージシャンと役者は全く違うが、相互に活かしていけるという作用があった」とのこと。

「映画は初めてで経験のない僕が監督の指導で成長できた。今もまだ、感動し感謝している」と述べたウェン・シャンイーさん。コン・ウェンイェン監督は「本作では家族愛にこだわったが、ウェン・シャンイーさん主演で今度はアクション映画を撮ってみたい」と述べられました。お二人の次回作の実現が楽しみです。

 

 

 

流行にのらず独特なものを撮り続けたいパン・チーユエン監督の『サシミ』

コンペティション部門『サシミ』は、21:10~の夜遅い上映にも関わらず多くのお客様にご来場いただき満員の中、上映後のQ&Aが行われました。

  • (右から)パン・チーユエン監督、
    波多野結衣さん、タクヤさん

司会者が「少し風変りなスタイルの映画だったような気がしますが?」とパン・チーユエン監督に聞くと、監督は観客に向かって「お気に召したでしょうか?」と問いかけました。続けて「台湾映画はいくつかの時期に分けることができます」と説明。少し前は同性愛を扱った作品が多く、最近では若者を描いた学園ものが多いそうです。そういう流行に乗って同じ映画をつくってもつまらないという思いから、この『サシミ』はつくられたそうです。監督は「マーケットを意識せず、異なるジャンル、独特なものを撮りたい」という強い思いを語られました。

司会者から出演の波多野結衣さんとタクヤさんに「見た目はとても真面目そうな監督ですが、おふたりから見てどういう方でしたか?」と聞くと、お二方とも口を揃えて「すごく優しいです!」と即答。劇中で波多野さんが女体盛りに挑戦するシーンでも監督はすごく気を遣っていたとのこと。また、波多野さんのことを“はたちゃん”というあだ名で呼ぶこともあったそうです。

『サシミ』というタイトルについて、観客からの「なぜこのタイトルなんですか?」という問いに「台湾でも“刺身”のことは“サシミ”と言います。生きている魚を殺して食べることで生命をつなぐ。『失楽園』という物語の中で愛の絶頂で死ぬのが幸せという表現があります。殺して食べるというのは残酷かもしれないけど性との結びつきが深いと思い『サシミ』というタイトルにしました」と話されました。

 

 

 

監督のスカウト力たるや!笑顔の3人衆登場『コードネームは孫中山』

本映画祭で3回目の上映となったコンペティション部門『コードネームは孫中山』。上映後はほとんどのお客様が残り、イー・ツーイェン監督、主演のジャン・ファイユンさん、ウェイ・ハンディンさんのQ&Aがスタートしました。

撮影当時、14歳だった主演男優の二人も今年で16歳。劇中より少し大人っぽくなった姿で観客にお目見えです。二人は監督に道でスカウトされて本作に出演することになったとか。監督は素人を発掘するところから映画づくりを始め、ある程度トレーニングをしてもらってからキャスティングをするそうです。選ぶときのポイントは、見た目の美しさではなく観客が親しみを持つことができる人かどうか。完璧な美はいつか飽きられてしまうし、観客と距離を生んでしまうから、というのがその理由です。

ジャンさんについては、「彼のボケっとしたところや助けてあげなくちゃ、という気持ちにさせるところ」が決め手になったそう。ただし「180cmを超える男の子を守ってあげるっていうのも変ですけどね!」と監督。一方ウェイさんについては、「簡単には理解できない、ミステリアスな雰囲気がある。その秘密を覗いて理解していく感じ」なのだそう。

  • イー・ツーイェン(易智言)監督
  • ウェイ・ハンディン(魏漢鼎)さん
  • ジャン・ファイユン(詹懷雲)さん

監督が話している間も、コソコソ話をしながら笑い合っていた二人。本作でジャン・ファイユンさんはアジア・フィルム・アワードで、ウェイ・ハンディンさんは台湾金馬奨で、それぞれ新人賞にノミネートされています。映画出演と名声について聞かれ、それぞれ次のように答えていました。ウェイさんは少し緊張した面持ちで「初めての映画でバタバタしたけどフレッシュな感じでした。金馬奨のノミネートは思いがけないことで、これでスターになったとかは思っていません」とのこと。ジャンさんはニコニコしながら割とリラックスした風情。映画出演は「初めてで特別なことばかり。とてもおもしろかった!スターになれたらいいな~」と話し、観客の笑いを誘っていました。

ここで観客から「蒋介石ではなく孫文の銅像にしたことに意味は?」と質問。監督、顔をきりりと引き締めて語り出しました。「孫文の肖像は現在の台湾紙幣に使われているため、お金を象徴するアイコンであることが理由の一つ。また、台湾では孫文=革命家、蒋介石=軍人と捉えられています。そのため、現代の社会問題に対して革命が必要であることを訴えるには、孫文の銅像を使ったほうが効果的だと思った」とのこと。貧富の差や競争力の低下など、台湾社会の問題点に問題提起をしたかったという監督。「ただし難しいテーマを掲げても観客は呼べません。そこでコメディタッチで問題を提起し、笑いながら少しずつ理解してもらう方法を選びました。身近な問題(学級費が支払えないことなど)が社会構造の問題につながっていることを知ってほしい」と訴えていました。

劇中、主人公たちがかぶるお面についても質問がありました。「台湾では有名なキャラクターのお面??」と思いきや、実は日本のセーラームーンをまねて作った、映画オリジナルのお面。本当は台湾でも有名なセーラームーンのお面を使いたかったのだけれど、コピーライトの関係上、とても高額になってしまうのであきらめたそうです。「男がセーラームーンのお面をかぶって孫文の像を盗むなんて、想像しただけでもおもしろいと思いませんか?」という監督の言葉でQ&Aは幕を閉じました。

熱く語ってくださったイー・ツーイェン監督、顔を赤らめるシーンも見られた初々しいジャン・ファイユンさんとウェイ・ハンディンさんとの充実の時間となりました。