- タイトル
- 春くんとの密月 MITSUGETSU
- 制 作
- 2012年/日本/日本語/字幕:なし
- 上映時間
- 62分
- 監 督
- 赤塚難
- 出 演
- 三坂知絵子、川合藤丸、永澤衛、松本高士、森塔湖都音
- 作品解説
- 子どもを産めないという心の傷を抱えた青田菊子は、子持ちの男“エスパート”と交際している。エスパートの妻は精神のバランスを崩して実家に帰っているため、エスパートが仕事のときなど、菊子は彼の息子の春くんと過ごすようになる。菊子を癒すのは春くんとの時間だけだったが、それはずっと続くものではなかった……。心に闇を抱えた菊子の微妙な心の動きを見事に描いている。本作は監督の初長編作品。
- 上映日程
-
3月9日(土)12:30 シネ・ヌーヴォ
★赤塚難監督 上映前舞台挨拶・上映後Q&A(予定)
3月11日(月)21:30 シネ・ヌーヴォ
赤塚 難監督
● プロフィール
映画の美術・装飾の仕事を経て、初の長編である本作『春くんとの密月』を制作。過去の監督作には『真夜中の部屋』(09年)、『咀嚼して曖昧』(10年)がある。
● 監督からのメッセージ
はじめは、ある女の人と子供、その子供の父親という3人の関係性を考えていたところからはじまりました。
私は当時の自分の状況に絶望しており、映画の企画を考えるだけで時が過ぎ、ある時、丸井の屋上で思いました。とにかく1作品作らなければ。しかも期限を決めないとできないだろうと。私はそれからいつまでに企画を決め、いつまでに第一稿を上げ……という風に目標を決めました。そうしたら少し心が軽くなりました。でも、映画を作る(監督する)のは学生の時以来で、学生時代の仲間はそれぞれに仕事をしているわけで、スタッフを集めるにしても制作をするのも簡単にはいかないだろうと想像できました。それでも準備段階から一緒に悩み知恵を貸してくれた何人かの仲間がいたことは大きく、なんとか心が折れずに完成させることができました。監督をして初めて楽しいと感じました。
……それは私の個人的な事情で、どうでもいいですね。
映画の内容はやはり作者の普段考えていることが反映されるものだと思いますが、私はしばしば宿命について考えます。それは誰にでもあるものなのだろうか。それに大きさはあるのだろうか。……でもそんなことは本人にしか分からないことです。考えても仕方のないばかばかしいことです。ばかばかしいこと、と思わないとやってけません。人は何か心の拠り所がないと生きていけないのかもしれません。それが永遠に続くものではないと分かっていたとしても、それに頼らずにはいられないということがあるのかもしれない。
これは青田さんという大人の女性と春くんという7歳の男の子の話です。
母親でもない恋人でもない近所のおばさんでもない青田さんの存在が、十年か、もっとか時が経っても、何か春くんにとって特別な存在としてあり続けるのではないかという気がしてなりません。
私は現場でというよりもむしろ編集時に何度も観ていて、三坂知絵子さん演じる主人公・青田の表情に魅せられました。役者っていうのはなんなんだろうと思いました。私の書いた陳腐な台詞なんてほんとにくだらないと思いました。役者が見せる表情や仕草などというのは単純な言葉になるようなものじゃない、これが映画……なのだろうかなと思いました。
この作品が春くんにとっての青田さんのような存在になることができたら嬉しく思います。