プレ企画|大阪アジアン映画祭・特別ゼミナール(全6回)
第4回開催レポート|2014年12月7日@大阪歴史博物館

2014年最後となった特別ゼミナール第4回。前回ご紹介いただいた『第6回京都ヒストリカ国際映画祭』で、同時間に劇場未公開の香港映画が上映されていたためか、いつもは満席の会場も久しぶりに空席が見られました。暉峻創三プログラミングディレクター(以下暉峻PD)も「一瞬途中下車して京都に行こうかと思った」と冗談を交えながら、上映延期から4年ぶりに劇場公開が決まった中国映画『唐山大地震』の話題や、東京国際映画祭と釜山国際映画祭の違いについて話が展開しました。

 

■『冴え冴えてなほ滑稽な月』の島田角栄監督最新作は、さらに過激!?ザ・クレイジーSKB 32執念記念映画『死殺カオス猿の帝国』

 

特別ゼミナールの受講生で、大阪アジアン映画祭(OAFF)開催時には毎年オリジナルチラシを作っていただくほどのOAFFファンでもある島田組のスタッフ、紅粉チコ氏より、『冴え冴えてなほ滑稽な月』島田角栄監督最新作をご紹介いただきました。大阪西成在住の島田監督作品はいつもパンクでロックですが、今回はさらに突き抜けています。予算30万円で製作を依頼された島田監督自らが脚本、撮影までこなし、西成区や古い長屋がロケ地というディープ感が満載。ある日突然空から死体が降ってきたり、片足がないヒロインが登場したりという予測不可なストーリーに、強烈な映像、パンクな音楽が迫る「ハードコアパンクムービー!」(紅粉氏)だそうです。劇場公開予定は現在のところありませんが、12月28日(日)千日前TORII HALLで開催される『死殺カオス猿の帝国』DVD発売記念イベント にて、上映されます。(TSUTAYAでも同日からレンタル開始)

(C)2013 T.O Entertainment, Inc.

 

 

■2015年3月に公開決定!『唐山大地震』

 

2009年OAFFクロージング作品『誠実なおつき合いができる方のみ』(劇場公開タイトル:『狙った恋の落とし方。』)のフォン・シャオガン監督。中国では作れば必ず高興行収入を叩き出す売れっ子は、若いころからコメディーの帝王と呼ばれていた点で、日本では山田洋次監督の立ち位置に近い監督です。『唐山大地震』は2009年に作られ、中国では当時『アバター』の興行収入を抜き、名実ともに中国劇場公開作品の中でナンバーワンヒット(観客動員数2000万人)となりました。日本でも当初は2011年3月28日に松竹配給で全国公開予定でしたが、東日本大震災により公開が延期されていた作品です。

映画の英語題と原作のタイトルは『Aftershock(余震)』で、作品自体も犠牲になった家族が心の復興を遂げるまでにかかった32年もの年月を描いています。「地震が人々に与えた心の余震を主題にしていると解釈できるこの作品は、東日本大震災を体験して4年の歳月が過ぎたことによって、むしろいっそう作品の本題に触れやすくなったのではないか」と暉峻PDは劇場公開までの同作の道のりを振り返りました。

(C)2010 Tangshan Broadcast and Television Media Co., Ltd.
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■釜山国際映画祭が短期間に成長を遂げた理由は?

 

毎年10月に開催される東京国際映画祭(TIFF)釜山国際映画祭(BIFF)。日本最大の映画祭と韓国最大の映画祭がほぼ同時期に開催されるとあり、新聞等でも両者を比較する記事が多く見受けられます。85年からスタートしたTIFFと、97年からスタートしたBIFFとの間で国際的評価に大きな差が出ている理由として予算面を挙げるケースが多いのですが、今年はTIFFの予算が一気に増え、BIFFと肩を並べられるほどになりました。今こそ、この二つの映画祭を比較検討する絶好の時期だとして、暉峻PDは国家サポートや予算以外の面で、BIFFが映画人やマスコミ関係者から支持されてきた理由を解説しました。

その核心は、BIFFは映画祭開始当初から一貫してコンセプトや目指す方向性に全くブレがないこと。まず一点目に、ここは何よりもアジア映画のための場所であり続けています。二点目に、マイノリティーにより強い光を当て続けています。この二つはオープニングやクロージング作品の選定を見ただけでも明らかだとして、これまで開閉幕とも必ずアジア映画が選ばれていること、そして開閉幕作のどちらかには必ずマイナーな映画が敢えて選ばれていることが解説され、2012年BIFFでクロージング作品となったバングラディッシュ映画『TELEVISION』が参考上映されました。このような映画でも半屋外のクロージング上映会場4000席が発売後すぐに完売になることからも、世界的なBIFFに対する注目度が伺えます。最後に、双方の映画祭に差がついた大きな理由は「初期から変わらない志」と強調して講座を締めくくりました。

次回講座は、オープニング、クロージングを別にした内実でも徹底した、この「変わらない志」をさらに検証するところから始められるそうです。

 

 

『唐山大地震』公開情報
2015年3月14日(土)~塚口サンサン劇場、3月16日(月)~シネ・ヌーヴォ

 

大阪アジアン映画祭特別ゼミナール第5回は、1月12日(月・祝)、第6回は2月1日(日)に開催いたします。

なお、第5回、第6回の受講(2回分)を3,000円で受け付けています。ご希望の方はinfo[at]oaff.jpまでお申し込みください(当日も満席でない限り受講いただけます)。