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3月12日(木)vol.1

 

『アバディーン』パン・ホーチョン監督、早くも来年の来阪宣言!

『ドリーム・ホーム』(OAFF2011)での来阪以来、4年ぶりの来場となったパン・ホーチョン監督。今回は国際審査委員長としても大活躍していただきました。『低俗喜劇』(OAFF2013)の後、すぐに撮影に入ったという、今年の特集企画《Special Foucus on Hong Kong2015》で上映された『アバディーン』は前売りでも早々に売り切れる人気ぶり。豪華キャストによる家族の物語は爆笑とじんわりした感動に包まれる、まさに最高傑作でした。

叔母が亡くなる前に電話で食事に誘われたが、仕事で行けず、会えないまま亡くなってしまったという苦い体験から、家庭でどういう関係を築いていくかを主題にしたと語ったパン・ホーチョン監督。ドキュメンタリータッチの映画にしたかったので、わざとフォーカスの甘い映像をカメラマンに指示したとの裏話も披露しました。

また、作品中で登場するカメレオンの着ぐるみの中には、監督自身が入っていたことを明かし、この映画のために作ったミニチュアセットを見ているうちにぶっ壊したくなったと、怪獣映画のように自ら暴れるシーンを楽しんだ様子。

観客から次回作について聞かれると、「監督作は考えていない。次は私が主役の映画に出ます。今年中には撮り終え、来年のOAFFでは俳優としてこの場に立ちたい」と早くも来年も来場宣言!に客席からも大きな拍手が沸き起こりました。

ちなみに、パン・ホーチョン監督はモテモテの警察官役で、もう一人の主演には『恋人のディスクール』(OAFF2011)監督のデレク・ツァンさん、そして映画を監督するのはデレクと共同監督を務めたジミー・ワンさんなのだとか。映画以上にセンセーショナルな次回作の発表に、最後の最後まで大盛り上がりの舞台挨拶となりました。

 

 

 

監督、出演者たちのフレッシュな面々がそろった『3泊4日、5時の鐘』

コンペティション部門『3泊4日、5時の鐘』上映に先駆け、三澤拓哉監督、福島珠理さん、中崎敏さん、三澤啓吾さんらが登壇されました。

  • (左から)三澤拓哉監督、福島珠理さん、中崎敏さん、三澤啓吾さん

「今回が国内初上映となることに非常に光栄です。」と三澤監督。「この映画は私が初めて映画に関わり初めて映像でお芝居をした作品です。」と話した福島さんは、プロデューサーとしてもこの作品に参加されました。また中崎さんは「シンガポール上映に立ち会いましたが、国内上映は初めてです。」と語り、三澤さんは「(会場の)皆さんと同じで僕もまだ一回もこの映画を見ていません。皆さんと一緒に楽しみたいと思います。」とそれぞれご挨拶をされました。

上映後のQ&Aでは、映画の“肝”を問われ「卓球シーンです。テイクも重ねました。」と答えられた三澤監督。そのシーンの”肝“を演じた福島さんは「卓球をしながら感情ものせていくといのが本当に難しかったです。でも卓球も上達したと思います(笑)」と会場の笑いを誘いました。

作品中で女性に思いっきり叩かれるシーンのあった中崎さんに対して「叩かれて痛かった?」と観客からの質問があり、中崎さんはとても痛かったが、愛のある叩きだったと、はにかみながらも「知春(役名)は何とか現状を打破したいという気持ちが強くて、今のコミュニティにいてはいけないという意思を常に持っています。だから一見振り回されているようで実は意志が固くて。でもどうしていいのかよくわからないという、ちょうどあの年代の悩みのようなものを持った青年だと思います。」と役柄の人物像について語ってくれました。

撮影の舞台となった老舗旅館「茅ヶ崎館」の館長と三澤監督はもともと知り合いで、撮影の許可も快く承諾してくださり、庭で卓球や花火をするシーンなどもOKをもらえたそうです。実際に旅館に泊まりたいという観客からの声に、素泊まりなら7千円からあるとの情報も教えてくれました。「小津安二郎監督が利用していた由緒ある旅館なので小津監督作品を前提でご覧になる方もいらっしゃるのですが、いい意味で少しずらした形で受け取ってもらえたことが嬉しいです。海外でもモロッコ、シンガポール、ロッテルダムで上映しましたが、伝統を引き継ぎながらも何か少し違うという感想をいただくことが多くて本当に嬉しかったです。」と観客の好反応に喜びを隠せない監督でした。

9月に新宿のK’sシネマ、大阪のシネ・ヌーヴォ、神戸の元町映画館でも公開決定

 

 

 

未成年の「サバイバルセックス」に踏み込んだ日本初上映作品『セーラ』

今回が日本初上映となったコンペティション部門及び特集企画《Special Focus on Hong Kong2015》の『セーラ』。『イップマン・誕生』(10)をはじめ、既に世界中にファンを持つベテランのハーマン・ヤウ監督は、上映前に「性的搾取を受けながら、彼女が成長し、知識を得、運命を変えていく。そんな女性の姿を観てほしい」と力強く挨拶されました。アイドルのイメージが強かったシャーリーン・チョイさんが女優として大きく成長を遂げた熱演ぶりに、上映後大きな拍手が起こりました。

上映後のQ&Aでは、本作が香港の人気俳優、チャップマン・トープロデュース作品であることについて、「最近の香港映画は大陸と合作し、大陸上映を前提にした作品作り行う傾向が強い。長年一緒に仕事をしていたチャップマン・トーが、大陸のマーケットを考えなくていい映画を作れるようにと制作会社を立ち上げたので、このテーマで撮れるなと思った。」と監督。

また、セックスワーカーを題材にした作品が多いことを聞かれると、「ほとんどの社会において(セックス産業に)従事している人は偏見を持たれることが多いが、彼女たちもプライドを持って働いている。」と、過去の2作品を紹介しました。

また、本作のシャーリーン・チョイさんの役柄については、「未成年でありながら、年上の男性に囲われるが、性的サービスと同じ本質が潜んでいる」と語り、生きるために行うサバイバルセックスが、先ごろ、ユニセフが作成した「未成年による人身売買」の新しい定義に付け加えられたことも解説されました。

最後にチャーリーン・チョイさんの起用理由については「彼女が今までやってきた役柄は誰かの娘や、ガールフレンドといった軽い役ばかり。演技に対する潜在的な力を感じていたので、新しい挑戦をしてみるといいのではないかと持ちかけた」と明かしてくださいました。偏見のない目で問題提起をしつつ、一生懸命生きる女性の姿を映し出したハーマン・ヤウ監督に、最後まで温かい拍手が送られました。

 

 

 

タイの大ヒット作『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』が緊張の中、海外初上映

コンペティション部門『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』で本映画祭2度目の来日となったメート・タラートン監督、そして出演された蒼井そらさんが舞台挨拶に登場されました。

上映前の舞台挨拶では、蒼井そらさんが「日本語字幕付きで観るのは今夜が初めて。私も楽しみにしています。」とコメント。監督は海外初上映を前に緊張した面持ちで、「観客のみなさんの笑い声が私たちスタッフの励みになります。日本の映画館ではあまり声を出して笑わないそうですが、今日は気にせず、思いっきり笑ってください。」と挨拶されました。上映中、客席から大爆笑が起こる場面もあり、映画が終わると大きな拍手が沸き起こりました。

上映終了後のQ&Aでは「たくさん笑ってもらい、楽しんでもらえたようで良かった。タイへ帰ってスタッフにも伝えます」と監督も安堵のご様子。英語とタイ語を主演のプリーチャヤー・ポンタナーニコンさんから教えてもらったという蒼井そらさんは、好きなシーンを聞かれると「主役の恋人役の方がボートの上で突然歌い出すところ(笑)。撮影はスタッフのみなさん良い方ばかりでとても楽しかったです。」と笑顔で答えられました。

ラストシーンの台詞の話題になると「タイでもよく聞かれるんですが、あの台詞のことは誰にも話していないのです。父にも母にも。観客の皆さん一人一人がきっと答えをお持ちだと思います」と答えられました。

終了後、ロビーで観客の皆さんへのサイン会にもにこやかに対応されたお二人でした。