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3月11日(水)vol.1

 

キム・テシク監督、世界初上映をひっさげ登場『太陽に向かって撃て』

特別招待作品部門『太陽に向かって撃て』開演前から、主演のカン・ジファンさんグッズを身に着けたファンとみられる方々で会場は熱気に包まれました。

上映前にキム・テシク監督とプロデューサーのキム・ヒョジョンさんが登壇。監督からは、「留学以来何度も韓日の間を行き来しており、日本を第二の故郷と思っている。その日本で、初回上映できることを光栄に思う」と日本語でご挨拶。また、キム・ヒョジンさんからは「韓国での初回上映は、3月19日。それに先駆けての上映をありがたく思う。大阪の方々に映画を楽しんでほしい。」と挨拶されました。

  • キム・テシク監督
  • プロデューサー:キム・ヒョジョンさん

上映後のQ&Aには、キム・テシク監督が登壇。観客からは次々と質問がとびました。「ファン心理としては、カン・ジファンのベットシーンは見たくないもの。2回目の鑑賞でやっと直視できたが、綺麗に撮れていてよかった。」との感想に、監督は「カン・ジファンとパク・ジョンミンにとって、ベットシーンは初めての挑戦。彼らにとっても大仕事であった。自分としてはもっと激しいシーンを撮りたかったが、二人にとってはあれが精一杯で一生懸命やってくれた。」と自身の感想を述べられました。

また「監督の目から見たカン・ジファンはどのような俳優か。」との質問に「モニターもなく、小さなカメラだけの冒険的な撮影だったが、なにもない現場でも、自分で何かを準備して持ってきたり、作り出したりする素晴らしい俳優。」とキム監督。

「監督にとって、最も印象深いシーンはどこか。」の問いには、「ボスが水中の青い鯉を手で摑まえるシーン。脚本では、鯉を銃で撃ち殺すものであったが、CGが難しく予算もなかったので、あのように変更した。が、結果的には、あのシーンに最も愛着がある。」と答えられました。

「監督のロードムービーが好き。本映画は、前半はロードムービー的だが、後半はノアール的で、今までとスタイルがやや違う。今後の撮影への意気込みは?」との質問も。キム監督は「元来物語が生まれるロードムービーが好き。しかし、今後は、さまざまなスタイルを試みたい。さまざまなスタイルを試みても、結局は、一人の人間が作るので自分の色が出せるものになればいいと思っている。」と語られました。

プログラム終了後のサイン会でも、丁寧に対応される監督のもとに、いつまでも列ができていました。

 

 

 

映画に秘める熱き思いをのせ、堂々の世界初上映『バングラシア』

マレーシアで上映禁止となった特集企画《ニューアクション!サウスイースト》『バングラシア』が世界初上映され、監督・出演のNameweeさんとプロデューサーのフレッド・チョンさんが登壇されました。

Namewee監督は「OAFFに来るのは今回で3度目となり本当に光栄です。この作品はマレーシアで上映することができず、劇場で上映されるのは本当に今回が初めてとなります。私も初めて見るので本当に楽しみにしています」と挨拶をされ、プロデューサーのチョンさんと一緒に作品を鑑賞されました。

上映後は観客の盛大な拍手と共に再びお二人が登場。興奮と熱気の冷めやらぬ中でQ&Aが行われました。

マレーシアでの上映禁止の経緯についてNamewee監督(写真左)は「実際は上映禁止というわけではなく、政府から31カ所の修正案というものが通達されました。それをすべて修正するには映画全体の90%を取り直す必要があるということになります。」と説明し、その例として監督が作品中ずっと着ているTシャツのメッセージ「Save Malaysia」を消すように指摘されたことを挙げました。

また、主人公たちに敵対する民族「ルックルック人」は実在にいるのかという質問には、ボルネオ島にあるマレーシア・サバ州でかつてスールー王国のスールー人がマレーシアを侵略したという事件がありそれをモチーフにしたと明かしてくれました。

観客からバングラデシュ人を主人公に起用した理由を聞かれ、チョンプロデューサー(写真右)は「マレーシアで暮らすバングラデシュ人は本当にたくさんいます。そして道路やビル建設などの工事現場の労働者、清掃作業員、車の修理屋、料理人、販売店員といった様々なところで働いています。ある意味マレーシアの発展はそういったバングラデシュの人々のおかげとも言えると思います。ですから、この映画で焦点を当てたかった」と真摯に答えてくれました。

作品は多民族国家であるマレーシアの現状をブラックユーモアたっぷりに描くアクションコメディ。主人公ハリスの「みんなで一緒にいい国にしよう」というセリフが心に深く響く作品です。

 

 

 

「大阪大好き!」と監督の笑顔で観客も笑顔広がる『マリキナ』

コンペティション部門『マリキナ』のミロ・スグエコ監督による舞台挨拶が行われました。

元気よく「こんばんは!」と日本語で第一声、観客を驚かせました。「今日はお越しいただき本当にありがとうございます。私の作品を日本で上映できることを非常に光栄に思います。そして違った文化を持っている国の方々に自分の作品を見てもらえるということは映画製作者としての大きな喜びです。」と感謝の意を述べられました。

またこの作品はこれまで韓国やドイツの映画祭で上映され、また監督自身も何千回も見ているとのこと。今回は日本の方々にこの作品をどのように楽しんでいただけるのか、会場の皆さんのことを少し観察させていただきたいとのお願いもありました。「私の作った作品を皆さんがどのように感じるのかを知ることが本当に大切です。皆さんと一緒に泣き、そして笑うーーそういう体験が私にとってとても重要だと思います。」とその理由をにこやかに教えてくれました。

最後に「ありがとうございます!大阪好き!」と日本で締めくくり会場を沸かせました。

上映後は入口で観客を出迎え、一人一人と握手する監督の姿が印象的でした。

ミロ・スグエコ監督も大阪で異文化体験をされたようです。

 

 

 

アジア映画に精通するバスティアン・メーソンヌ監督の『ガルーダ・パワー』登場

インドネシアの映画の歴史をひも解いていく特集企画《ニューアクション!サウスイースト》のドキュメンタリー作品『ガルーダ・パワー』が日本初上映され、バスティアン・メーソンヌ監督が登壇しました。

インドネシアの歴史に深く関わりのある俳優の語りから始まり、淡々と話すかと思いきや、流れてくる映像はかなりのグロテスクな描写が。しかし、CGなどが発達している現在からみると、その映像はどこか滑稽で、客席でも笑いが。

バスティアン・メーソンヌ監督はアジア映画の専門家として多くの論考を発表されており、上映後のQ&Aでもインドネシア映画の面白さ、そして現状を語られました。「こんなにも面白い作品がある。しかし、現在のインドネシアの若者はその多くを知らない。また、それら作品を観るには海賊版などに頼らなければならないのが歯がゆい」と話されました。

さらに当時の面白い作品の多くは利益さえ獲得できればフィルムは処分されおり、現存しているものは少ないとのこと。そんな中でも数少ないフィルムを貸してくれた人にも感謝の気持ちを忘れない、という監督。インタビュー中は終始、笑顔で「心はアジア人」と語り、観客の笑いも誘っていらっしゃいました。

最後に観客から「オススメのインドネシア作品は何か」と聞かれると『シャカ・ブンブン』との答え。映画の中でも何度も登場し、今でもかなりの人気があるアクション作品。しかし、この作品も商品化されていないようで本編を観ることはできないそうだ。

監督は次回、タイ映画を撮る予定があるそうです。