第15回大阪アジアン映画祭

受賞結果一覧

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グランプリ(最優秀作品賞)

『ハッピー・オールド・イヤー』

Happy Old Year

タイ|監督:ナワポン・タムロンラタナリット(Nawapol THAMRONGRATTANARIT)

《授賞理由》

現代的な独特のスタイルに定評のあるナワポン・タムロンラタナリットの才能がいかんなく発揮され、オリジナリティあふれる作品として見る者を魅了する。物を捨てるという文明社会に生きるすべての人間が抱えるカジュアルな問題にはじまり、それにとどまらずさまざまな問題に波及していき、深みに達する映画的な視線がすばらしい。

《ナワポン・タムロンラタナリット監督コメント》

受賞を知りとても嬉しいです!この作品が海外で受賞するのは2度目です。違う世界にいる観客の皆さんとこの作品を通して共感できるのは幸せなことです。(そのせいか今は寂しさが和らいでいます。笑)

グランプリを授与して下さったOAFFの審査委員の皆さんに感謝します。そして、この作品をあるがままに楽しんで受け入れてくれた日本の観客の皆さん、本当にありがとうございました。

来るべき才能賞

パク・ソンジュ

PARK Sun-joo

韓国|『家に帰る道』(Way Back Home)監督

《授賞理由》

この映画の時間と、ヒロインの過去が癒されていく時間が水の流れのように重なり、ゆっくりと浄化されていく過程が美しかった。監督として今後の作品にも期待したい。

《パク・ソンジュ監督コメント》

こんにちは。『家に帰る道』監督のパク・ソンジュです。

まず、このように受賞への想いをお伝えできる機会をいただけて、とても光栄に思います。

大阪で観客の皆さんにお会いできない状況になったのは大変残念でしたが、私の映画を通して皆さんが持った想いや感想をSNSで拝見しておりました。多少重い題材を扱った映画なので、観客の皆さんの反応が心配でもありました。ですが、驚くことに多くの方々が映画に共感して下さり、深く印象に残ったとのコメントを残して下さいました。

私は、映画を通して癒しと共感を分かち合えることを実感し、大変嬉しく思いました。皆さん一人一人に、心から感謝します。

また、期待と励ましの気持ちで私に賞をくださった審査委員の皆様にも感謝申し上げます。<来るべき才能賞>は、私が新しい作品を作り続けていく大きな力になるはずです。

次の作品とともに、大阪アジアン映画祭でご挨拶できるその日まで、皆さんどうぞお元気で。ありがとうございました。

最優秀男優賞

間瀬英正

MASE Hidemasa

日本|『コントラ』(Kontora)主演男優

《授賞理由》

映画全体の狂気を体現し、緊張感を絶やさず、強烈なインパクトを与えてくれた。

《間瀬英正氏コメント》

この度、最優秀男優賞という特別な賞をいただきましたことを心より嬉しく思います。映画『コントラ』に出てくる「後ろ向きに歩く男」は、アンシュル監督と一緒に育てた人物であり、この賞はむしろ監督のものだと思っています。そして一緒に練習に付き合ってくださったキャスト・スタッフ皆様のものでもあると思います。この映画祭を機に『コントラ』が映画館で上映され、「後ろ向きに歩く男」が皆様の前に現れることを願っております。

ABCテレビ賞

『愛について書く』

Write about Love

フィリピン|監督:クリッサント・アキーノ(Crisanto AQUINO)

《授賞理由》

シリアスなテーマも織り込まれつつ、観れば明るく元気になれる、素晴らしいラブコメディである。現実世界は4☓3、映画のシーンは16☓9で、やがて2つの世界が混じり合いシネスコサイズへ、と演出も非常に凝っていた。

《クリッサント・アキーノ監督コメント》

長編初監督作『愛について書く』がABCテレビ賞を受賞したことを大変嬉しく思います。これは私が国外で受賞した初めての賞になります。この受賞はフィリピンにとって大きな名誉であり、フィリピンの映画業界にとって、そしてキャリアを始めたばかりのすべての映画人にとっても朗報です。情熱をもって努力を続ければ不可能なことはないと分かったのですから。“努力すれば夢は叶う”、これはCOVID-19パンデミックが起きている今、事態はいずれ終息するという希望を与えてくれます。

大阪アジアン映画祭にはあらためて感謝の意を伝えるとともに、真実や人生について語り、“愛について書く”アジアの映画人を、今後もサポートしていただきたくお願いします。

ありがとうございました。

薬師真珠賞

レオン・ダイ

Leon DAI/戴立忍

台湾|『君の心に刻んだ名前』(Your Name Engraved Herein/刻在你心底的名字)助演男優

《授賞理由》

主人公青年の中年時代を、繊細さと緻密にコントロールされた情念で説得力たっぷりに演じきり、『君の心に刻んだ名前』に核心的な深みと陰影を与えた。彼の演技人生の新しい一頁がここに記されたことは、間違いない。

JAPAN CUTS Award

『ある殺人、落葉のころに』

The Murders of Oiso

日本・香港・韓国|監督:三澤拓哉(MISAWA Takuya)

《授賞理由》

腐敗した小さな町、男特有の毒性、若者の不安をひるむことなく描き切った『ある殺人、落葉のころに』は極めてよく作り込まれた物語として、インディ・フォーラム部門の中でも際立っていた。三澤拓哉監督のストーリー構築に対する鋭い目と映画言語を操る卓越した手腕が存分に発揮されている。潔く大胆でありながらも完成度の高い本作は、三澤監督の今後の作品はもとより、日本インディペンデント映画のダイナミックかつ重要な表現の将来性について、大いに期待を抱かせるものである。『ある殺人、落葉のころに』にJAPAN CUTS Awardを授与できることを光栄に思う。

《三澤拓哉監督コメント》

過分なる審査委員からのコメント、身が引き締まる思いです。大阪アジアン映画祭、日本初上映後の夜。出演の中崎敏、森優作、永嶋柊吾と語らい、この映画の持つ力を確信しました。全ての譲歩と妥協を払いのけ、これからも上映機会をつくっていきます。 また、こうした状況の中、映画祭開催に尽力して頂いた関係者の皆さま、お越し頂いた観客の皆さまに御礼申し上げます。ありがとうございました。今回、来場が叶わなかった方々にも、いつか映画を届けられますように。

芳泉短編賞

『Hammock』

日本|監督:岸建太朗(KISHI Kentaro)

《授賞理由》

ほぼ全編が1軒の家の中で展開する『Hammock』は大きな悲劇と、喪失や記憶、夢、希望といった思いを、ほとんど言葉を発しない1人の少女の視線から、素晴らしいバランスで描く稀有な短編作品である。さまざまな感情が重層的に描かれ、いずれ長編映画になるべき作品であろう。

《岸建太朗監督コメント》

短編映画『Hammock』は、イスラエルとパレスチナに渡航した2007年から、娘の誕生(2010年)を含めた、10年に及ぶ個人的な記録の中から生み出されました。そんなとても小さな映画が大阪アジアン映画祭で選ばれ、そして上映され、さらに「芳泉短編賞」をいただけたことを本当に嬉しく思います。

審査委員のアンシュルさん、森脇さん、暉峻さんはじめ映画祭を支えてくださったスタッフのみなさま、私の無謀な挑戦を支えてくれた『Hammock』の全てのスタッフ、キャストの皆様に、心より感謝します。また登山家で友人の栗城史多さん、親友で脚本家の仁志原了くん、インパール作戦で戦死した私の祖父、岸亀治さんにも、心からありがとうと言いたい。3人の存在が、この映画を紡ぐ私の力となり、『Hammock』を支えてくれたのです。

今後は多くの人に『Hammock』を見ていただけるよう、努力します。そして、この映画を通じて見出そうとした祈りが、より多くの人に届くことを願って──

観客賞

『少年の君』

Better Days/少年的你

中国・香港| 監督:デレク・ツァン(Derek TSANG/曾國祥)

《デレク・ツァン(曾國祥)監督コメント》

8年前、私は共同監督のジミー・ワン(Jimmy Wan/尹志文)と共に長編第1作となる『恋人のディスクール』(Lover's Discourse/戀人絮語)を携え大阪アジアン映画祭に参加し、映画人生で初めての賞をいただきました(コンペティション部門グランプリ)。8年後の今日、『少年の君』で観客賞を受賞したと知り、喜びとともにいろんな感情がわきでています。コロナウイルスとプライベートな理由で映画祭に出席できず観客の皆さんと交流できなかったのはとても残念なことでした。この映画を気に入って投票してくれた観客の皆さんに感謝するとともに、映画祭スタッフにも感謝申しあげます。8年はあっという間に過ぎ、その間に世の中は変わり、自分自身も変わりました。ただ、幸いなことに映画を撮ることに対する情熱だけは変わりません。これからもずっと映画を撮り続け、精進していきたいと思っています。