第17回大阪アジアン映画祭

受賞結果一覧

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グランプリ(最優秀作品賞)

『おひとりさま族』

Aloners/혼자 사는 사람들

韓国|監督:ホン・ソンウン(HONG Sung-eun/홍성은)

《授賞理由》

韓国のみならず、今、世界の多くの場所で、人が一人で生きるということは現代的な題材であると思います。しかし、本作の素晴らしさは、題材の良さにとどまりません。主人公が職場での電話対応をする際の彼女一人をとらえたフレームワークなど、映像によって観客に伝えていく力がすぐれていることに感銘を受けました。

また、人間の生と死の関わりのもと照らし出される孤独と他者とのつながりに、静謐でありながら力強さも感じさせ、グランプリに選出しました。

《ホン・ソンウン監督コメント》

予想だにしなかった大きな賞を授けてくださり、心から感謝申し上げます。韓国のインディペンデント映画とは特に縁の深い大阪アジアン映画祭からいただいた賞なので、さらに意義深く感じます。

私はいつも一緒に映画を作った仲間たちが、自慢できるような映画を作りたいと思っていましたが、共に喜べる機会をいただけて、胸がいっぱいです。

映画監督として生きるのが、苦難に満ちてつらいと思うときには、この身に余る賞をいただいたことを思い出し、感謝と幸せな気持ちをかみしめたいと思います。

映画祭のすべての関係者と観客の皆さまに、もう一度、深く感謝申し上げます。

来るべき才能賞

飯塚花笑

IIZUKA Kasho

日本|『世界は僕らに気づかない』(Angry Son)監督

《授賞理由》

人種差別とジェンダーアイデンティティの両方を描くことは簡単なことではないと思います。しかし、フィリピン人の母親と日本人の父親を持つ主人公が、自身のセクシャリティとアイデンティティの危機に対峙する姿を、飯塚花笑監督は巧みに映し出しました。自らの未来を切り開こうとする彼の旅は、今もなお差別と不正義に分断された世界で生きる我々に、違いを認め合う重要性に気づかせてくれます。GOWさんと堀家一希さんの演技も力強いものでした。これは、飯塚監督が優れた演出力と衝突する物語性を生み出す力に長けていることを証明しています。

《飯塚笑花監督コメント》

この度は私どもの作品『世界は僕らに気づかない』をコンペティション部門へ選出いただき、また「来るべき才能賞」という素晴らしい賞をいただくことができ、嬉しい気持ちでいっぱいです。この賞をいただけたのは、今まで私の創作活動を支えてくださった群馬県の皆様そして、出演者、スタッフ全員の努力の結果と考えております。混沌とした時代に多くの分断を目にする昨今ですが、映画をもって何が出来るか、今後も世界を見つめ、形にし、誰かの手助けとなれるよう努力して参ります。私どもの作品にとって幸せなスタートとなりました。改めて素晴らしい賞を授けてくださりありがとうございました。

コンペティション部門スペシャル・メンション

『アニタ』

Anita/梅艷芳

香港|監督:リョン・ロクマン(Longman LEUNG/梁樂民)

《審査委員コメント》

『アニタ』を本映画祭で観られたことは、私たち審査委員にとってだけでなく、また観客の皆さまにとっても大きな思い出となったことでしょう。本作は、コンペティション部門で賞を贈る対象ととらえるには、他の作品と製作予算規模などの点において大きな差異があるため、難しいと感じましたが、今年の大阪アジアン映画祭に本作が存在したという足跡を残したいと願いスペシャル・メンションといたしました。

香港エンターテインメントの輝ける星であった「アニタ」の人生を愛をもって描くと同時に、香港というかけがえのない街の1980年代から今に至る歴史をも感じさせる感動的な作品でした。本作が今後、日本の大きなスクリーンで上映されることを心より祈ります。

《リョン・ロクマン監督コメント》

大阪アジアン映画祭の審査委員の方々、そしてアニタ・ムイの映画を愛してくれた日本の友人たちに感謝します。

アニタは生前、日本のことが大好きだといつも言っていたので、今回の受賞は、私たちチームの大きな励みとなりました。

コロナの流行が早く収束し、またお会いできることを祈っています。

ABCテレビ賞

『はじめて好きになった人』

The First Girl I Loved/喜歡妳是妳

香港|監督:キャンディ・ン(Candy NG/吳詠珊)、ヨン・チウホイ(YEUNG Chiu Hoi/楊潮凱)

《授賞理由》

青春のみずみずしくも儚き時に、恋愛の輝きを鮮烈に捉えた美しい映像。それを最後までしっかりと見せてくれるエンタメ感。

《キャンディ・ン監督、ヨン・チウホイ監督コメント》

まず最初に、私たちの映画『はじめて好きになった人』を認めてくれた大阪アジアン映画祭に心から感謝します。

映画学校を卒業した私たちにとって、映画を作ることは大きな夢でした。これまで私たちを支えてくれた仲間とすべての人に感謝の気持ちを伝えたいです。

この映画が、不安定な世界に生きる私たちに、ホッとする時間になることを願います。

この映画を制作した6年間は、楽しい年月でした。

今回残念ながら日本に足を運んで映画祭に参加できなかったものの、この賞を受賞できたことが特別にうれしく光栄に思います。

私たちが初めて監督した作品で受賞したことは大きな意味のあることで、大阪アジアン映画祭には感謝してもしきれません。

さらに、観客の皆さんのよい反響にも力をもらいました。

映画監督にとって観客の皆さんの笑いと涙は、大きな喜びと力になります。

最後にもう一度、この賞をいただけたことと、皆さんのご尽力に感謝します。

近い将来に皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

薬師真珠賞

バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル

BAYARTSETSEG Bayarjargal

モンゴル|『セールス・ガール』(The Sales Girl/Khudaldagch ohin)主演俳優

《授賞理由》

常に前向きに未知の世界と接していく学生サルウルの姿を通して、新世代のモンゴル女性像を印象的に演じた。

《バヤルツェツェグ・バヤルジャルガルさんコメント》

皆さんこんにちは。はじめて出演した映画『セールス・ガール』で、大阪アジアン映画祭の薬師真珠賞を受賞して大変うれしく思います。

この映画で素晴らしい人たちと出会い、多くのことを学びました。

これからも頑張ります。

JAPAN CUTS Award

『山歌(サンカ)

Sanka: Nomads of the mountains

日本|監督:笹谷遼平(SASATANI Ryohei)

《授賞理由》

『山歌(サンカ)にJAPAN CUTS Awardを授与できることを嬉しく思います。激動の1960年代、開発と発展にさらされた日本の山間地域を舞台にした青春ドラマです。美しい映像と迫真の演技で、戦後の日本社会が抱えた葛藤や混乱を描き、近代化の波に翻弄された遊牧民の苦悩がメランコリックに表現されていました。

《笹谷遼平監督コメント》

数ある作品の中から、映画『山歌(サンカ)がJAPAN CUTS Awardを頂けたこと、大変光栄に思っています。この映画は、群馬県の中之条町にておこなわれている伊参スタジオ映画祭にてシナリオ大賞を頂いたことがきっかけで作られました。雨雲の切れ間で撮影し、地を這うヒルに間断なく襲われ血を吸われ、鉄砲水に恐怖し、かつての日本の山々に生きた「サンカ」の生活の厳しさ、しかし雨に濡れた木々の輝き、川のしぶきなど、心の底からこみ上げるような美しさを、キャスト・スタッフ総出で体験し、この映画は撮影されました。自然のふところでの、混沌とした撮影のなかで、なんとかもぎ取られた果実のようなものが、このように評価を頂けたことに、この上ない喜びを感じています。そして、この賞は私へ、ではなく、この映画に関わって下さったすべての人への受賞であり、何より群馬県中之条町の自然からふたたび賜った恵みのように思っています。あらためて、心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

芳泉短編賞

『二度と一緒にさまよわない』

We'll Never Get Lost Together Again

トルコ・ロシア・ウクライナ|監督:ユージーン・コシン(Eugene KOSHIN)

《授賞理由》

旅先のトルコでの若いウクライナ人男女の偶然の出会いと別れを描く本作は、「二度と一緒にさまよわない」であろう二人の「束の間の時間」を永遠のものとして刻みこむことに成功し、上映時間に限りのある短編作品ならではの魅惑を湛える。 現在の悲惨な情勢を頭から追い払うことは困難だが、それでも本作は、当所もなく異国をさまよう、あらゆる存在の物語であり、そんな普遍的な感動へと誘ってくれるがゆえに特筆に値する。

《ユージーン・コシン監督コメント》

すべてのスタッフとキャストを代表し、この映画を選出してくれた大阪アジアン映画祭のプログラミング・ディレクターに、この映画を芳泉短編賞に選んでくれた審査委員の皆さまに御礼を申し上げます。

僕たちの努力の結晶が日本で認められ、とてもうれしいです。(黒澤明監督や宮崎駿監督、芥川龍之介や三島由紀夫、北斎を生み出した憧れの日本で!)

この映画は、ひそかに日本とつながっています。なぜならソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』とアラン・レネ監督の『二十四時間の情事』を参考にしたからです。

僕の貯金をはたき、4年かけて制作したこの作品は、2つの出来事から始まりました。2017年春、あるトルコの村の桟橋で年配の女性が、大きな青い海を背に、「アッラー」をひたすらに言い続ける姿を見たこと。その数週間後に、サーシャのように私がフランスでとても魅力的な女性とさまよったこと(彼女は今どこに?)。キエフで別れるとき、一時的に恋に落ちた僕に、彼女は耳元でささやきました。「二度と一緒にさまよわない」。 僕の夢は、愛やその関係性、ふと浮かぶ気持ち、(ミラン・クンデラの小説のタイトルで言うと)“存在の耐えられない軽さ”を映画にすることでした。この映画がそれらを描けているかは、観客の皆さんの判断にお任せします。

おそらく観客の皆さんの中で、この映画に東洋の雰囲気を感じるかもしれません。確かに僕は、東と西の関係性をとらえ、できる限り広い視野で物語を作るようにしました。東と西の活発な交流が、人類の未来につながると信じています。

今、僕は空襲を避けるためシェルターに入り、この文を書いています。祖国が理解しがたい理由で攻撃されている中で、人類共有の未来を考えるのは場違いでしょうね。

僕たちスタッフやキャストは今、ウクライナの各地に離れ離れになっています。ヨーロッパで落ち着いた人、アジアや他の国へ行く人、ロシア軍に包囲された街に残った人もいます。幸運にも無事でいられた人も、この映画の登場人物のように、異国をさまよい、外国語にとまどい、不慣れな新しい現実に慣れなければなりません。

戦争が終わったら、ウクライナ、日本、世界どこでも、戦争ではない「愛」についての映画が作られるのを願います。それは、人類とこの地球を救うことになるでしょう。

2022年3月22日、ウクライナ、リヴィウにて。

芳泉短編賞スペシャル・メンション

阿部純子

ABE Junko

日本・ネパール|『バグマティ リバー』(Bagmati River)出演

《審査委員コメント》

エベレストで行方不明になる兄を探し続ける妹の役を、極めて過酷な条件下で、完璧に演じられていたことに敬意を示します。

《阿部純子さんコメント》

今回初めて大阪アジアン映画祭に参加させていただきました。

出演作を2作品も(『バグマティ リバー』『MISS OSAKA(原題)』)上映して頂いただけでなく、更に『バグマティ リバー』にてスペシャル・メンションに選出されたことを心より感謝致します。

私の地元でもある大阪。

鑑賞のため発表会場に居合わせた両親にとってこの受賞は嬉しいサプライズとなりました。

コロナ禍の厳しい状況の中、映画という表現活動を、更には文化の多様性を守り、励ましてくださる方々に出逢えて本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

撮影に携わってくださった皆様、観に来てくださった方々、本当にありがとうございます。

観客賞

『アニタ』

Anita [梅艷芳]

香港|監督:リョン・ロクマン(梁樂民/Longman LEUNG)

Photo Gallery

ABC Hall

ABC Hall

観客賞『アニタ』

観客賞副賞(薬師真珠)

芳泉短編賞
審査委員

芳泉短編賞スペシャル・メンション
阿部純子『バグマティ リバー』出演

芳泉短編賞プレゼンター
土井千也紀氏(芳泉文化財団)

JAPAN CUTS Award プレゼンター
アレクサンダー・フィー氏(NYジャパン・ソサエティー)

JAPAN CUTS Award 『山歌(サンカ)』
笹谷遼平監督(上映時来場)

JAPAN CUTS Award 『山歌(サンカ)』
有吉司氏(配給会社:マジックアワー代表)

薬師真珠賞副賞
(薬師真珠)

薬師真珠賞バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル
『セールス・ガール』主演俳優

ABCテレビ賞プレゼンター
板井昭浩氏(朝日テレビ放送)

コンペティション部門
審査委員

コンペティション部門スペシャル・メンション
『アニタ』

来るべき才能賞
『世界は僕らに気づかない』飯塚花笑監督