プレ企画|大阪アジアン映画祭・特別ゼミナール(全6回)
第2回開催レポート|2014年9月28日@大阪歴史博物館

爽やかな秋晴れの日曜日に大阪歴史博物館で行われた、特別ゼミナール第2回。第1回の内容をさらに深め、なぜ今フィリピン映画が元気なのか、フィリピン映画界の現状やOAFF2014でも注目したフィリピンならではの「メインディーズ」作品について、講師の暉峻創三プログラミングディレクター(以下暉峻PD)より、興味深い話が展開しました。

 

 

■この秋大阪でおすすめの映画イベント、『映像コンテンツ海外展開セミナー』/『インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン』

 

ゼミナールの冒頭に、この秋大阪で開催されるアジア映画ファンや映画・映像関係者におすすめのイベントが2つ紹介されました。

 

1つ目は「ところでどうなの?国際共同製作」と題した、記者会見感覚も味わえる映像コンテンツ海外展開セミナーです。韓国の映画監督チョ・ジンギュ氏(『花嫁はギャングスター』、『結界の男』)を招き、今中国と韓国で国際共同製作している作品について、また他国との共同製作の手順や資金繰りについて興味深いお話が伺えるとのこと。モデレーターを務める(有)ラシャナル・エンターテイメント、松永宏美氏からは、「チョ・ジンギュ監督は最新作『夏有喬木 雅望天堂』(日本語タイトル未定)の北京撮影を終えて戻ったばかり。ここだけでしか聞けないお話が聞けるチャンスです。監督は日本語で話してくださるので、聴講者から質問できる参加型セミナーを目指しています」とご紹介いただきました。

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『映像コンテンツ海外展開セミナー』イベントチラシPDF

 

2つ目は今年で3回目となる『インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン』(大阪シネ・ヌーヴォ会場での開催は10月24日(金)まで)。 今年は全16作品がラインナップ。主催者が今回特に注目してほしいと考えている作品とその見どころが紹介されました。

 

■フィリピン映画界の今を分析する~百花繚乱のメインディーズ作品~

 

今年のOAFFプログラムが発表された直後に、映画業界紙では「世界で初めてメインディーズに焦点を当てた映画祭」と報じられたと語る暉峻PD。ここから、耳慣れない“メインディーズ”についてや、なぜフィリピンで今メインディーズ作品が百花繚乱状態になっているのかを解説されました。

まずは、“メインディーズ”とは何なのか。「メインストリームとインディーズの中間に位置する映画」という意味で、『SHIFT~恋よりも強いミカタ』のように、基本の作りは監督が企画立案をするのでインディーズですが、商業公開に十分耐えうる作品力を持っている映画のことを指します。また、メインディーズの根拠になる要素として、スター俳優が出演していることも挙げられました。

日本でも「OAFF2014クロージング作品の『そこのみにて光輝く』はメインストリーム映画ではないが、綾野剛、池脇千鶴らが出演し、十分商業性があるという点でメインディーズ作品と言える」としながら、「綾野剛は出演するかもしれないが、キムタクがインディーズ映画に出演するかと考えれば、日本では越えられない一線がある。今のフィリピンにはその境界線はなく、ノーギャラ同然であっても、キムタク級俳優がインディーズ映画に出演し、そこにメインディーズと呼ばれる特徴がある。しかも非常に数が多い」とフィリピンメインディーズ映画の特徴を分かりやすく表現。

では、なぜ一斉にフィリピンでメインディーズ映画が台頭し、花開いたのでしょうか。 そこには、ぴあフィルムフェスティバルSKIPシティ映画祭のように、新しい潮流やデジタル映画に焦点をあてた映画祭が続々出現し、ブームになっていることが大きく影響しているとして、フィリピン国内の4つの映画祭が紹介されました。
・シネマラヤ映画祭/Cinemalaya
・シネマワンオリジナル映画祭/Cinema One Originals
・シネフィリピーノ映画祭/Cine Filipino
・シネンパンバンザ映画祭/Sineng Pambansa

これらの映画祭に共通するのは「自ら創り出す」という独特のシステムです。各映画祭やその主催組織に企画書で応募し、映画祭側は企画書や昔の作品を観て、入選作品を決定。入選した作品(企画書)に対して製作費を交付するという流れは、大阪アジアン映画祭の実施するCO2事業を数少ない例外に、他国の映画祭では見られない大きな特徴となっています。映画祭の期日までに各監督が映画を完成させ、映画祭はワールドプレミアの場となります。フィリピンでは昨年、そういう制度を持った映画祭が4つに増え、それぞれが成果を競っている状態だとの現状が暉峻PDより語られました。OAFF2014で上映されたフィリピン映画5作品も全てこれら4つの映画祭のどれかから製作費が提供されており、メインディーズを象徴する作品が揃った訳です。

 

■フィリピン映画界の今を分析する~百花繚乱のメインディーズ作品~

 

今までフィリピンのメインディーズ作品に焦点を絞って解説されたゼミナール。ここで暉峻PDは、「なぜ海外にフィリピンのメインストリーム映画がでてこないのか」について語られました。そこには、あまりにもメインストリームの映画がフィリピンで好調すぎ、国内だけで十分儲けることができるという羨ましい!?現状があるようです。

メインストリームの映画は映画祭にも出品しないので、世界の映画祭をプログラミングする人たちの目に触れることがないというのも遠因となっているとしながら、ごくまれに監督自身が映画祭出品に興味があれば出品されるとして、例外的な存在であるエリック・マッティ監督が紹介されました。昨年カンヌ国際映画祭監督週間に入選し、今年日本で公開された『牢獄処刑人』(公式Facebookへ)をはじめ、暉峻PDが東京国際映画祭プログラミングディレクター職時代にアジアの風部門のオープニング作品に選出した同監督の『スパイダーボーイ ゴキブリンの逆襲』(DVD発売時タイトル)にも触れ、「メインストリームで映画を撮っているが、趣向はむしろインディーズ。ニューウェーブっぽい指向の持ち主」と評しました。

 

■フィリピン映画オンリーの2週間!「メトロマニラ映画祭」

 

フィリピンのメインストリーム映画にとっての勝負シーズンはクリスマスからお正月にかけての年末年始。このシーズンにメインストリームのフィリピン商業映画を上映する「メトロマニラ映画祭」が開催されます。この映画祭期間中はフィリピンの映画館全て(一部例外を除く)がメトロマニラ入選作(フィリピン映画オンリー!)を上映しなければならないという、日本では考えられないハリウッドすら締め出す2週間となるのだとか。

最後にどれぐらいフィリピン国内映画が好調なのかを実証するデータ(フィリピン歴代興行収入TOP10)が紹介されました。ベスト10内に、第3位『Girl,Boy,Bakla,Tomboy』(13)/4億ペソ超をはじめ、ここ2年のフィリピン映画がなんと5本もランクイン。ハリウッド大作と比べても引けをとらない近年のフィリピン映画の健闘ぶりが明らかになると共に、それらの作品がいかに海外で知られていないかも浮き彫りになりました。

 

『SHIFT~恋よりも強いミカタ』公開情報
10月25日(土)~新宿シネマカリテ(東京)、11月1日(土)~シネマスコーレ(愛知)、近日上映 第七藝術劇場(大阪)、元町映画館(神戸)
公式サイト http://www.tenku-movie.com/

 

大阪アジアン映画祭特別ゼミナール第3回は、11月16日に開催いたします。