プレ企画

大阪アジアン映画祭・連続ゼミナール

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第3回開催レポート(2015年11月15日@大阪国際交流センター)

2016年3月に開催する「第11回大阪アジアン映画祭」のプレ企画、「大阪アジアン映画祭・連続ゼミナール」第3回。今回も多くの受講生からの告知や発表で盛りだくさんの内容となりました。

Asia FestカタログよりCinema Show

まずは事務局より立命館大学大阪いばらきキャンパスで11月23日(月・祝)から12月4日(金)まで開催されるAsia Festより、大阪アジアン映画祭(以降OAFF)がプログラミングした作品上映およびゲストトークが開催されるCinema Showを紹介しました。『BRAKEMODE』(日本・韓国)、『ローラーコースター!』(韓国)、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(マレーシア・中国・日本)の3本を今回は上映(写真)。立命館大学とは今後もアジア映画を通じてアジアの文化をひもとく企画を共同で開催予定です。

次に、受講生でラシャナル・エンターテイメントの松永宏美氏より、OAFFファンにお馴染みのキム・テシク監督最新作『太陽を撃て』(OAFF2015特別招待作品、映画祭タイトル『太陽に向かって撃て』)の劇場公開記念、監督インタビュー動画 をご紹介いただきました。松永氏とキム監督は、パク・チョルス監督の『家族シネマ』(98)で共にスタッフを務めて以来の仲だとか。インタビュー中にOAFF上映時やウェルカム・パーティの映像も入っています。映画をご覧になった方も、是非一度チェックしてみてください。大阪では11月21日(土)よりシネマート心斎橋 で、また愛知、岐阜、広島でも公開されます。

そして、昨年も島田角栄監督作品をご紹介いただいた紅粉チコ氏より、最新作の『乱死怒町より愛を吐いて』をご紹介いただきました。「自分を愛したいのに愛せていない人たちが登場するギャグあり、音楽あり、最終的には泣ける“はみ出し者に捧げる”作品」という同作。今回は来阪中だった出演者の車地瑞保氏(写真右)にもご登壇いただき、出演のいきさつや、尾道での撮影時に3つの台風に見舞われ、困難な状況下での撮影エピソードを話していただきました。大阪では12月5日よりシネ・ヌーヴォ で公開。12月19日からはシネ・ヌーヴォXで『島田角栄監督特集2015』も開催されます。

『乱死怒町より愛を吐いて』 出演者の車地瑞保氏

アート系作品が特徴。バングラデシュ映画の傾向、公開事情は?

桃山学院大学国際教養学部准教授の南出和余氏

今回のゼミのメイン・イベントは、通常とは異なる形式で進行しました。「これまで、想定を超える大人数の方に参加いただき実態上は講義形式が主となりながらも、この場を『ゼミナール』と称しつづけてきたのは、受講生の方から自分自身も知らなかったことを教えられ、刺激を受けていきたいと思っていたから。本日はまさにそのような場になりそうです」と暉峻創三プログラミング・ディレクター。「今回はバングラデシュ映画をテーマにしますが、この分野は情報の収集法や映画界の見取り図さえ自分ではわかっていない。そこでその分野のエキスパートである受講生の方に、今日は講師役を務めていただきます」。

発表いただいたのは、長年にわたる受講生であり、桃山学院大学国際教養学部准教授の南出和余氏(写真)。昨年9月から1年間バングラデシュで研究活動をされた南出氏より、バングラデシュの背景から、バングラデシュ映画の傾向まで幅広くお話いただきました。

バングラデシュにとってベンガル語はパキスタンから独立するときの大きな旗印であり、言語が独立のきっかけになっていますが、その影響はバングラデシュ映画にも及んでいます。インドで作られたベンガル語映画はサタジット・レイ(『大地のうた』他オプー三部作)に代表される芸術映画の伝統があり、バングラデシュ映画には芸術の流れを汲む作品が比較的多く見られるそうです。また、近年では、釜山国際映画祭2012のクロージング作品として『Television』 が上映され話題となりました。

年間制作本数は約80本(減少傾向)で、ジャンルとしてはアート映画をはじめ、中間層の発展と共に社会派映画も増えているそうです。また、大衆娯楽映画やアクション、ボリウッドリメイクものなども根強い人気を誇っています。上映される場所はシネコンの他にシネマホール(写真)という大衆娯楽映画を上映する映画館があるそうですが、こちらは入場料が安い(50円、シネコンの10分の1)一方、すごく汚いと言われ、とても女性が行くことができないような環境で、明らかにシネコンに行く客層と違いがみられるのだとか。

シネマホール

71年の独立戦争を題材にした、バングラデシュを代表するモルシェドゥル・イスラム監督最新作

バングラデシュの映画作家の中でも、南出氏が特に親交が深いというモルシェドゥル・イスラム監督の最新作を、現地での公開に先駆け特別にご紹介いただきました。モルシェドゥル・イスラム監督は、傑作と称される『車輪』(93)をはじめ、アジアフォーカス・福岡映画祭で何度も作品が紹介されています。

今年の独立記念日、12月16日に公開される最新作は、71年の独立戦争を題材に、当時の状況やヒンドゥーの苦境を描いています。15万ドル(1830万円)という低予算ながら、70年独立当時から使われているバス(写真左)を使用したり、経費節約のために本物の軍隊に出演してもらうなど、様々な工夫を凝らしていること。バングラデシュの人々が誇りにしている緑豊かな自然を最大限に生かした映画作りがされていることなど、観客に支持される作品作りについてお話しいただきました。

モルシェドゥル・イスラム監督最新作撮影風景より70年独立当時から使われているバス モルシェドゥル・イスラム監督最新作撮影風景

また、このような独立戦争をテーマにした作品をどの監督も必ず撮っている理由として、軍人政権下(75-91年)の「戦争語り」の禁止を挙げ、独立から45年経っても独立戦争をナショナルアイデンティティのよりどころとしているバングラデシュの現状を「経済発展著しい今でも、次にくるものがない」とし、ベンガルとしての歩みを重視するバングラデシュが、今苦悩している点も明かしてくださいました。最後に暉峻PDからも、「アジア映画ファンの関心の主流は中華圏や韓国の映画だと思いますが、本日の話を聞いた皆さんはもう、バングラデシュ映画が上映されたら駆けつけずにはいられなくなったのではないでしょうか?」とのコメントが。「バングラデシュからの作品応募は少ないですが、最近ポツポツとではありますがきはじめているので、より深い理解と関心を持って作品鑑賞に当たれそうです」。来年のOAFFは、バングラデシュ映画が登場するかもしれませんよ!

大阪アジアン映画祭・連続ゼミナール第4回は、12月20日(日)大阪国際交流センターにて開催いたします(定員に達しましたため、新規の受講申し込み受け付けは締め切らせて頂きました)。