第16回大阪アジアン映画祭
受賞結果一覧
グランプリ(最優秀作品賞)
『いとみち』
Ito
日本|監督:横浜聡子(YOKOHAMA Satoko)
《授賞理由》
今回全員が日本人審査委員で、日本人監督の作品にグランプリをすんなり渡していいのか議論を重ねました。とはいえデビューから13年、横浜聡子監督が故郷、青森に戻り、深度のある人物像を構成したことを、評価しました。定型のフィクションドラマなのにステレオタイプにならない魅力がこの作品には満ち溢れています。ヒロイン役、駒井蓮さんの独特のビートに心がわき踊りました。
《横浜聡子監督コメント》
今回初めて大阪アジアン映画祭に参加させていただいたことだけでも大変喜ばしいことでしたが、映画『いとみち』がグランプリと観客賞をいただくことができたと聞き、素直に驚いております。『いとみち』初回上映時に客席にいながら、「この映画は観客にどんな風に伝わるんだろう?」と幾分緊張しておりましたが、その緊張が、「審査委員の方々やお客様に何かしら伝えることができたのかもしれない」という小さな実感と喜びに徐々に変わり、今じわじわと胸に押し寄せております。共に映画を作った俳優、スタッフ、関係者にこの喜びを早く伝えたいです。審査委員の方々とお客様の決断を心の支えに、映画『いとみち』をより多くの方に観てもらうべく、これからも邁進いたします。コロナ禍が続く中、映画祭開催に尽力された関係者の皆様、そして劇場に足を運んでくださった皆様にこの場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!
来るべき才能賞
チェ・ジニョン
CHOI Jin-young/최진영
韓国|『生まれてよかった』(The Slug/태어나길 잘했어)監督
《授賞理由》
思わぬ状況に陥った少女が、狭い屋根裏部屋で干からびたナメクジを見つけ、手に取った瞬間から、私たちはこのヒロインを応援せずにはいられませんでした。この少女が抱える孤独を、チェ・ジニョン監督は映画の形でしか差し出すことの出来ない方法で描いたことを評価します。
《チェ・ジニョン監督コメント》
自分には才能がないと思っていたのに、来るべき才能賞を授与くださりありがとうございます。
この映画を制作する過程で、私自身も「生まれてよかった」とずっと思ってました。
一緒に映画を作る行為自体が美しいことだと思ったからです。
コロナ禍で私たちみんなが身も心も疲弊するなかで、この映画が私たちの魂をなぐさめ、小さな癒しとなる映画として記憶されると幸いです。
この映画と出会って下さったすべての方々に感謝します。そして私たちはみな尊く価値のある存在だということを忘れないようにできるとうれしいです。
本当にありがとうございます。
ABCテレビ賞
『姉姉妹妹』
Sister Sister/Chi Chi Em Em
ベトナム|監督:キャシー・ウエン(Kathy UYEN)
《授賞理由》
まずはサスペンス映画として、文句なく面白い。丁寧に練られた脚本、快調なテンポ。あれだけの内容を、よくぞこの尺に収めたものだと、感心しました。
《キャシー・ウエン監督コメント》
この度は『姉姉妹妹』を大阪アジアン映画祭のABCテレビ賞に選んでくださり、また日本で放映することになり大変ありがたく思います!
より多くの日本の観客に、ベトナム映画である私の作品を放送で見ていただけることにとても興奮しています。
この作品は私の初監督作品であり、参加してくれたオールスターチームの力なしでは完成しませんでした。あらゆることを可能にし最後まで私を支えてくれたミューズ・フィルムのウィル・ヴー氏とハッピーキャンバスのプロデューサーであり脚本家でもあるティモシー・リン・ブイ氏に心から感謝します。
才能あふれる主演のタイン・ハン、チー・プー、ライン・タインをはじめ素晴らしい俳優たち、力を尽くし鮮やかな仕事ぶりを発揮したスタッフたち、特にマイク・ブラウン氏、タイン・ブイ氏、アンバーストーンメディアは私の信念を支えサポートしてくれました。
そして私に許しについて教えてくれた母のアニーにこの映画を捧げます。この映画は暗いテーマではありますが、復讐の連鎖を断ち切る唯一のもの――自分と他者への許しを描いています。
大阪アジアン映画祭で、ベトナムを代表することができて光栄です。アリガトウゴザイマス!
薬師真珠賞
リー・リンウェイ
Lily LEE/李玲葦
台湾|『人として生まれる』(Born to be Human/生而為人)
《授賞理由》
リー・リンウェイ演じる主人公の信じ難いほどのリアリティが、容易ではない主題に挑んだ『人として生まれる』に圧倒的な説得力を与えました。
《リー・リンウェイさんコメント》
去年撮影した『人として生まれる』が大阪アジアン映画祭に入選し、さらに薬師真珠賞まで受賞できて、本当に嬉しいです。これは私が俳優として初めてもらった賞で、大きな励みになります。大阪アジアン映画祭に心から感謝し、これからも頑張りたいと思います。そして優秀で、温かく、楽しいスタッフと一緒にこの映画をつくれたことに感謝するとともに、完成した作品を見るのがとても楽しみです!
JAPAN CUTS Award
『B/B』
B/B
日本|監督:中濱宏介(NAKAHAMA Kosuke)
《授賞理由》
今年度のインディ・フォーラム部門の入選作は総じてクオリティが高く、審査は簡単ではありませんでした。独創的なビジュアルスタイルと自信に満ちた演出によって、不公平な世界に対する若者の嫌悪を直感的に描いた『B/B』にJAPAN CUTS Awardを授与することができてうれしく思います。中濱宏介監督のデビューと主演のカレンさんの演技は元気を与えてくれました。若い才能の今後に大いに期待しています。
《中濱宏介監督コメント》
大学の卒業制作として2019年の夏に撮影した『B/B』は2020年の2月末、日本国内で新型コロナウイルスが猛威を奮いはじめた真っ只中で完成しました。
大きなスクリーンでの上映は軒並み中止になり、作品が陽の目を見る事はありませんでした。
「夢を語るのはもう辞めよう」と別の道を模索していた約1年後の今、大阪アジアン映画祭に選出して頂きシネ・リーブル梅田、ABCホールでの上映が実現しました。
自分が監督した映画が学生時代から足繁く通っていた映画館の大画面で上映されている姿はまるで夢見心地で、この幸福も偏にコロナ禍の中で映画祭開催に尽力してくれた関係者の皆様、お越し下さった観客の皆様、そして人生初めての賞を授けてくれた審査員の皆様が齎してくれた物です。本当に有難う御座いました。
本作をより多くの人に届けられる様に、そして今後も「映画」を作り続けられる様に、精進していきます。
JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『4人のあいだで』
Among Four of Us
日本|監督:中村真夕(NAKAMURA Mayu)
《授賞理由》
コロナ禍に起因する孤独というテーマに対する巧みなアプローチが光りました。撮影時の制限を活かしきり、映画言語の力を印象的に使って、卓越した演技にも支えられ、テーマが視覚的に表現されていました。
《中村真夕監督コメント》
昨年の緊急事態宣言中、何もできない歯がゆさを抱えて、悶々としていました。この世界的なパンデミックについて何か作品にできないかと、優秀な俳優、スタッフたちにほぼ持ち出しで、一晩、集まってもらい、緊急事態宣言明けに撮影した作品です。どんなに限られたマイナスな状況でも、そこから何かポジティブなものが生み出せるのではないかと、みんなで知恵を絞って作りました。この度は、栄誉ある賞に選んでいただき本当にありがとうございました。
芳泉短編賞
『イニョンのカムコーダー』
In-young's Camcorder/인영의 캠코더
韓国|監督:オ・ジョンソン(OH Jeong-seon/오정선)
《授賞理由》
丁寧に積み上げられた感情の抑揚と、その変化に沿った時間の流れ、そして他者との対峙と距離感。カムコーダーの存在により、その世界観が引き立ち、全編通してセンスと優しさに溢れた作品。余韻の残るラストシーンに本作だけではなく、監督がこれから携わる映画へのはかりしれない可能性を感じました。
《オ・ジョンソン監督コメント》
こんにちは『イニョンのカムコーダー』監督のオ・ジョンソンです。
未熟な作品にも関わらず映画的価値を高く評価くださりありがとうございます。
私は学生でありながら急変する映画産業の中をさまよってきました。このまま進んでよいものかどうか疑問を持っているところに、この賞をいただけて勇気をもらいました。
ありがとうございます。
Photo Gallery
ABC Hall
ABC Hall
観客賞『いとみち』
観客賞『いとみち』& 副賞(薬師真珠)
芳泉短編賞『イニョンのカムコーダー』
プレゼンター:土井千也紀氏(芳泉文化財団)
JAPAN CUTS Award プレゼンター:
カズ・ワタナベ氏(NYジャパン・ソサエティー)
JAPAN CUTS Award
『B/B』中濱宏介監督
JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『4人のあいだで』
JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『4人のあいだで』中村真夕監督(上映時来場)
薬師真珠賞
リー・リンウェイ『人として生まれる』
薬師真珠賞
ABCテレビ賞『姉姉妹妹』
プレゼンター:板井昭浩氏(朝日テレビ放送)
コンペティション部門審査委員
来るべき才能賞『生まれてよかった』チェ・ジニョン監督
グランプリ『いとみち』
グランプリ『いとみち』 横浜聡子監督(上映時来場)
グランプリ『いとみち』松村龍一プロデューサー