ホーム > 開催レポート > 3月10日(日)
第8回大阪アジアン映画祭
開催レポート 3月10日(日)

映画祭3日目

 

午後から雨が降り、昨日の暖かさがウソのように冷えてきた日曜日。

今日も、ブルク7とシネ・ヌーヴォの2会場で9本の作品が上映されました。

 

 

 

 

シネ・ヌーヴォでは、本映画祭史上初のイラン映画『最後の一段』(特別招待作品部門)で上映スタート。
人間の普遍的な「死」や「愛」を比喩的な手法で描く秀作です!
また、特集企画《GTHの7年ちょい》も始まりました。

 

 

午後より、『ユートピアサウンズ』(特集企画《日本映画人のニュー・フロンティア》)の三間旭浩監督が来場されました。

 

三間旭浩監督 三間旭浩監督

 

あいにくの雨にもかかわらず満員となった客席からは、映像の美しさやカメラワーク、音の効果へのこだわりなどが良かったとの声が挙がりました。

本作品のテーマについて「大きな流れをテーマにしたかったため、子どもから老人までの幅広い年齢層の人物を登場させた物語を描いた」と。また、「“音”から発想した映画づくりだった」という監督。なるほど、タイトルに込められた背景や、主人公・夏目が老録音技師であることなど、理解できてきます。目に見えない「音」がつなぐ3組の物語。脚本の妙に、あらためて感心。

現在は音楽家と映画監督がコラボした短編作品を制作中とのこと、次回作が楽しみです。

11日(月)の舞台挨拶の模様はこちら

 

 

井上淳一監督 井上淳一監督

この日の最終上映は『戦争と一人の女』(特別招待作品部門)。 高校生の時、故・若松孝二監督や荒井晴彦さんと出会って脚本家になられたという、井上淳一監督が登壇されました。

 

本作では、トラウマを抱えた人間が社会に溶け込むとどうなるのか、ということを描きたかった、とのこと。
また、日本人が中国でやってきたことと天皇の戦争責任の2つを描いたことが、“アジアに恥じない”ことであると語る監督。「ここ30年ほど、そういったことを描いた映画が見られない。インタビューなどで『刺されないんですか?』などと心配されるけど、やったことはやったと認めるべき。そこから始まることがあります」と、信念のコメント。
激しい性描写についても、挑戦という自覚をもって演出されていたことにも触れられました。
劇中の音楽については、「戦時中=タンゴ(濃縮された男女関係)から戦後=ボサノバ(解放された男女関係)というイメージだったけど、音楽が勝ちすぎるためタンゴだけになった。」というエピソードも。

 

監督、入魂の1作。

次回上映は13日(水)シネ・ヌーヴォにて。

13日(水)の舞台挨拶の模様はこちら

井上淳一監督が登壇されたオープニング・セレモニーの様子はこちら


 

 

 

 

ブルク7では、完売していたヤン・ヤーチェ監督の台湾作品『GF*BF』(特別招待作品部門)からスタート。日本初上映作品が次々と上映されました。

 

 

ヴィカース・スワループさん(インド総領事)ヴィカース・スワループさん(インド総領事)

『わが人生3つの失敗』(特別招待作品部門)の上映前に、『スラムドッグ・ミリオネア』原作者であり、インド総領事ヴィカース・スワループ氏が特別にご登壇。本作の見所などメッセージをいただきました。

 

『わが人生3つの失敗』は友情を繊細に描いたリアリティーのある新しいボリウッド映画」と紹介。

また、大阪の印象を聞かれ「飴を持ち歩き、コミュニケーションを取る大阪のおばちゃんが魅力的。大阪には温かい人々のハートがありますね」と、目の付け所に微笑んでしまいました。


 

 

昨年の『ギリギリの女たち』に続き、今年も小林政広監督作品、日本初上映の『日本の悲劇』が登場。

「日曜の夜用とはいえない、楽しくない作品にご来場いただきありがとうございます」とご挨拶。いえいえ、楽しみにしておりました。

小林政広監督

この作品は、すでにインドで上映の機会があったそうで、現地では「思いを込めて命をたつ」ことがまず理解されにくく、「お金がないことは、そんなに不幸なことなのか?」という質問があったとか。所かわれば視点も変わる。映画の観方の面白さを語ってくださいました。

 

本作は仲代達矢さんの演技にうなり、また小林政広監督の視点が光る一作。

「仲代さんとは『春との旅』が終わった時、“次回もよろしく”とおっしゃって。リップサービスだと思っていたのですが、月に1回は連絡がはいるようになり、こんな暗い役どころですが脚本をおみせしたのです。」もちろん、即、快諾いただいたとのこと。仲代さんも監督に惚れこんでいらっしゃることがわかります。

 

小林政広監督小林政広監督

因みに、劇中では、仲代達矢さん演じる不二男を背後からとらえる画が多い。撮影3日目頃に、それに気づかれた仲代さん。「どこにカメラがあるんですか?」と質問されたとか。説明されると背中からのショットとは、役者冥利につきる、とおっしゃられたとか。

小林政広監督にも嬉しそうなエピソードでした。

終映後、サインに応じる小林政広監督。

終映後、サインに応じる監督。

作品を観たばかりの観客たちも、改めて質問や感想を直接届けていました。 これも映画祭ならでは!の嬉しい時間です!

 

15日(金)の舞台挨拶の模様はこちら

17日(日)クロージング・セレモニーの模様はこちら