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第8回大阪アジアン映画祭
開催レポート 3月16日(土)関連イベント トークセッション「台湾映画の現在(いま)を語る」/「インディペンデント映画とCO2の未来図」

映画祭9日目 関連イベント

 

トークセッション「台湾映画の現在(いま)を語る」

インディ・フォーラム部門 トークセッション1「インディペンデント映画とCO2の未来図」

 

 

トークセッション「台湾映画の現在(いま)を語る」

 

満員御礼のギュウギュウ詰めで行われた「台湾映画の現在(いま)を語る」トークセッション

登壇者は、(写真左から)ヤン・イーチェン監督(『ポーとミーのチャチャ』)、ジェイムス・シウ・チアハオ プロデューサー(『ポーとミーのチャチャ』)、ヒーロー・リン監督(『BBS住人の正義』)、ヤン・ヤーチェ監督(『GF*BF』)の4名。台湾での新しい時代のつくり手がそろいました。

 

「台湾映画の現在(いま)を語る」トークセッション

 

現在の台湾の映画の現状については、「市場は、右肩上がりで、政府や各都市が資金提供してくれる機会も増えています。」とヤン・イーチェン監督が語れば、「先輩方が映画作りを奨励し、手伝ってくれる環境もある為、若い監督の新たな参入がしやすくなっていると思う。」と、ジェイムス・シウ・チアハオ プロデューサー。お互いに初めての映画作品となった『ポーとミーのチャチャ』が、多くの追い風を受けてつくることができたその背景を語られました。

 

一方、ヤン・ヤーチェ監督は、「2008年の『海角七号』が若い層の支持を獲得したことで、台湾映画が復活した」と分析。ヒーロー・リン監督は、最近の若手映画製作者は、日本やアメリカの文化にとても多くの影響を受けているとし、「日本のドラマなら何でも知ってます!」と話されました。

 

また、“現在の台湾映画のマーケティングは二極化している”というのは、今回の登壇者の共通認識のようで、中国本土で興行をしない限り、予算の回収は難しいのだそう。「当たれば大きいが、制約が多く、リスクも高い“大陸狙い”か、低予算だが自由度の高い“アジア向け”か。今、台湾映画はこの交差点にいて、どちらの道に進もうか悩んでるのが現状です」と語るのは、ヤン・ヤーチェ監督。「今回の『GF*BF』は、完全に後者です。学生運動、政府への反乱、不倫……大陸では、99%受け入れられない。でも、そんな中で、この映画に投資をしてくれた華僑の人が居るのです。"市場主義になるなよ"って言ってもらえ、このような作品を受け入れてくれる中国人もいることが分かり、すごく嬉しかった」。

その後も話は尽きず、時間を過ぎても、質疑応答が絶えない盛況ぶり。みんな真剣に聞き入り、有意義な時間となりました。

 

サインに応じるゲストの皆さん

トークセッション終了後も、シネ・ヌーヴォ玄関前に移動し、しばらく熱き時間は続きました。

「皆さんが若い頃影響を受けた映画は何ですか?」という質問に、それぞれの作風を大きく反映した答えが!

ヤン・イーチェン監督

ヤン・イーチェン監督

「ホー・シャオシェン監督全般と、アン・リー監督の『ウェディングバンケット』。好きすぎてベルリンまで家族旅行に行ったほどです」

ジェイムス・シウ・チアハオ プロデューサー

ジェイムス・シウ・チアハオ プロデューサー

「ハリウッド映画がばかり見てましたが、大学時代はアン・リー監督をたくさん観ました。『飲食男女(恋人たちの食卓)』が好きです。自分が今後目指す作品は『イングリッシュ・ペイシェント』とか『ラストエンペラー』ですね。」


ヤン・ ヤーチェ監督

ヤン・ヤーチェ監督

「僕は、ハリウッドが大ッキライでした!古い文学的なものが好きで、日本の映画なら黒澤明の『生きる』がいいです。それから、僕の尊敬する人は向田邦子です。」

ヒーロー・リン監督

ヒーロー・リン監督

「大学までは、映画と言えばハリウッド!それ以降は日本のドラマ、アニメ――で、アニメーションの会社に就職しました。」


 

 

トークセッション「インディペンデント映画とCO2の未来図」

 

インディ・フォーラム部門トークセッション第一弾として「インディペンデント映画とCO2の未来図」を開催。

日本のインディペンデント映画とCO2の歴史が紹介された上でインディペンデント映画の問題点や現状など、熱く語られました。その模様を抜粋にてお届けします。

・出席者:公益財団法人ユニジャパン事務局長の西村隆さん、万田邦敏監督、脚本家の向井康介さん、映画文筆業の那須千里さん、司会はCO2事務局長の富岡邦彦氏。

 

トークセッション「インディペンデント映画とCO2の未来図」
富岡事務局長

富岡事務局長は

「かつては商業映画のアンチテーゼとしてインディペンデント映画があった。観客も商業映画の形を壊すのを観て楽しんでいた。今は壊されつくした物しかない。物語が欠落していることが多く、物語を発見していくのがCO2の1つのテーマ。それをつくり手に理解してもらうのは難しい。いっそのこと芸術と言ってしまう方がいいのかとも思う」

 


西村隆さん

西村隆さんは

「映画は千何百円の商売。観てくれる人がいて初めて成立する。大島渚に客が入ったかといえばそうでもない。しかし発信力の強さは凄いものがあった。それがないと映画は撮れない。発信力の強さといえば、リムー・カーワイのように何処にいても映画が撮れる自由さは必要」


向井康介さん

向井康介さんは日々の仕事の中で

「商業映画の俗っぽさを日々感じていて、原作があってその中で自分を出さなきゃならない。“何を作りたいか”ではなく、与えられた題材でどう自分を出すか。そこで残ったのが自分の個性。」また「枠の中で何かをやった先に批判が生じる。個人的に好きなものを撮ってしまうと批判にならない」と。


那須千里さん

インディペンデント映画の状況に詳しい那須千里さんは

「今のインディペンデント映画の問題点は、どれだけ観客に見せることを意識しているのか。サービス精神のなさを感じることが多い。商業映画と同じ形でチケットが並ぶ。その意識が必要」


万田邦敏監督

万田邦敏監督はご自身が映画美学校で教鞭を取っている経験を交えて、

「自主映画は立ち位置が難しい。自分でお金を出して好きなものを撮って何が悪いとも言える。僕らが若い頃は徹底的に閉じていることをアピールしていた。今は僕らが自主映画と言っていたものとは予算や規模が変容して、劇場公開が簡単になって来たことで、元々開かなくていいものが開かざるを得ない状況。

僕も実感しているが開くと別の世界が見えてくる。学校で開いてない生徒に補助線を引く、物語を見せることを教えるとだんだん開いてくる。プロデューサーは自分の撮りたいものを撮らせてくれるのではなく、自分を開いてくれる存在と捉えることが大事。他人との付き合い方を覚えると本人も映画も豊かになり、他人を巻き込む映画になると思う」


 

今後の展開について富岡事務局長は

「CO2が始まった当時は、作っても劇場公開が難しかった。ここ5年ほど簡単に公開できる状況になってきたことで、CO2も方向転換を考えないといけない時期に来ていて、プロデューサーを育てることも必要だと思っている。

制作を助成して、映画祭で上映した時点ではまだゼロの地点。そこから一般のお客さんに観ていただき、批判を受け入れることができるかどうか。

これから先、インディペンデント映画の可能性は大いにあり、商業映画で出来ない部分を時間をかけて、脚本を練り役者も鍛えて本気で制作すれば、商業映画に勝てる“これが映画だ”というものが出来ると考えている」