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第8回大阪アジアン映画祭
開催レポート 3月16日(土)vol.1 梅田ブルク7/梅田ガーデンシネマ/シネ・ヌーヴォ

映画祭9日目

 

暖かな土曜日。映画祭も今日、明日残すのみとなりました。

大勢のお客様、そしてゲストの皆さんが集って、会場はとても熱いものになっていますよ。

 

 

 

 

梅田ブルク7

『誰もいない家』の上映後、世界初上映となる『Fly Me to Minami~恋するミナミ』が上映されました。

 

 

今回、世界初上映となったリム・カーワイ監督の最新作『Fly Me to Minami~恋するミナミ』(コンペティション部門)が上映となりました。

遅い時間の上映にも関わらず、会場にはミナミ発の映画に本当に多くの方が駆けつけてくれました。

 

上映後の舞台挨拶には、リム・カーワイ監督、小橋賢児さん、ペク・ソルアさん、製作総指揮の加藤順彦さんが登壇し、和やかなトークセッションが繰り広げられました。

 

リム・カーワイ監督、小橋賢児さん、ペク・ソルアさん、プロデューサーの加藤順彦さん

「エネルギッシュな大阪の街で過ごせたことが嬉しかった。」と答えた小橋賢児さん。この作品で7年ぶりの俳優復帰作となったそうです。

共演した竹財輝之助さんとの演技はどうでしたかとのお客さんからの質問に、「言葉が通じないことが大変でしたが、相手の目を見れば感情が分かるようになりました」とペク・ソルアさん。劇中では流暢な日本語を話していました。

小橋賢児さん ペク・ソルアさん

小橋賢児さん              ペク・ソルアさん

 

リム・カーワイ監督の演出方法について2人は、「監督は奇跡的なタイミングを求めていて、あのときミナミにいた誰しもがエキストラになっていた」とその時しか起こらないことを捉える監督のスタイルに感心していました。

最後にリム・カーワイ監督は「ミナミを恋したくなる場所に映したかったことと、映画を観た人に実際にミナミに遊びに来て、主人公のように触れ合いや出会いを楽しんでほしい」としめ、監督の大阪ミナミに対する思い入れを感じました。

リム・カーワイ監督 プロデューサーの加藤順彦さん

リム・カーワイ監督            製作総指揮の加藤順彦さん

 

本作は秋の劇場公開を予定。「邦画でも洋画でもない新しいアジア映画が完成した」と製作総指揮の加藤順彦さんが意気込む通り、3言語、3カ国でのロケを実行したこの映画は間違いなく新しい潮流のアジア映画といえるでしょう。

知っている場所が映っている面白さや、あれ、これってミナミ?とふと思ってしまうような、新しい発見を与えてくれる映画でした。劇場公開もお楽しみに。

17日(日)の舞台挨拶の模様はこちら

17日(日)トーク・セッション「アジアン・ミーティング2013」の模様はこちら

愛くるしいペク・ソルアさん。

『恋するミナミ』チームの紅一点は、とても華やかでしたよ。

バーナード・チョウリー監督、リナ・タンプロデューサー

 

 

 

 

梅田ガーデンシネマ

3回の上映共にゲストが登壇。おおいに賑わう1日となりました。

 

 

 

イ・ジェヨン監督イ・ジェヨン監督

まずは韓国よりベルリン国際映画祭で世界初上映を果たしたばかりの『裏話 監督が狂いました』(コンペティション部門)。(前回の舞台挨拶の模様はこちら

会場にはご両親も来場される中、イ・ジェヨン監督が登場。

 

若い時は劇映画を作っていたが、最近は若い頃に映画について悩んだことを映画で実践していると語るイ・ジェヨン監督。俳優たちは本当に映画ができると思っておらず、怒りをなだめるのに時間がかかったそう。

 

実際の撮影は3日間だけれど、17台のカメラで撮影、計270時間以上の素材を8ヶ月かけて編集し、普通の映画製作工程とは逆の作りであることを告白。「作品中の劇中劇も短編作品に仕上げたので、3日間で2本の映画を作りました。ギネスにも挑戦したい」と意外と本気の大胆発言も!

本当にLAから一度も現場に現れず撮ったことで「現場の不満を聞かずに済むのがラク」とまんざらではなかったようです。

 

サイン会でもファンと意見交換や写真撮影をされながら、丁寧に応じていらっしゃいました。


 

 

ヤン・ヤーチェ監督『GF*BF』

『GF*BF』(C)2012 ATOM CINEMA CO., LTD. OCEAN DEEP FILMS CENTRAL MOTION PICTURE CORPORATION HUAYI BROTHERS INTERNATIONAL MEDIA LTD ALL RIGHTS RESERVED

そして、今年の映画祭開催前より観客からの注目度が高かった台湾映画『GF*BF』(特別招待作品部門)が上映。

歴史的背景を切り取りながら、現代と約30年にも渡る台湾の歴史を散りばめながら、高校同級生男女の切なすぎる恋と自由を求める闘いを描いた感動作。上映後、熱気に包まれる満員の場内に、ヤン・ヤーチェ監督が登壇。

 

主演のグイ・ルンメイやジョセフ・チャンとは長い知り合いであるがために、シナリオを直前に変え、主役三人のうち一人には知らせず、即興の状態において本当の演技力を引き出すような独特の演出を行ったことを披露。「台湾の80年代は情熱的な時代。今の時代の人にこの作品を観てもらって、もう一度情熱を取り戻してもらいたい」と本作制作の狙いを明かしてくれました。ラストのグイ・ルンメイとジョセフ・チャンが学校のプールで戯れる美しく印象的なシーンについては「プールの水がほとんどないのは、青春が過ぎたことを表現したかった」、最後に双子の娘たちと彼女たちを育てる主人公を描くことで、ままならない人生の果てに希望や小さな幸せがあることを伝えたかったのだとか。(ネタバレ、ごめんなさい)

 

台詞ではなく、視線や表情で揺れ動く心情を見事に表現した主役三人の熱演に青春時代の我が身を投影した方も多かったかもしれません。

16日(土)トークセッション「台湾映画の現在(いま)を語る」の模様はこちら

17日(日)『GF*BF』ファンミーティングの模様はこちら


 

 

ハン・イエン監督とプロデューサーのアイヴィー・ホウさん『メモリー –First Time-』

『メモリー –First Time-』(C)2012 Irresistible Beta Limited, Edko Films Limited, Edko (Beijing) Films Limited, Beijing Happiness Union Co., Ltd., BDI Films Inc. All Rights Reserved.

最終回は、『メモリー –First Time-』(コンペティション部門)のハン・イエン監督(中央)とプロデューサーのアイヴィー・ホウさん(右)が登壇。

 

“First Time”と言う原題にこめられた意味について「主人公のシーチャオがこれまでの人生の中で体験できなかったことを初めて体験するという意味と、彼女の“First Time”は「最後」という意味でもある」と答えた監督。

また、韓国映画『アメノナカノ青空』からほんの少しヒントを得ていますが、いまの中国大陸の若者を描き、シナリオはすべてオリジナルとのこと。その他、監督が日本映画、特に岩井俊二監督作品からヒントを得て、これまでの中国の恋愛映画とは違ったものを作りたかったとも。

 

時間の最後には、監督から「この作品を観て涙した人は?」という質問に、観客のほとんどが手を挙げるシーンも。

 

「人が亡くなるということは必ずしも悲しみを与えるわけではなく、命は無くなるが、亡くなった人の精神は残された人々の気持ちにいつまでも残されるのです」と語られて、遅い時間ではありましたが、澄んだ気持ちになれた夜でした。


 

 

 

 

今日も、シネ・ヌーヴォは、フル回転。

朝から大勢のお客様が訪れ、狭いロビーはとても賑わいました。

 

 

世界初上映となる『親愛』(コンペティション部門)は、補助席の出る満員御礼ぶり。

国際女優として活躍しているユー・ナンが子どもを育てながらキャリアウーマンとして働く都会の女性を熱演。思わぬ“母親”の登場に心乱されながらも、改めて母親と対峙し、また自分のアイデンティティーとも対峙する上質なヒューマンドラマに仕上がっています。

 

本作が長編デビュー作となるリー・シンマン監督が登壇。

 

リー・シンマン監督リー・シンマン監督

「日本のみなさんに最初に観ていただけて、うれしいです。人類に限らず、地球上のありとあらゆる母性愛を描きたかったのです」と挨拶されました。

「今の中国人女性が過去の歴史をどう汲み取っているかを感じてほしいです。また、大都市に住んでいる女性が見失っているものを描いています」と作品の見どころを紹介。母として、娘として、女として悩み自分なりの答えを見つける主人公の姿を女性監督らしく繊細に描く。

 

リー・シンマン監督左から監督、プロデューサー デビッド・ワン、エグゼクティブプロデューサー チェン・ジーチエン

因みに、リー・シンマン監督はハルピンで生まれ育ったため、日本の文化に接しやすかったそう。日本のものや文化が好きで、今回もうなぎを食べてきたが感想は「ヘビーメタル」だとか。

17日(日)クロージング・セレモニーの模様はこちら

 

左から監督、プロデューサー デビッド・ワン、エグゼクティブプロデューサー チェン・ジーチエン

左からエグゼクティブプロデューサーのチェン・ジーチエン氏、
リー・シンマン監督監督、プロデューサーのデビッド・ワン氏

 

 

続いて、『BBS住人の正義』(コンペティション部門)ヒーロー・リン監督が登場。

 

ヒーロー・リン監督ヒーロー・リン監督

本作、台湾では若い人たちに受け収益につながったが、もともとネットものやアニメものは収益につながらないとされているそうです。

また、「作品の個性が強いために好き嫌いがわかれる」と、自ら作品を評した監督。脚本がアニメ用に作られたために、実写もアニメっぽくしようと 俳優さんたちにもアニメっぽい動きで演じてもらったそうです。その動きが日本の某ゲームソフトのキャラクターの動きに似ているそうで、監督が真似をされて会場が笑いに包まれました。そういったアニメっぽく撮る手法というのも台湾では今まで無く、成功するかわからなかったけど、新しい風を吹き込む挑戦となったよう。

 

ヒーロー・リン監督ヒーロー・リン監督

出演したアイビー・チェンさんについては「かわいくないと救おうという気にならないからね」(笑)、そのかわいさを強調。

また、「日本の俳優で仕事をしてみたいのは?」という会場からの質問には、「知っている日本の俳優の方はみんな大物だから、使うなんて大それたことはできないです」と謙虚な姿勢。それでも、日本人俳優の出演する監督作品もみてみたいものです。

16日(土)トークセッション「台湾映画の現在(いま)を語る」の模様はこちら