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ミュージカル作品制作の秘話を惜しみなく語る!『52Hz, I LOVE YOU』

《特別招待作品部門》『52Hz, I LOVE YOU』が上映され、ウェイ・ダーション(魏徳聖)監督が登壇されました。

本作はとてもハッピーなミュージカル。着想期についてウェイ・ダーション監督は「この物語自体は業界に入ってすぐに考えていました。当時は恋愛経験もなかったが、バレンタインデーに、もし仮に花屋の女性とチョコレートを配達する男性が出会ったら?!つまり人の愛や恋のために働く二人が出会ったら、そこで何が起きるだろうかということを想像し、自分にもそういうことが訪れるといいなという願望も混ぜつつ考えていました」とのこと。

具体的にミュージカルにしようと決めたことについて「物語はとてもシンプルだし、一日に起こっている出来事を、それほど深い内容にすることもできない。またプロットもシンプルだったために、音楽劇にしてはどうか、と。音楽を使えば、メロディーや歌詞が、登場人物の心情を観客に伝えて、観客を作品の中に引き込む効果があるのではないかと考えたのです」と語り、また、その楽曲について「全てオリジナル。脚本を書いた当初、歌詞は簡単な概念を書いたもので、それを作詞家に渡し、それを音楽にしてもらうようにして作曲していったので、普段とは逆の形になっています」と話されました。

「タイトルの形としては、『〇〇, I LOVE YOU』にしたいと考えていた」というウェイ・ダーション監督。しかし、ただ、このアイラブユーという言葉は神聖かつ俗っぽい言葉にもなりうるので、何を〇〇に入れればその安っぽさが消えるのかと考えたそうで「この世で一番孤独なヘルツと言われる52ヘルツを入れれば、ネガティブさが消えて、人は孤独ではないということを暗示する意図を込められると思ったのです」と話されました。

ピンクやデニム。衣装へのこだわりを聞かれた監督は「服は詳しくないし、特に思い入れはこれといってない」と前置きした上で「表現したかったことは、身分が高くもなく低くもない、あくまで普通の人であるといったこと」と話されました。そこからピンクについての個人的なエピソードを披露。「(台湾では披露宴の前に写真をとる習慣があり)その時に妻がピンクのスーツを用意していたので仕方なくそれを着て写真を撮ったら、結婚式当日、妻がその写真を拡大して会場に掲げていたのです。とても恥ずかしかったです(笑)。全身ピンクということで。こういった妻との些細な出来事を登場人物にも投影させてみたところもありますね」と。

ウェイ・ダーション監督の人柄にもふれ、会場を埋め尽くした多くの観客たちの大きな拍手がいつまでも続きました。

愛に溢れる新ジャンルホラー作品を目指した『海の底からモナムール』

《インディ・フォーラム部門》『海の底からモナムール』の上映前に、ロナン・ジレ監督、出演の桐山漣さん、清水くるみさん、杉野希妃さんが挨拶にたたれました。

ロナン・ジレ監督は「昔から日本で映画を撮りたいと思っていたが、それが実現できてとてもうれしいです」と述べ、桐山漣さんは「国とか言語の壁を越えて一緒に仕事ができ、貴重な体験をさせていただきました。楽しく見ていただければと思います」とご挨拶。清水くるみさんからは「8割方水のなかにいる役でした。いろんな視点で観られる映画になっていると思います」と気になるコメント。杉野希妃さんは「この映画祭は今日、司会のリム・カーワイ監督と参加したこともあます。思い入れのある映画祭です」とそれぞれが挨拶され、上映に。

ロナン・ジレ監督

桐山漣さん

清水くるみさん

杉野希妃さん

上映後に再び登壇されたロナン・ジレ監督は「皆さんが、まだいてくれてよかったです。幽霊の映画ですが、ロマンチックな映画を作りたかった」とお話しに。「今までの“ホラー”という既定のジャンルとしてではなく、別の解釈を付けてつくりたく、フランスの愛の映画、日本の怖い幽霊やファンタジックな映画、それがミックスされたものになったと思います」とコメント。日本の社会的な問題、いじめ問題も物語上含まれていた点についてロナン・ジレ監督は「いじめは日本だけの問題ではなく、他の国にもありますが、日本の場合、漫画やドラマなどでも取り上げられていますね。他の国では話されておらず、隠れて表に出ていない問題だと思います」と話されました。

本作の舞台は、瀬戸内の島。選んだ理由を聞かれると「撮影地については日本のプロデューサーが気に入っていた島を紹介してもらったのがきっかけです。日本には大きい街がいっぱいあり、皆さんが大きい街に出ていっていますが、小さくて人がいない島はミステリアスで不思議な雰囲気があると思いました。かやぶき屋根の家があるような昔の村のようで魅力があってミステリーもありますし」とのこと。

日本の文化や幽霊に興味をもってくださったフランス人監督の一品。文化を超えた融合にふれる機会となりました。

世界初上映の意欲的な中編作品2本 『レンコーンの夜』と『スイーテスト・トゥルース』

国立国際美術館で世界初公開された、協賛企画《芳泉文化財団の映像研究助成》『レンコーンの夜』『スイーテスト・トゥルース』の併映上映後、ゲストが登壇されました。

登壇されたのは『レンコーンの夜』今野恭成監督

今野監督は東京藝術大学大学院の卒業生。「尊敬する黒沢清監督が教授としていらしたので」と進学されたそう。

今野恭成監督

観客からは、気になる“巨大な蓮根を探す”というアイデアについて問われ「もともとは全然違う話だったのですが、準備期間中に問題が起きて、制作体制を変更することになり、話をねりなおしました」と今野監督。そこで「老若男女を問わず幅広い客層に向けたもの」をつくるため、話しあいがもたれていった、とのこと。しかし、どうして“蓮根”なのか、の更なる問いがけに「『どういうのが一番バカらしい話なのか』と話し合う中で、一番あほらしくて間が抜けた感じになるのが、蓮根を取りにいくことじゃないか、ということに落ち着いたのです」と返答されました。現場もプロのスタッフが参加し、撮影は4日間ですませたという本作。ますますの活躍が楽しみな若き映画人でした。

『レンコーンの夜』に続き、『スイーテスト・トゥルース』が上映され、本作でプロデューサー、撮影監督、出演もこなした仲村逸平さんが登壇されました。

2015年度の京都造形芸術大学大学院修了作品。本作のエブドクシア・キロプル監督はギリシャの出身で、ギリシャと日本のコラボレーションが実を結んだ1作。経緯として「大学院生だったエブドクシア・キロプル監督の『日本とギリシャの合作を撮りたい』という希望と、私の『海外制作したい』という夢が一致したから」とのこと。そこから芳泉文化財団の助成金を受けて、制作が開始となったそう。

仲村逸平さん

スタッフ間のコミュニケーションについて「脚本は日本語、英語、ギリシャ語版をつくりました」と仲村さん。「エブドクシア・キロプル監督は3年間、日本に住んでいたので、基本的に日本語で会話していました」とのこと。それでもわからない部分は英語を使用。「日本語とギリシャ語ではどうしてもニュアンスが違うので、そこは英語を使ってすり合わせる、というようなことをしていました」と話されました。

観客にとって印象的だったのが島のシーン。「当初、この島のシーンはありませんでした。が、話が重たくシリアスに展開していくので、監督が『シリアスの中にリラックスしたシーンを組み込めば、観客が入り込みやすいのでは』と思いついた」とのこと。仲村さんもお気に入りのシーンになったよう。因みに「この島はアテネの港から1時間半のところにあるキトノス島。観光地としてはサントリーニ島が有名ですが、この島はサントリーニより近くてサントリーニと同じくらい綺麗」と仲村さんも絶賛されていました。

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