グランプリはウォン・ジョン監督の『一念無明』(香港)に!
こみ上げる歓びの声が、春の大阪に響いた授賞式
今年の映画祭9日目。最終日前日に授賞式が行われ、グランプリをはじめとする各賞の発表がされました。なお観客賞の発表は、最終日クロージング・セレモニーで発表されます。


司会:ABCアナウンサー橋詰優子さん(左)

JAPAN CUTS Award
まず《インディ・フォーラム部門》の日本映画を対象に授与されるJAPAN CUTS Awardは、まつむらしんご監督の『恋とさよならとハワイ』へ贈られました。

プレゼンターのジャパン・ソサエティー、カズ・ワタナベさんより授与されると、まつむら監督は感無量の面持ちで「大変驚いております。素晴らしいラインナップの大阪アジアン映画祭でこの賞をいただけたことを、光栄に思っております。この映画は大変規模が小さく、少ない人数で作られました。スタッフ、キャストそれぞれが相当の覚悟を持って臨まなければ、私はこの場に立っていません。改めて感謝します。今日は3月11日ですが、あの日(東日本大震災)以来、フィクションを作ること、映画をつくることをより考えるようになりました。そのような日にこのような賞がいただけたのは、何か意味があると思っています。これからも変わらぬ覚悟と意欲を持って、映画に臨みたいと思います」と語られました。




薬師真珠賞
最も輝きを放っている俳優に授与される薬師真珠賞は、『至福』(フィリピン)の主演女優イザ・カルサドさんへ。日本語で「ありがとうございます」と笑顔を浮かべ、表彰状を受け取りました。

プレゼンターの薬師広幸さんからイザ・カルサドさんに、副賞として薬師真珠様ご提供の真珠装飾品が授与されました。真珠を受け取った時は、ガッツポーズまでみせるチャーミングな一面を覗かせたイザ・カルサドさん。「大変名誉に思います。フィリピンから私たちの映画を出品でき光栄に思いますし、監督をはじめ、他のキャストに感謝したい。これからも益々俳優業に真剣に取り組んでいきます。そして、神様とこの真珠にも感謝いたします」と喜びを表現されました。




ABC賞
新作映画を対象にしたABC賞はプレゼンターの朝日放送 総合ビジネス局イベント事業部部長の濱本実さんより発表され、デレク・ツァン監督の『七月と安生』(香港・中国)が受賞しました。残念ながらデレク・ツァン監督は欠席でしたが、今後の放映に期待が寄せられました。



スペシャル・メンション
スペシャル・メンションはアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督の『暗くなるまでには』(タイ・オランダ・フランス・カタール)が獲得しました。監督の代理として、タイ王国大阪総領事館副総領事のチャニダー・ガモンアウィンさんが、審査委員のモンスター・ヒメネスさんから表彰状を受け取りました。

「タイ王国大阪総領事館を代表し『暗くなるまでには』受賞の代理をすることをとても名誉に思います。本作は、タイの映画賞でも監督賞、作品賞を受賞しています。これからも日本の皆様にタイ映画を応援していただければと思います」とコメントされました。




来るべき才能賞
来るべき才能賞は『姉妹関係』(マカオ・香港)にご出演のフィッシュ・リウさんが受賞されました。

深々とお辞儀をしながら表彰状を受け取り、プレゼンターの審査委員、中西美帆さんから花束を受け取ったリウさんは、「まいど(日本語で)、日本大好きです。全く心の準備がなく、今日授賞式が終わってから何を食べに行こうかと考えていました。大阪アジアン映画祭にとても感謝したいです。私自身はマレーシア出身ですが、日本の皆さん、引き続きアジアの映画を観て、そして応援してください」と最後に花束を大きく天に突き上げ、喜びを表現されました。




グランプリ(最優秀作品賞)
いよいよグランプリの発表!プレゼンターの審査委員、ホー・ユーハン監督は「残念ながら一作品だけしか選べません」と前置きした後、受賞者が書かれた紙を見て『ラ・ラ・ランド』!と米国アカデミー賞誤発表ネタを入れ、会場を大爆笑に誘う一幕も。


仕切り直して発表されたグランプリは、ウォン・ジョン監督の『一念無明』(香港)へ。ウォン・ジョン監督が感動の面持ちで舞台へ。


ウォン・ジョン監督は「大阪アジアン映画祭に感謝申し上げます。とても励みになります。この映画は各地で上映され、昨日もここ大阪で上映されました。脚本のフローレンス・チャンさんは帰国しましたが、昨日のサイン会で、観客から家族のことを思い出したと声をかけられ、早く帰ろうと思ったそうです。観客の皆さんとの交流を経て、ますます映画には力があると確信しました。映画は文化を越える力をもっています。人が持っている情感、憎しみは皆共通しています。香港映画はどこで上映されても、必ず理解されると思っています。最後に映画を通じて、皆さん、心と心をつなげてください。そしてこれからも応援してください」と語られました。





最後に、審査委員を代表してモンスター・ヒメネスさんから総評が読み上げられました。


「アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督の『暗くなるまでには』は、タイの現代史を大胆かつ詩的な表現で描いたことを評価し、スペシャル・メンションとしました。『姉妹関係』出演のフィッシュ・リウさんは、難役への深い理解と、極めて細やかで表現力豊かな演技を評価し、来るべき才能賞に選びました。更なるご活躍に期待しています。グランプリに選びました『一念無明』は、なおざりにされた現実に正面から、真摯に向き合った点を評価しました。厳しいけれど優しく、悲劇的だけれど希望のある本作は、愛のなせるわざだと思います。素晴らしい映画をありがとうございました」





記念写真では、晴れやかな表情でマスコミや観客の皆さんのカメラに笑顔で応え、感動の授賞式は終了しました。受賞者の皆さま、おめでとうございました!
