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先入観をもたずに受け止めた監督が切り取った実録 『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』

《特別招待作品部門》『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』の上映後、ユン・ジェホ監督が登壇され、「こんにちは 私はユン・ジェホです。初めまして」と日本語でご挨拶。拍手で迎えられました。

続けて「日本初上映ということで期待もありますが、どんな質問が出るのかも気になり、変な気分です。この映画は主人公マダム・ベーに個人的に3年間密着取材してつくりました。ひとりの女性であり、2人の息子の母であり、妻でもある方です。この3年間、彼女を追いかけながら心がけたことは、彼女がどんなことを、どんな仕事をしても、決して先入観をもたないでいよう、彼女を尊重しようということでした」と述べられました。

現在のマダム・ベーについては「彼女は現在ソウルから少し離れた京畿道でBarを営んでいます。中国の家族とも北朝鮮の家族とも一緒に住んではいません。でも、Barでの稼ぎで中国の家族や二人の息子を支えています。なので、今彼女は母の役割をしっかりとつとめているわけです」と監督は語られました。

作品で彼女たちの脱北ルートが、北朝鮮→中国→タイ→韓国と長い道のりであることが明らかになります。それについてユン・ジェホ監督は「なぜタイ経由なのかというと、タイには亡命者の収容所があるからなのです。北朝鮮だけでなく、インドやイラン、ソマリアなどからの亡命者が保護されています。そこから亡命先を選択出来るのですが、北朝鮮の人は大抵韓国を選択します。やはり、言葉・文化・食べ物が共通しているからですね」とご説明に。また「脱北のルートはいろいろありますが、このタイを通じてのルートが最短ではないかと思います。もちろん、北と南の間の門が開かれれば、こんなに遠回りで危険なルートをたどることもなくなりますよね。私もドキュメンタリーを通じて彼女たちとともにこのルートを歩んだので、その苦労が身にしみて理解できました」と実体験を通し語られた監督。

脱北後の生活について問われると「私が初めて脱北者にお会いしたのがこのマダム・ベーさんですが、彼女はそんなにあやしい仕事に関わってはいなかったと思います。麻薬など危ういものではなく、もっと身近な商品、韓国の新聞や中国の携帯を北朝鮮に送ることや、韓国のお菓子とかお酒、薬なんかを扱っている方が多いと聞いています。私が知り得るかぎり、脱北者の方もみなさんと同じような普通の方ですよ」と監督は話されました。

マダム・ベーさんとの信頼関係を築くまでの間、iPhoneでの撮影だったという監督。演出云々ではなく、その粗くもありのままの映像による説得力ある作品に加え、ユン・ジェホ監督のお話に観客も前のめりになる濃厚な時間となりました。

5番目となったリメイク作品は、タイらしいコメディ要素が満載! 『突然20歳 タイの怪しい彼女』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》《日タイ修好130周年 タイ映画プロモーション》作品『突然20歳 タイの怪しい彼女』が上映となり、アーラヤ・スリハーン監督プロデューサーのチェ・ヨヌさんが登壇されました。

本作は、オリジナル韓国作品『怪しい彼女』のタイ版。この作品が、アーラヤ・スリハーン監督にとって、初の長編作品となりました。監督起用についてプロデューサーのチェ・ヨヌさんは「タイ版の制作にあたって、監督を探していた時にCM制作で有名だったアーラヤ・スリハーン監督を誘ったのです」とのこと。また監督は「韓国版を観ており、是非やりたいと思いました」と相思相愛ぶりをみせました。いざ、タイ版制作に取り掛かる際、オリジナルに忠実にしたというアーラヤ・スリハーン監督は「それでも、タイ人らしい感情、コメディ表現というのは心がけました」とコメント。

アーラヤ・スリハーン監督

プロデューサー:チェ・ヨヌさん

韓国のCJ Entertainmentは韓国版、日本版、中国版、ベトナム版、インドネシア版、タイ版すべてをプロデュースしており、日本語版以外は共同作品という形で関わっているとのこと。会場に向け、これまでに観た『怪しい彼女』の本数が聞かれ、全作品を制覇された方も複数人いらっしゃいました。これには、ゲストも驚くことに。

主演のダビカ・ホーンさんの歌唱力について聞かれるとアーラヤ・スリハーン監督は「ある程度、歌はできる女優さんではあったけれど、映画の出演が決まってから特別なトレーニングもしてもらった。作品中の歌もすべて彼女自身が歌っています」とお話しになりました。また2人の女優さんが1人を演じるにあたって苦労した点を問われると「2人はこの映画で初めて出会ったのですが、演技のワークショップを一緒に行いました。おばあさん役の女優さんには若い人の考え方を、20歳の役のダビカ・ホーンさんにはおばあさんの動きを、という具合に研究し立場を逆転させ考えてもらった」と演出秘話も飛び出すことに。

多くの人に受け入れられたストーリー。各国版を仕掛けてきたプロデューサーのチェ・ヨヌさんのお話にも会場は聞き入ることとなりました。

映画でヤンチャしたらこうなった?!豪快トークに会場が笑いで揺れた 『女士の仇討』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2017》『女士の仇討』が上映となり、ファイアー・リー(火火)監督が上映後登壇されました。開口一番、ファイアー・リー監督は「今日の映画を観て女性は、すっきりとした気持ちになったのではないでしょうか?!男性は、家に帰ったら奥さんに優しくしてあげて下さい!」と茶目っ気たっぷりにご挨拶。

昨年本映画祭で上映された『クレイジー・ナイン』(映画祭上映時タイトル『荒らし』)に続き2年連続の作品上映、来阪となったファイアー・リー監督。「私は子供の頃からヤンチャ坊主で、学校をサボったり、いたずらをしたりしていました。大人になり、映画の中であれば余計にヤンチャをしても良いのではないかと思うようになりました。以前、ラブストーリーの映画を撮ったのですが、自分で観ても今一つの作品でした(笑)。自分の頭の中にあるキャラクターを出す映画を撮ったところ、お客さんもクレージーな映画の方が喜んでくれたので良かったのかなと思います。今では、香港映画界の中で変態と言われています(笑)」と豪快なトークに会場も笑いの渦に。

また本作について監督は「映画にはいろんな種類がありますが、男性が鬱憤を晴らせるようなものはあっても女性が鬱憤を晴らしてストレスから解放されるという映画はなかったような気がします。そこで鑑賞後に女性の気持ちがスッキリして、家に帰って旦那に優しくなってくれれば、と考え、女性がヒーローという映画をつくりました」と語られました。

劇中、女性陣たちの衣装はボンテージファッションで、エロティク。演じた女優さんの反応を聞かれると「ステフィー・タン(鄧麗欣)とクリッシー・チャウ(周秀娜)は、以前からこのように過激な作品に出演したいと思っていたそうですよ。特にステフィーは『私は充分クレージーになっている?』と言いながら演じてくれました。セクシー場面、アクション場面いろいろありましたが、文句を言わずに演じてくれました」と監督。

また「アクションに関しては、2、3か月前から訓練しました。殴り合いのアクションというよりも怪我をしないための訓練でした。クリッシーはアクションに出演した経験がありましたが、他の2人は初めての体験でしたから準備は必要だったのです。この映画は17日で撮影しました。3人ともスタントは使いたくないと言って、本人自ら殴り合いやピストルを使うアクションの場面を演じてくれましたが、怪我をすると撮影がストップしてしまうので、訓練には力を入れました」と監督は女優魂を褒めたたえました。

ファイアー・リー監督のパワーあるトークに観客は引っ張られっぱなしで、会場は終始笑い包まれていました。

今回の映画祭のために製作してくださったポスター。ありがとうございました!

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