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台湾映画の今を映し出す映画人たちが集った《TAIWAN NIGHT》

特集企画《台湾:電影ルネッサンス2018》のハイライトとして『私を月に連れてって』上映前に《TAIWAN NIGHT》が行われ、『血観音』ヤン・ヤーチェ監督をはじめ、豪華ゲストが集結。満席の会場が熱気に包まれました。

台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター、台北駐大阪経済文化弁事処の協力により、全6本が特集上映される 《台湾:電影ルネッサンス2018》。セレモニーの初めに、台北駐日経済文化代表処 顧問兼台湾文化センター長 朱文清氏は、「私は2014年から昨年を除き、毎年大阪アジアン映画祭に参加させていただいています。今年また参加できうれしいです。台湾と日本は経済、文化だけでなく映画でも交流が進んでいます。近年台湾映画は、LGBT、動物、台湾の民間信仰などテーマもさまざまで、映画を通じて台湾の社会の自由さと多元化を感じていただけるでしょう。今年の東京アニメアワードフェスティバル2018では『オン ハピネス ロード(幸福路上)』がグランプリを受賞、台湾アニメーションの充実ぶりが伺えます。映画祭に参加した全ての台湾映画が、日本配給が決まり、映画館で公開されることを心から願っています」とご挨拶されました。

台北駐日経済文化代表処
顧問兼台湾文化センター長 朱文清氏

次は、お待ちかねの映画ゲストの登壇。ご登壇の後、司会の質問にゲストの皆さんが答え、作品への思いや大阪の感想を語ってくださいました。

ヤン・ヤーチェ監督

グオ・シーハンさん

『血観音』ヤン・ヤーチェ監督
「今回で2度目の来阪ですが、大阪の皆さんとお会いできて本当にうれしい。食い倒れですから、存分に楽しませてもらいます。『血観音』は3人の恐ろしい女性の話です。しかし女性が見ても怖いと思わないかもしれません。怖いと思うのは男性です」

『川流の島』プロデューサー、グオ・シーハンさん
「みなさん、こんにちは。大阪は初めてです。『川流の島』はプロデューサーの目から見て、実に低予算の作品ですが、台湾映画として一生懸命世界の皆さんに観ていただけるように作った作品です。ぜひ、皆さんご覧ください。(通訳に教えられた即席の大阪弁で)おおきに!」

チャン・イー監督

ロレッタ・ヤンさん

ペギー・チャオさん

『傷心わんこ』チャン・イー監督
「台湾でアニメーションを撮り始めて10年になります。残念なことに一緒に始めたエドワード・ヤン監督は亡くなりましたが、台湾のアニメーション映画を自分たちのチームでつくりたいという共通の思いがありました。パートナーがいなくなり、さらに責任を強く感じています」

『傷心わんこ』プロデューサーのロレッタ・ヤンさん
「こんばんは!以前は12年間映画に出演していましたが、映画から離れて30年経ちます。『傷心わんこ』のおかげで、このステージに上がることができました。4つのストーリーは全て自分たちの周りの動物、環境、世界の話です。自分の周りのテンポはとても速いけれど、この映画でゆっくりと周りの事を考えてみてもらえればうれしいです」

『傷心わんこ』プロデューサーのペギー・チャオさん
「全てのストーリーのなかに人を感動させるものがあります。9年間チャン・イー監督と、エドワード・ヤン監督が時間をかけて作ったサイレント映画のような作品です。自分たちで雨の音や犬の動く足音を探して録音し、一生懸命作りました。今回、上映会場に実際に足を運び、音響がとても良かったのでぜひ(音も)実感していただきたい」

斉川蘭子さん

シェ・チュンイー監督

『パープルな日々』主演の斉川蘭子さん
「本職が(役と同じ)美容師で、ケビン監督は友人です。彼が映画をつくるということで今回初めて演技をし、映画出演しました。役名が本名でドキュメンタリーのようですがフィクションです。ケビン監督は台本を作ってくれましたが、共演の清水周平さんも私も覚えなくていい。こういう感じのシーンなので自由にやっていいと言われました」

『私を月に連れてって』シェ・チュンイー監督
「今回大阪に来ることができ、本当にうれしい。『私を月に連れてって』を日本の皆さんがどう見てくださるか。みなさんの反応を期待しています。この歌は台湾でとても有名な歌手、張雨生さんの伝記的な作品でもあります。青春、学園ものであり、ラブストーリー、夢を追いかける映画。若い頃の夢をもう一度思い返していただければうれしい。主演のジャスパー・リュウ、ビビアン・ソンは映画の中で実際に歌い踊り、楽器を演奏しています。その活気を感じていただければ」

張雨生の歌にのせ展開する物語に会場が熱気に包まれた『私を月に連れてって』

《コンペティション部門》、特集企画《台湾:電影ルネッサンス2018》の『私を月に連れてって』上映後、シェ・チュンイー監督が再登場されました。

張雨生さんの歌が好きだったという観客から、なぜ張雨生の歌を使い、その時代をモチーフにしたのかという質問にシェ・チュンイー監督は脚本を書いた馮(フォン)勃棣さんが張雨生の大ファンだったと明かし「彼が亡くなったときにとても悲しんだそうです。悲しいときに彼の歌を聞いて勇気付けられたと話していました。夢を捨てないこと、勇気を持っていろんなことに向かっていくこと、それが張雨生の歌に込められていました。そういう思いを持ち、フォンさんは脚本を書いたそうです。彼が言いたかったのは『人生において結果だけが大事ではない』ということ。人生のプロセスが大事だと書かれていた脚本を読み、僕も感動しました。夢は人生の目標ではなく、夢に向かっていくことが大事。それをどのようにうまく表現するかに心を配りました」と語られました。

キャスティングについて、「李恩佩役は未来を掴みたい少女で、歌も踊りも楽器もできる役者でないと演じきれない。2ヶ月ぐらいオーディションをしても決まらなかったが、たまたまビビアン・ソンが脚本を読み、ぜひやってみたいと手を挙げてくれたのです。彼女は歌が上手で高校時代にダンスをしていたので決めました。その後に汪正翔役、バンドメンバー役と決まっていきました」とシェ・チュンイー監督。バンドメンバー役は皆20代半ばだそうで、撮影を通じて仲良くなり、みな実年齢よりおバカな感じで、高校生役をワイワイと楽しんで演じていたそうです。

昔の時代に戻り、その時代の文化を映し出す映画がここ数年多く見られる中、他の作品との違いについて聞かれたシェ・チュンイー監督は、「一番の違いは張雨生の歌にのせてストーリーが展開していくこと。実際に役者が歌い、演奏しているのも他の学園ものとは大きく違います」と答え、張雨生の歌詞にキャラクターの心情を表現させていることも加えました。

次回作については、4つの計画が同時進行しているとのことで「1つは台湾が舞台のスリラー、もう1つはニューヨークにいる中華系の人のラブストーリー。また、上海を舞台にデザイナーが主人公の物語や、2人の男女がフランスに行き、愛と挫折を体験するアートフィルム。どれもまだ脚本段階ですが、一部は資金集めやキャスティングを進めてもいます。僕は日本が大好きなので、日本で撮るテーマを見つけたら、日本で撮影したいと思います」と構想中のものを全て明かしてくださいました。

質問が次々に飛び熱気を帯びた満席の会場。青春や夢に思いを馳せ、胸に沁みる音楽に酔いしれる一夜となりました。

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