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ファンも待ちわびたヤン・ヤーチェ監督最新作『血観音』

OAFF2013に出品された『GF*BF』に続いての映画祭参加となったヤン・ヤーチェ監督

1985年から2012年の台湾を舞台に、3人の男女の友情と恋愛を謳いあげた前作から5年ぶりとなる待望の最新作『血観音』は、女たちの愛憎が渦巻く社会派クライムサスペンス。13日の上映後にはヤン・ヤーチェ監督が登壇し、満席の会場で舞台挨拶を行いました。

監督は「また大阪に戻って来られたことを嬉しく思います」と笑顔で語ると、本作について「“絆”という言葉は人を励まし勇気を与える一方で、人を縛る言葉でもあります」とコメントし、映画のテーマについても言及されました。

舞台挨拶後はロビーでサイン会も実施。前作から監督を応援しているというファンの方々を中心にたくさんの来場者がイベントに参加。通訳を交えてながら、映画についての質問に真摯に答えてくれるヤン監督。ファンとの会話を楽しむ充実した表情やサイン会に参加した一人一人と力強い握手を交わす監督の姿から、映画祭での新作の手応えを感じさせるひと時となりました。

日本ではここでしか観られない可能性も!?ノーカット版『スティルライフオブメモリーズ』

《インディ・フォーラム部門》『スティルライフオブメモリーズ』プロデューサーの伊藤彰彦さんが上映前に挨拶に立たれました。「安藤政信さんが来られると思っていた方、すみません。安藤さんから、皆さんによろしくお伝えください』とのことです」

本日はご来場ありがとうございます。この映画は日本での上映はおそらくできない、海外のみ上映が可能だと完成した時に思っておりました。ご覧にいただくとお分かりになる、ある描写によってです。しかし、あるマスコミ試写で暉峻プログラミング・ディレクターにご覧いただいた時に、『うちでやりましょう』と。ということで、大阪でこうして皆さんにお目にかかることができ、上映することができました。暉峻プログラミング・ディレクターをはじめ、大阪アジアン映画祭の関係者の皆さんに心からお礼申し上げます」と挨拶されました。

本作の制作の経緯については「この映画はある一冊の写真集にインスピレーションを得て、矢崎仁司監督が作り上げたものです。それは、アンリ・マッケローニというフランス・ニースの美術館の館長を勤めながら、シュルレアリストの運動をやり、一冊の写真集で有名になった方のもの。その写真集はマッケローニが1974年、当時彼女だった方のとある部分を2年間、2000枚撮り続け、そこから100枚厳選したものを写真集にし、それをパリの画廊で公開。フェミニズムの団体に非常に叩かれ大スキャンダルを巻き起こしたという出来事がありました」

その写真集を見た時に、『なんと見たことのないような、世界の始原の場所でありながら、誰も今までかつて見たこともない光景だ。マッケローニと彼女が儀式のように過ごした2年、2000枚はどういった時間だったのだろう』と考え、映画にしたいと思ってから10年が経ったのです。その間に、『ストロベリーショートケーク』を観て、作品に漂うある種の品格と、死の匂いが漂っている性というものが、マッケローニ写真集と相通じるものがあると思い、矢崎仁司監督にお願いして2年が経ちました。今日、大阪で、皆さん特別なお客様と共に、上映ができることを大変光栄に思っております」と感慨深く語られました。

そして「最後に、矢崎仁司監督にとって大阪は特別な場所です。『三月のライオン』という作品の主役で、41歳で早逝した趙方豪(ちょうばんほう)さんと飲み歩いたのが北新地で、監督と3日前に来た時に、 趙さんと飲み歩いた場所をかたっぱしから飲み歩き、夜明けに監督が泣いていました。そんな思い出が詰まった大阪で、最初にワールドプレミアができることを、監督も私もスタッフ一同も心から光栄に思い、嬉しく思っております。最初に申し上げた通り、インターナショナルバージョン、ノーカットで上映させていただきます」と語られ、映画を観る前から、映画を巡る物語に感動をよぶ時間となりました。

旅先の出会いが監督の制作意欲をかきたてた『どこでもない、ここしかない』

《特別招待作品部門》『どこでもない、ここしかない』の上映後、リム・カーワイ監督が客席から登場。「“ここしかない”リム・カーワイです。どうぞよろしく。私も、スクリーンで観るのは今日が初めてだったんです」と挨拶されました。

本作がバルカン半島での撮影にいたった経緯について「2年前にシベリア鉄道に乗ってロシアに行ったらすごく面白く、それからロシアを経由して東ヨーロッパを周って、特に目的もなく、最後にバルカン半島に着いたんです。行ってみたら意外と安全で人も優しくて、本当にびっくりしました。そこでいろんな人と出会ったうちの一人が、今回の主役、フェルディです。彼は実際にスロベニアのリュブリャナでゲストハウスを経営していて、私はそこに滞在して一緒に遊んで友だちになりました」とリム・カーワイ監督。

「もう一度バルカン半島には行きたかったし、行くとしたら映画を撮るしかない、と思って昨年夏にスタッフを誘っていきました。脚本も何もなかったけど、フェルディだけでなくいろんな人を巻き込んで。奥さんのヌーダンは、本当にフェルディの奥さんです。2年前にはいなかったんですが、1年の間に結婚していました」とした上で「ヌーダンは、実は今月出産の予定なので、この夏にもう一度行って第2部を撮ろうかな?と思っています(笑)」と嬉しい話も飛び出しました。

音楽プロデューサー:渡邊崇さん

録音:山下彩さん

脚本がなかったことについて「最初はフェルディの話だけではなく、ロシア人のコミュニティや韓国人夫婦の話とか織り交ぜるつもりだったんですが、フェルディだけで十分面白いものが出来たのです。それに彼の実家のマケドニアでちょうど本当に知り合いの結婚式があり、そこからストーリーがどんどんふくらんで、彼らとも仲良くなって、脚本がなくても演出もしやすくなったのです」とリム・カーワイ監督。

音楽:Lantanのお二人

鑑賞されていた深田晃司監督(右)とパチリ

スタッフについて話がおよぶと「今、録音を担当した山下彩さん、音楽プロデューサーの渡邊崇さん、そして監督が今日初めて会ったという音楽のLantanの二人が会場にいるので、紹介します」と監督が皆さんを紹介。長い付き合いになる、という音楽プロデューサーの渡邊崇さんは「ある日突然メールが来て、『新しい映画作るから、曲作ってくれ』と言われまして。撮影には同行せず、映像をいただいて、乾いた感じの曲が欲しいと説明され、テーマを作りました」と話されました。そして、リム・カーワイ監督は「この映画は、あちこち行って作っていますが、関西で地道に仕上げているんです。音楽のスタッフも関西ですし、“関西発”の映画です!」と締めくくられました。

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