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香港映画界の新人から立役者まで一挙に集った《HONG KONG NIGHT》

《Special Focus on Hong Kong 2018》のハイライトとなる《HONG KONG NIGHT》が今年も開催されました。今年も香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部の協力により、香港の今や思い出の日々を映し出す話題作を一挙上映。

大阪映像文化振興事業実行委員実行委員長
上倉庸敬

香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部
シェーリー・ヨン首席代表

セレモニーの初めに、大阪映像文化振興事業実行委員実行委員長、上倉庸敬が「色とりどりの香港映画新作を通して、香港の深い姿、佇まいをお伝えしたい」と前置きし、上映作品の紹介および感謝の意を述べました。

引き続き、香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部シェーリー・ヨン首席代表が、「香港はハリウッド映画のロケ地としても人気があり、香港の俳優、監督、カメラマン、プロデューサーたちは世界中でその名を知られています。香港映画を通して、香港の文化や都会の生活、郊外に広がる美しい田園地帯をさらに知っていただきたいと思います。本日の《HONG KONG NIGHT》上映作品『青春の名のもとに』を皆さま、お楽しみください」と、にこやかにスピーチされました。

そしてお待ちかねの映画ゲストとして、『青春の名のもとに』タム・ワイジェン監督、ン・シウヒンさん、『どこか霧の向こう』レイチェル・リョンさん、『メイド・イン・ホンコン/香港製造[デジタル・リマスター版]』フルーツ・チャン監督、『空手道』チャップマン・トー監督、プロダクション・デザイナーのチョン・イーマンさん、『中英街一号』デレク・チウ監督、ネオ・ヤウさん、ロー・ジャンイップさん、フィッシュ・リウさんらがご登壇されました。

デレク・チウ監督

(左から)フィッシュ・リウさん、ロー・ジャンイップさん、ネオ・ヤウさん

『中英街一号』デレク・チウ監督
「この映画を撮る前から完成するまで、いろいろな人にいつ公開するのかと聞かれましたが、今日、大阪アジアン映画祭で世界初上映でき感無量です。皆さんの反応を見て、映画は国を越えていくものだと確信しました。皆さんが香港の歴史についてより深く理解していただけるとうれしいです」

レイチェル・リョンさん

フルーツ・チャン監督

『どこか霧の向こう』レイチェル・リョンさん
「(日本語で)コンバンハ、ヨロシクオネガイシマス!私は新人なので、今回初めて大阪アジアン映画祭に来ることができ、うれしいです。この映画は今までの香港映画とは少し違ったものになっていますが、上映される香港映画は全作品それぞれ違いますので、楽しんでいただければと思います」

『メイド・イン・ホンコン/香港製造[デジタル・リマスター版]』フルーツ・チャン監督
「こんなにたくさんの新人監督がいる中、私は20年も前に撮ってしまいました。今20歳だったらよかったのですが…(笑)」

チャップマン・トー監督

チョン・イーマンさん(左)

『空手道』チャップマン・トー監督
「大阪アジアン映画祭に参加でき、非常にうれしく思っております。この映画を撮ろうと思ったとき、日本映画を撮る!というと、プロダクション・デザイナーのチョン・イーマンさんになぜ?と聞かれ、日本が好きだから!と。思った通りのものが出来上がってきたのは、彼女のおかげです」

タム・ワイジェン監督

ン・シウヒンさん

『青春の名のもとに』タム・ワイジェン監督
「はじめて大阪に来ました。私にとって名誉なことで、特にありがたいと思っているのはプロデューサーでもあるカリーナ・ラウさんと、ン・シウヒンさん。お二人が主演をして下さったことで、青春と人間の成長を撮りたいと思っていた私の夢が叶いました」

チームごとの挨拶の後は、香港ナイト恒例となった!?舞台上でのゲストによるセルフィー。フルーツ・チャン監督やチャップマン・トー監督など、日本のファンにも人気の高いゲストが揃い、観客もカメラや携帯を手に撮影ラッシュ。あっという間の《HONG KONG NIGHT》が終了しました。

大女優カリーナ・ラウをも動かした監督の作品づくりへ想い 『青春の名のもとに』

『青春の名のもとに』上映後に行われたQ&Aでは、タム・ワイジェン監督、ン・シウヒンさんが再度登壇し、観客からの熱心な質問に対し、丁寧に答えてくださいました。

男子中学生と担任の女性教師という禁断の恋物語でありながら、主人公のキャラクター設定がユニークかつ、トン・ワイ演じる夢見がちな父親の存在が物語に深みを与えている本作。タム・ワイジェン監督は「この作品を書き始めたのは大学在学中の5年前。当時、親友が先生のことを好きになり、彼女の成績は下がる一方でしたが、友達は誰もサポートせず、私も彼女を責めてしまった。この作品はそんな彼女のために書きました」と少し涙を浮かべながら、構想のきっかけを振り返りました。

タム・ワイジェン監督

ン・シウヒンさん

一方、戻ってこない母親を求める気持ちを胸に秘めながら、担任教師に心を寄せる主人公を独特のタッチで演じたン・シウヒンさんは、「監督が涙するのを初めてみました。この作品に携わったことで、家族のことを気にするようになり、また、少し悪ガキにもなりました。僕は、先生に恋することはなかったですが(笑)」と演じた感想をイタズラっぽく表現されました。そんなン・シウヒンさんは、300人以上のオーディションの中から選ばれたのだとか。「すごくイケメンではないけれど、カメラに映ると彼のことが絶対に好きになると思います」というタム・ワイジェン監督の言葉に観客からも思わず笑いがこぼれました。

二人が出会うきっかけとなるプールのシーン。物語では度々プールのシーンが登場し、クジラのモチーフも印象的ですが、「脚本を書いた時に、何か魚を出そうと思っていましたが、わざと哺乳類のクジラを選びました。プールはこの世界の一つの水槽、都市や家も一つの水槽。最初登場していたクジラが出てこなくなったのは、彼が囚われている水槽から出ることができたから。母を探すという自分の気持ちの象徴と捉えて作りました」とその狙いを語られました。

本作は香港の大女優、カリーナ・ラウさんがプロデューサーも務めていますが、その経緯についてタム・ワイジェン監督は、「カリーナ・ラウさんは最初からこの映画の主演、プロデューサーをするつもりだった訳ではありません。カリーナさんは大女優で、この映画の中の性格と彼女の性格とは天と地ほどの違いがあります。でも脚本を読んで気に入っていただき、そこから半年ぐらい議論を重ねました。当初、この映画の予算が300万香港ドル(約4500万円)だったので、カリーナさんは映画のクオリティーを心配しました。半年後、ようやく出演を承諾していただき、撮影にこぎつけ、18日間で撮りました。時間のかかる4、5シーンの撮影を毎日やるので、カリーナさんの身体的精神的な負担も大きかったと思います。その後、ポスプロのお金が足りなくなり、この映画の完成も危ぶまれる可能性が出た時に、カリーナさんがプロデューサーをかって出てくださいました」と、その過程を明かしました。

そんな大女優の相手役を堂々と演じたン・シウヒンさんは、「僕は元々ウォン・カーウァイ監督の映画が大好きで、カリーナさんが出てくる作品をずっと見ていました。お会いすると、本当に美人でした。か弱い女性の役だったので、普段のカリーナさんとも違うし、彼女の得意とする役ではないと思っていましたが、か弱くても強がる女性を演じていたのでビックリしたのです。僕は、カリーナさんの芝居に対してリアクションが出来ないのではないかと心配しました。映画に映っているのは僕の素のリアクションです」と撮影を振り返りました。

さらに、「ベッドでのシーンでは、彼女に対して怒り、ベッドに手を突っ込む時に、中指を骨折。痛かったけど、そのままカリーナさんが演じ続けたので、僕はそっとベッドを抜けていきました。カリーナさんとプロとしての共通認識は、ベッドシーンもご飯を食べるシーンも同じように真剣に演じるということ。ベッドシーンでメイクラブするかどうかについて、何度も話し合いました。それに関してはお互い違う意見を持っていますが、僕の父と母は、映画の描かれ方に満足しています」と映画同様茶目っ気たっぷりにお話されました。

ウォン・カーウァイ監督作品を彷彿させるような雰囲気のある映像と、音楽が彩る物語。女性監督ならではの繊細な演出や、キャラクター設定が光る作品に、観客からも大きな拍手が送られました。

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