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突然のライブに会場も歓喜!日韓友情物語のメンバーが世界初上映で再集結『あなたの宇宙は大丈夫ですか』

《特別招待作品部門》『あなたの宇宙は大丈夫ですか』が世界初上映されました。物語は韓国から出張で大阪に訪れた主人公が、たまたま立ち寄ったバーのマスターとの出会いから、会社を辞め、音楽の道を志した先輩を探すというお話。

その上映後、舞台が明るくなると、マスター役のすのうさんがギターを、バーの常連客役のオル・トグンさんがジャンべでスタンバイ。すのうさんの熱唱で、いきなりアコースティックな生ライブがスタートし、ABCホールはコンサート会場さながらの熱気と歓声、手拍子に包まれました。

その後、ベク・ジェホ監督、イ・ヒーソップ監督、出演のカンドゥさん、堀春菜さん、ジ・デハンさん、一谷伸さん、潤姫(ユニ)さんもご登壇され、順番にご挨拶がありました。

ベク・ジェホ監督、イ・ヒーソップ監督

カンドゥさん、堀春菜さん

ベク・ジェホ監督
「皆さん、昨晩はすてきな土曜の夜を過ごされましたか?この映画が皆さまにとって楽しい日曜の朝になればと思っております。この映画は大阪と韓国の人に違いがないことを描きました。日本公開も決まっていますので、公開時はまた足をお運びください」

イ・ヒーソップ監督
「大阪には仕事で3ヶ月住んだことがあります。大阪に観光にくる韓国の皆さんが、大阪を楽しむ一つの見本になればいいなと思って作りました」

カンドゥさん
「(日本語で)おはようございます。今日、この席に来てくださった皆様、本当にありがとうございます。楽しかったですか?(韓国語で)たくさんの方にこの映画を観ていただけて幸せです。ありがとうございます」

堀春菜さん
「本日は朝早くからお集まりいただき、ありがとうございます。大阪の優しい雰囲気や、たくさんの人が出ています。今日が不安な日や、明日が楽しみな日、色々な日がありますが、今日、こうやって皆さんと一つの作品を共有できること、それだけが真実ですごいことだと思いました」

すのうさん、ジ・デハンさん

一谷伸さん、潤姫(ユニ)さん、オル・トグンさん

ジ・デハンさん
「監督から、韓国と日本の架け橋になってくれないかと提案され、若い映画人を応援したいとも思い、出演しましたが、最後までギャラはいただけなかったような(笑)。公開された時は、この映画を愛していただき、応援をよろしくお願いします」

一谷伸さん
「このようなスタッフ、俳優の皆さんとご一緒させていただき、うれしいです。爽やかな春菜さんの父親役が、こんなドロドロの私で良かったのかなと思いましたが、舞台が大阪の大正区ということで安心しました」

潤姫(ユニ)さん
「『時間が限られているのに、どうしてそんなにノウノウとしていられるの』と呟く女と、スクリプターを担当しました。随分前に撮影したので、あの撮影していた頃が夢だったのかなと思いながら、映画を観ました。大阪で生まれ育ちましたが、私たちが知らない大阪の素敵な部分、韓国人が思う大阪の素敵な部分が伝えられる日韓の友情の映画です。何度もご覧になって、隅々まで観ていただきたい」

オル・トグンさん
「僕が愛している大阪で、韓国やアジアまで繋げられてうれしい。今日はありがとうございました」

登壇者の挨拶が終わり、残り時間がわずかのため、質問は1つ。日本語の台詞、特に大阪弁で苦労した点について聞かれたカンドゥさんは「この映画に出演するまでは日本語はできませんでしたが、1ヶ月かけて、膨大な日本語の台詞を覚えました。大阪弁はすのうさんに教えていただきました。演じたウジュが変化する姿を表現したくて、最初は標準語でしたが、少しずつ大阪弁を台詞に混ぜていきました。歌を覚えるように覚えた記憶があります」と共演者の協力があったことを明かしました。

ホール表の特設テントでのサイン会も大盛況で観客の皆さんとの交流を深めてくださったキャストの皆さん。まさに、映画が架け橋になれた一幕を目の当たりにしているようでした。

物語も撮影現場も国境を越えた交流の場に 『マイ・カントリー マイ・ホーム』

特集企画《ニューアクション!サウスイースト》の日本、ミャンマー合作作品『マイ・カントリー マイ・ホーム』が世界初上映となりチー・ピュー・シン監督が登場。盛大な拍手で迎えられました。

アウンサンスーチー氏がトップとなってから映画制作への状況が変わったというが、実際のところ、その前の2014年頃からミャンマーの映画は数多く制作されるようになり、観客も増えたそう。また、年間何本ぐらい制作されるのですか?という問いに監督は「正確な本数は分かりませんが、上映されるために政府の検閲を待っている映画は200本ほどあります」と上映するまでに検閲待ちをする現状に会場は驚いた様子。

劇中、主人公女性のナンさんは、無国籍なのにミャンマーへ行くことができた訳について聞かれると、チー・ピュー・シン監督は撮影の前にロケハンで何度も日本を訪れ、映画のモデルとなった政治活動家家族に会った時のことを語り「彼の娘は18歳で無国籍でしたが、ミャンマー大使館の発行するソーシャルビザで特別に戻ることができたということです。しかし父親は、ソーシャルビザで帰国すると自分のプライドが傷つくということで帰国しなかった。そんな事実に基づいて脚本を書きました。映画では2016年の政治の状況を描いていますが、今では政治活動家も自由に帰国できるようになっています」と自由度が増していることを話されました。

合作の映画を制作するのは初めてだった、という監督。「通訳を通して芸術作品を制作するのは心配になることもありましたが、無事に完成させることができました。日本人は時間を守るし、仕事に対して熱心だし。日本人と一緒に撮影できて良かった。記念になりましたし、両国の合作という交流映画ともなりました」と述べられました。

監督自らをも投影したタイトルこそがメインテーマ『どこでもない、ここしかない』

《特別招待作品部門》『どこでもない、ここしかない』の上映があり、リム・カーワイ監督が登壇されました。

「今日は大阪アジアン映画では2回目の上映で、たくさんの方にみていただいてありがとうございます。1回目のシネ・リーブルではここより小さいスクリーンだったのですが、ここは大きいスクリーンなので、ドキドキしながら観ていました。この映画は低予算で厳しい状況でつくられていて、小さいパソコンで編集して仕上げもしていたので映りが気になって」と監督は緊張ながらに鑑賞されたことを話されました。

仕事の合間、時間ができたリム・カーワイ監督は、北京から列車でロシア・東ヨーロッパの方までバックパッカーの旅にでかけたそう。その旅で行きついたのが、何も知識のない旧ユーゴスラビア、いわゆるバルカン半島だったそうで、まさにその地に一目ぼれ。「次に来るなら映画を撮るしかない」と思われたといいます。

本作の主役、フェルディさんに会われたのも、この旅先のゲストハウスだったとか。「フェルディのほかにも面白い人物にたくさん出会いました。神秘的なロシア人のコミュニティがあったり、韓国でスマホの開発の有名な研究者だったのに、急に仕事を辞めてマケドニアに放浪している人がいたり」と旅先での出会いについて思い出深く話されました。

そこから、映画のテーマとして「自分の国ではなく、新しい土地に移って生活している、アイデンティティをもっていない人を描こう」と思われたとのこと。「タイトルもその時点で『NO WHERE NOW HERE』で決まっていました。まさに僕自身もどこにもいるけど、どこにもいないという風に。トルコ系のフェルディと、中華系で国籍はマレーシアである僕と、置かれている環境が似ていると思ったのです」と監督は自然の流れで本作制作につながっていったことを話されました。

いざ、撮影を始めると「はじめは、フェルディも素人だったので演技をするのではなく、ドキュメンタリーだと思っていたと思います。彼のゲストハウス、家での撮影にもプライベートな空間に侵入するので、彼で映画がつくれるか、信用してくれるのか、最初は不安がありました。でもカメラを回していると、すごく自然に演技をしてくれて、お互いに信頼関係ができて、彼で1本映画がつくれるのではと思い始めました」と語られました。

会場から好きなシーンを聞かれると「もっと美しい景色はたくさんあったのですが、あえて抑えてこのような形にしました。一番好きなシーンはフェルディが一人、キッチンでお皿をあらって、水をのんで、机を拭くシーンです。なんか身につまされる感じもあって気に入っています」とリム・カーワイ監督。お話し上手であっという間のQ&A時間となりました。

原作者登壇で“入れ替わり”ジャンルについて熱弁『パパとムスメの七日間』

《特別招待作品部門》『パパとムスメの七日間』の上映後、原作者である五十嵐貴久さんが登壇され「原作の小説を書きまして10年ぐらい前にTBSの連続ドラマで今をときめく新垣結衣さんが高校生役を演じられました。韓国でも原作本が出版されてはいますが、今回、韓国で映画にしてもらったことを嬉しく思っております」とのご挨拶から始まりました。

韓国では昨年劇場公開された本作について感想をきかれると「いろんな見方をする方がいらっしゃるので、フラットでみたいなと思っています。日本でドラマになろうが、韓国で映画になろうが、関わっている方の解釈があるので、意図している部分はむしろ違っているほうがおもしろい。楽しく観させていただきました」と述べられました。

そもそも、このお話の着想について聞かれると「作家としていかがなものかと思われるかもしれませんが…」と前置きされ「アメリカの映画で『フォーチュン・クッキー』(リンジー・ローハン主演)という“入れ替わりもの”の作品を観て、非常に腹が立ったんです。どうすればこんなにつまらなくできるんだろう!と。あまりに腹がたったので、これをどうにかしておもしろくしたい!と思った。お母さんと娘がいれかわる映画だったので、それがいかんのだ!と。そうではなくて娘にとって一番イヤな相手は誰か?と考えた時に、これはお父さんだ!と、その瞬間にだいたい話は出来上がりました」と語られる間、終始会場は笑いに包まれました。

また“入れ替わりもの”というと、バイブルとも言える大林宣彦監督の『転校生』。五十嵐貴久さんも7、8回は観ているそうで、その影響は確実にあり、その話を始めたら切りがないとおっしゃり「あのような素晴らしい映画は、何年たってもすばらしい映画。それに負けないような素晴らしい小説を書こうと思っているわけですが、残念ながらちょっと勝てないな」と吐露。

そして「“入れ替わりもの”は昔からあるネタで、どこの国の人であろうと納得できる何かがあると思います」とし、司会から、大阪アジアン映画祭でも各国のリメイク版が上映されている『怪しい彼女』の話が出ると、この作品も「中国、ベトナムで映画化の話が進んでいるらしいです」とのこと。「普遍的に泣かせて笑える話なので誰がみても次、こうなるとわかる話。それがフォーマットの強さです」と語られました。

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