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去年に引き続き今年も素敵なラブストーリーをもって登場!『ミスターとミセス・クルス』

《コンペティション部門》、特集企画《祝フィリピン・シネマ100年》の『ミスターとミセス・クルス』が上映され、シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督が登壇されました。昨年の『キタキタ』から連続で新作を大阪で披露いただけることに会場も「おかえりなさい」のムードに。

本作がリチャード・リンクレイター監督の作品(〈ビフォアシリーズ)3部作)の影響を受けているのか、という会場からの問いにシーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督は「この映画の脚本は前回の『キタキタ』より先につくったものなのですが、〈ビフォアシリーズ〉作品とは同じようにならないようにいわれていました。でも私は演劇の出身ですから、劇中の二人が対話して進んでいくことはよくあることで、リンクレイター監督の影響というより演劇の影響よりきていると思っています。また、続編については、今、撮影が終わったばかりで、考えられないです。来年になって考えようとは思います」とお答えに。また「私の物語の進め方は時間経過通りに進めるだけではなく、さまざまな時間のねじれを繰り返すことで、新しい発見を大事にしていこうとしています。いろんな方向から見ることで、どうなるだろうとの期待感をもっているんです」と構成についても語られました。

今回の舞台はフィリピンのパラワン島。監督は「私自身が1年前の落ち込んだ時に、個人的にこの島に行ってよかったこと、悩んでいる時は1人旅が良いもので重要だと感じたこと、で舞台としました。島からはたくさんのサポートをいただきました」とロケ地について話され、「『キタキタ』は確かにフィリピンのインディペンデント映画では大ヒットでした。ですので、その後の作品(監督初の商業映画)ということで、すごいプレッシャーでした」とも明かされました。

登場人物のテンポ良い会話は脚本通りなのか、という質問に「俳優が自然な感じで演じてくれるのが重要ですので、撮影前の準備に力をいれ、役柄が自然と身につくまでマニラで朝から夜の11時までずっと読み合わせを繰り返しました。また、1週間、リハーサルのワークショップを何度も繰り返し行いました。それは、撮影当日、この島は観光客が多いため撮影時間の制限があったからです。まさに演技も流れるように行わないといけませんでした。演劇のように流れる感じで行わなくてはならなかったのです」と答えられたシーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督。作品と監督の笑顔に会場も癒された時間となりました。

『キタキタ』『ミスターとミセス・クルス』の小説を手に

暉峻プログラミング・ディレクターとパチリ

海外で働くことを題材にした興味深い短編『夜間勤務』『パープルな日々』

短編プログラムCの上映後、《インディ・フォーラム部門》『夜間勤務』の撮影をされたイム・ジュンテクさん、特集企画《台湾:電影ルネッサンス2018》『パープルな日々』に出演された斉川蘭子さんが登壇されました。

『夜間勤務』撮影:イム・ジュンテクさん

『パープルな日々』斉川蘭子さん

まず、『夜間勤務』のイム・ジュンテクさんが「監督が挨拶に来ると思っていた人には残念かもしれませんが、撮影を担当したイム・ジュンテクです」とご挨拶。『パープルな日々』の斉川蘭子さんは「女優じゃなく、本当に美容師をやっています」と美容師役が本業であることを伝えられました。

制作のきっかけを聞かれると、『夜間勤務』のイム・ジュンテクさんは、「この作品は、監督の卒業作品なのですが、途中で制作のお金が足りなくなって、作品のように工場で働いたという経験があり、その時に外国人労働者が明るく働いている姿を見たのがきっかけでした」と説明されました。

『パープルな日々』の斉川蘭子さんは「私は、実際にNYで美容師をしていますが、監督のケヴィン・CY・ツェン(曾駿堯)が、お客さんとして来ていて、そこで誘われたのがきっかけです。監督のコロンビア大学の卒業作品として、4日間の撮影をしました」と話されました。ドキュメンタリーっぽいけど、どこまで現実と同じですかという質問に「だいだい同じですが、例えば、カットの時に動かれて怒りだすシーンがありますけど、私は、動かれても怒らない(笑)」とのお答えに、会場から笑いが起きました。また「脚本はありましたが、ほとんどアドリブだったので、セリフを覚えなくてもよくて、緊張することなく、楽しませていただきました」と撮影の様子を話されました。

気にいっているシーンについて、『夜間勤務』のイム・ジュンテクさんは「撮影は全体に大変だったので、一つは選びにくいけれど、選ぶとしたら、2人が自転車をこいでいくシーンです」と語り、『パープルな日々』の斉川蘭子さんは「最初のカットのシーンと最後にみんなで歌っているシーンです。NYの感じがして好きです」と話されました。

どちらも、海外で働いている労働者を描いた作品だったことに触れられると斉川蘭子さんは「海外からみると日本はキレイですね。百円のものを買っても丁寧に対応されるし。でも、NYにも独特の文化があって。先々月、日本に帰ってきたのですが、今いろんなことを感じています」と話され、また、イム・ジュンテクさんは「韓国には政治や社会システムなど、国内に息苦しいところがあって、20代、30代の人たちが海外に行ってしまうのだと思います」と語られました。

監督の想いを形に、満を持しての世界初上映。女優陣も華やかに集った『クシナ』

《インディ・フォーラム部門》『クシナ』の世界初上映後、息を飲むほどの美しき映像と世界感に圧倒された場内に速水萌巴監督、出演の小野みゆきさん、廣田朋菜さん、稲本弥生さん、藤原絵里さんが駆けつけられました。

原案、プロデュース、脚本、編集、美術、衣装まで務めた速水萌巴監督は、「2年前に撮影したときは監督とカメラマンの村松さんとの2人だけでつくったとても小規模な作品で、泥船というか船の形もなかったようなものだったのですが、最近そこにようやく船底ができました。そんな船にキャストの皆さんは乗り込んでくれて、そして今日の上映でやっと帆がつきました」と挨拶されました。

(左から)藤原絵里さん、稲本弥生さん、小野みゆきさん、廣田朋菜さん、速水萌巴監督

小野みゆきさんは、「こんなにたくさん映画がある中で、この作品を観てくださって本当にありがたく思います」とのご挨拶に続き「リドリー・スコット監督作品『ブラック・レイン』の日本での撮影以来、何十年ぶりかに大阪にきたので今回の滞在中に大阪を楽しみたいと思います」と話され、会場は和やかな雰囲気に包まれました。

廣田朋菜さんは「ここまで女の人ばかり出てくる映画ってそうそうないのかなと思いながら演じさせていただいて、ある意味で刺激的でした。女性が出てくる映画ですが、狭間に生きている人の話だなとも感じていて。それを速水監督の言葉として映像にできたことを誇りに思います」と話されました。

稲本弥生さんは「とても素敵な現場で、みんなで切磋琢磨しました。監督は若くてとてもタフ。最後まで乗り切って上映まで辿り着けたことが感無量です」とご挨拶。監督と同郷であることを知ったご主人が背中を押してくれたことで本作への参加を決めたというエピソードや、過酷な山奥でのロケが多く、得体の知れない虫に刺されたこともあったというエピソードも飛び出しました。

藤原絵里さんは「顔合わせの日、他の出演者の方の顔ぶれを見て、代表作も全くない自分がこの場にいていいのだろうかと。監督にも、『静かな流れの映画の中で唯一の明るいパートなのでよろしくお願いします』と言われて更にプレッシャーを感じていましたが、そんなプレッシャーの中頑張って明るく演じました。山奥でみんな事情があって暮らしている、という村なので役作りはすごく難しかったですが、こうして作品になってみなさんに観ていただけて、とても嬉しいです」と挨拶されました。

クシナ(14歳の少女)が聞くウォークマンが動いていないことについて問われた速水萌巴監督は「本当は動かしたかったんです。あのカセットが欲しくて、ヤフオクで動きますと書いてあったのでそれを取り寄せたのですけど、動かなくて」と明かし客席を笑いに誘いました。「私にとってこの映画は自分と母の物語で、私たちの間は手紙があったんですが、クシナではカセットテープを使っています。クシナはずっとこのテープを聴いていますが歌詞は英語なので意味も理解していないです。でも最後に母親と一緒に聴くことで、親子2人で答え合わせができたのかな」と監督自身のエピソードを交えてお話しされ、その母親役だった廣田朋菜さんは「本当に実際に流れているかどうかは関係なくて、想像上の頭の中で鳴っているミュージックと捉えてもらってもいいですよね」と加えられました。

観客から劇中にたくさん流れる音楽についてのこだわりを聞かれると「私が監督としてつくりたい映画は『スター・ウォーズ』のようなキャラクターの世界がしっかりある作品。そこで、今回もそれぞれのキャラクターに合わせたテーマ曲を考えていきました」と速水萌巴監督。終盤に流れていたバッハのカノンは、門出を祝っているようでいて、寂しさが漂っているような、この曲の持つ二面性がクシナにしっくりきたそう。また『ケ・セラ・セラ』で明るく終わるエンディングシーンについて監督は「この曲は私が映画を志すことを反対していた時期があった母との共通点でした。この曲が主題歌として使われていた『知りすぎていた男』は母の好きな映画で」とほっこりするエピソードを明かされました。

本日、2回目。カンボジアの人気女優登場!『フォレスト・ウィスパー』

この日、特集企画《ニューアクション!サウスイースト》『ポッピー ハリウッドに行く Redux』に続き、『フォレスト・ウィスパー』にもご出演のドッチ・リダさんが登壇されました。

「皆さん、こんばんは。この映画のドッチ・リダです。皆さんにお会いできて嬉しいです。今日は監督のジミー・ヘンダーソンが伺えれば良かったのですが、撮影の都合で伺えませんでした」と挨拶されました。

カンボジア映画界ではかなり引っ張りだこの人気女優、ドッチ・リダさん。本作での妖精のような魔女のような役への役作りについて聞かれると「この映画で私の役柄は口をきけないものでしたので、話すことでは感情表現をすることができません。その点では非常に難しかったですが、大変やりがいのある素晴らしい仕事ができたと思います」と笑顔がこぼれ、会場からも温かな拍手がおこりました。

遅い時間の上映でしたが、 上映後のドッチ・リダさんのサイン会にお客さまも満足の夜となりました。ジミー・ヘンダーソン監督は最新作“Jailbreak”がカンボジア国外でも大ブレイクのヒットメーカー。日本で紹介するのはおそらく今回初めてとなるカンボジアの商業映画、今後の展開に注目です。

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