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SNS時代の今だからこそつくられた監督のメッセージ作品『大大ダイエット』

海外初上映となった、特集企画《ニューアクション!サウスイースト》『大大ダイエット』が上映され、チウ・ケングアン(周青元)監督が上映後、登場。「大阪の皆さま、こんにちは。2011年の映画祭で『踊れ 五虎〈ウーフー〉!』を上映した時に大阪に来て以来7年経って、またこうやって私の映画を観ていただいて本当に嬉しいです」と挨拶されました。

この作品をつくるきっかけについて監督は「自分の友人や周りの人をいろいろみているとSNSに振り回されています。人の目を絶えず気にしている。自分を見失ってしまうことが周りの人を見ているとよくわかるので、人の目を気にしてもしょうがない、全ての人を満足させるのは無理なので、自分を大切にしましょう、というメッセージを込めて、というメッセージを込めて映画をつくりました。また、太っている人がいい、やせている人がいい。黒がいい、白がいいなどと、人によって好みは違います。だから勇気を持って自分らしさを持ってほしいという気持ちも描きたかったことです」と話されました。

メインどころを演じた3人の女性たちについて「3人ともにプロの役者さんではありません。素人さんで、初めて映画で演技をしたのです」との監督の発言に会場から驚きの声が。「3人を選ぶとき共通点はなくてもいいと思ったのです。私たちも人生の様々なプロセスで自分も気づかない変化があるのではないでしょうか。心が変わらなければ、外見が変わってもいいかと。だから、自分をしっかりともっている3人を選びました 」とチウ・ケングアン監督。

また劇中、使用されていた言語について質問がでると「マレーシアの社会は多様な言語が同時に存在しています。一緒に食事をとっていてもいろんな言葉が飛び交っています。北京語、広東語、閩南語、客家語、マレー語、英語といろんな人がいろんなことばを話すのがマレーシアの社会です」とご説明に。また「マレーシアの主な言語は英語、マレー語ですが華人の世界ではさまざまな言葉がみんな通じるんですね。北と南は閩南語で中部が広東語なんです。でもなんとなく通じ合ってわかっているんです。今回は華人に焦点を当てた華人地区の映画ですが、前にはマレーシアの人がマレー語を使って撮った作品もありますよ」と、お国柄の面白さに臨機応変に対応し映画づくりをされているチウ・ケングアン監督でした。

ユーモア溢れるお話しぶりに会場も笑いが絶えなかった『ビッチ・オン・ザ・ビーチ』

上映終了とともに、会場から自然と拍手が起こった《インディ・フォーラム部門》『ビッチ・オン・ザ・ビーチ』。そこへチョン・ガヨン監督が登場。「初めて日本に来て、皆さんと一緒に映画を観られたことがとても幸せでした」と挨拶されました。

性に関して赤裸々につづった本作について「かつて制作したドキュメンタリーが3人の元カレを訪ねるという内容でした。今回は私にとって初めて劇場で上映された作品なのですが、同じように元カレを訪ねるストーリーになっていて、前の映画からの自然な流れで撮った作品です」と話されました。韓国の映画界の中での自身の立ち位置について聞かれると、「今から昇り来る明星としていただければ…」と答えられ、会場が笑いに包まれる場面も。

挿入歌が素敵だったとの声に「私は昔の歌がとても好きなので、90年代に流行ったドラマのサウンドトラックをところどころに使っています。エンディングは『私と一緒に』という題名のオリジナルの曲です」とのお答え。また本作の主人公と監督自身のキャラクターは似ているのかという質問には「公開当時は、私と主人公が同じような性格だと言うと作品の質が落ちるような気がして、一緒だとは言わなかったのですが。公開から2年経った今なので告白すると、私と彼女は全く同じです!」と明かし、会場からはまたもや笑いが起こりました。しかし、劇中98%はシナリオ通りで、アドリブなしで演技をするということを重視した作品であることも加えられました。

また韓国と日本での上映について「日本のみなさんも、韓国の観客と同じような場面で同じようなボリュームで笑ってくださったので、とても幸せな気分になりました」とチョン・ガヨン監督。本作で主演も務めているチョン・ガヨン監督の経歴について質問が出ると、もともとは演出を学んでおり、短編映画を撮りながら自分で出演するようになった、とのこと。また相手役の男性もインディーズ映画の監督をしており、脚本を見せた際に興味を持ってくれたことで参加するに至ったとのエピソードも。

性に対して積極的な女性をテーマにした理由について監督は「ドラマではこういった女性像を扱うことがありますが、映画ではあまり見られません。だからこそ映画はそういった積極的な女性を望んでいるのでは、との思いがありました。また自分がその女性を演じれば面白くできる、という少しの自信もありました」と話されました。監督の人柄からか、終始和やかな雰囲気で進んだQ&Aの時間でした。

監督の意図までも見事に代弁した大物新人登場!『どこか霧の向こう』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2018》の『どこか霧の向こう』が上映。出演のレイチェル・リョンさんが登壇され「こんばんは」と日本語でご挨拶。また「私はラッキーな事にこの作品を携えて、新人ではありますがこの大阪アジアン映画祭に初めて参加します。皆さん、この残酷な映画を観ていかがでしたか?お楽しみ頂けましたでしょうか?」と問いかけられました。

撮影が今から4年前という事もあってか劇中とはまた印象の違うレイチェル・リョンさん。「撮影は1ヶ月間でしたが、撮影前に5ヶ月準備期間があり、その間チョン・キンワイ(張経緯)監督とも深く話して考えを理解しているので監督への質問も受け付けますよ」と話されました。

実際の殺人事件をテーマにした本作。レイチェル・リョンさんは「監督はドキュメンタリー映画出身なのでリアリティへの要求が高く、病気の役柄に対し私も実際病院にリサーチに行きました。表面的ではなく心理的な内面を深くリアルに表現することを常に求められました。また監督は社会問題や人物に関心があります。劇中でも、進歩する社会に反し非水洗トイレが象徴する貧困や、同性愛者、宗教の異なる3人の友情の描写や、事件を起こす過程や手法の表現からも、今の香港社会がかかえる色んな問題を表現しています」と監督に代わり説明されました。

本作がデビュー作となる彼女にとって、スター俳優との共演や演技に対しての心情を聞かれると、「ステフィー・タンさんは私にとって中学生の時からアイドルで、共演と知り驚きました。足を引っ張らないか心配でもありましたが、撮影時は役柄に意識を向ける事で緊張が和らぎ、特別なフィーリングになりました」と答え、「演技に関して一番難しかったのは、殺人をおこすまでの彼女の心理を理解することでした。彼女の心理に同意はできませんが、私達自身も他者に対して理解することが重要だと感じています。この映画は残酷だけど、原題は『藍天白雲』(青い空、白い雲)と、美しい世の中という意味があります。映画を観終わった人が、人を助けたり、相手への理解を深める事が出来れば、世の中はもっと美しくなるという監督の思いが込められています」と語られました。

強烈なデビュー作となったレイチェル・リョンさんですが、香港電影金像奨の最優秀新人俳優としてノミネートされているとのこと。盛大な自国のイベントに対し「ハイヒールで転ばないよう注意します(笑)。今後も多くの良い作品に出て皆さんにお会い出来れば嬉しく思います」と笑顔でまとめられました。

制作のスタートは取材から!映画づくりへの取り組み方を語った『protest』『湯気満ちて』

協賛企画《芳泉文化財団の映像研究助成》で『湯気満ちて』『protest』が上映されました。

上映後、『湯気満ちて』田中里奈監督、編集の李嫚倫さん、脚本の加藤良太さん、出演の竹下かおりさん、佐藤岳人さん、そして『protest』田尻泰崇監督が登壇されました。

『protest』田尻泰崇監督

『湯気満ちて』田中里奈監督

ゲストがそれぞれ挨拶されたあと、両監督が制作のきっかけについて話されました。

『protest』の田尻泰崇監督は、ドキュメンタリーでキリスト教の取材をしていて、教会で牧師や信者の人たちの話を聞いているうち、どうしてこんなに信じているのか興味がわき、色んな宗派があって、それが日本のありかたを表していると思うようになったそうで、「作品のモデルがいて、取材で実際にこういう人がいたという話を聞いて作りました。また劇中の説教の部分も、牧師さんに考えてもらいました」と話されました。

一方、『湯気満ちて』田中里奈監督は「助成をもらって脚本の加藤良太さんと作品の相談をしていた時、気になることや関心事をあげていくと、共通して“妊活”があったことが作品のきっかけです」とお答えに。とくにモデルはおらず、取材をする中で、作り上げていったそうです。

『湯気満ちて』
編集:李嫚倫さん、脚本:加藤良太さん

『湯気満ちて』
出演:竹下かおりさん、佐藤岳人さん

会場から制作での苦労を聞かれると、田尻泰崇監督は「教会での暴力シーンがあったのですが、取材をした教会が理解をしてくれ、撮影にも協力してくれました。ただ、撮影当日、急に葬儀が入ってしまったので、撮影を短縮しなくてはなりませんでした」と語られました。

一方、田中里奈監督は、犬と赤ちゃんの撮影が大変だったそうですが「赤ちゃんも大事なセリフの時には泣き止んでくれて、名演技でしたよ」と振り返りました。出演された佐藤岳人さんは「ケーキをバシンと顔に当てるシーンがあり、撮影の都合上、一発で決めなくちゃいけないので緊張しましたが、意外とうまくいったのでよかったと思います」と語られ、会場から笑いが漏れていました。また妊活セミナーの講師役をされた竹下かおりさんは「圧倒するような役柄ですが、以前、舞台で同じような設定を見たことがあり、楽しんでやらせてもらいました」と話されました。

今後の作品の構想を聞かれて、田尻泰崇監督は「閉塞感や自分の夢を叶えるのが難しいことを作品にしたい」とのことで、コメディのバイオレンスものなどを考えているとのこと。田中里奈監督は、脚本の加藤さんとともに、過去の短編のリメイクを予定しているとのことでした。

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