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キャスト陣の撮影現場の楽しさが伝わってきた『TOURISM』

《インディ・フォーラム部門》『TOURISM』の上映後、宮崎大祐監督、 出演の遠藤新菜さん、SUMIREさん、柳喬之さんがご登壇。すこしパンクな雰囲気のクールなスタイリングを決めた出演の皆さんの登壇に、劇場が華やぎました。

遠藤新菜さんは「一緒につくっている感覚で参加できるのでやりがいがありました。クセのあるキャストで、撮影は楽しい!しかなかったです」と、撮影現場を振り返りました。

SUMIREさんは、宮崎大祐監督とは初タッグですが、「宮崎監督は、柔らかい映像を撮ります。映画はみんなで作った感じです。でも、続編では、いないかもしれません。幽霊なので」と、役柄にちなんで、切り返しされました。

遠藤新菜さん

SUMIREさん

三人で唯一シンガポールに行けなかった柳喬之さんは、次に行きたい外国は?という質問に、自虐ネタでシンガポール!と答えながら、「僕は宮崎監督に負けず劣らず中身が99%乙女。現場では、自由にお芝居を作っていけました」と話されました。

宮崎大祐監督

柳喬之さん

シンガポールで、自分がかつて迷子になった経験も反映させたという宮崎大祐監督。音楽のこだわりを聞かれると、「シンガポールはアパートの部屋でセッションするような、アングラな音楽が盛り上がっている感じがします。出演しているのはThe AREというバンドで、音楽は半年ぐらいかけて準備しました。いろいろな音楽が混ざり合って、ちょっとした宇宙になる感じ。映画同様、境界線がなくなるイメージからオーダーしました」と、入念に準備した舞台裏を明かされました。

前回のトークでプロデュースにも意欲を示していると紹介されていた遠藤新菜さん。前作『大和(カリフォルニア)』出演で宮崎大祐監督との次回作では、もっと制作側の仕事もしてみたいと、衣装コーディネートを担当されたそうです。劇中のニーナやスミレが来ているカラフルなTシャツも遠藤さんのコーディネート。なかには遠藤さんの私物もあるのだとか。ちなみに、この日の4人の洋服は遠藤さんがモデルのお仕事でお付き合いのあるDIESELさんからお借りしたもので、ここでもプロデューサー的素質を発揮していらっしゃいました。

クールなポスターも、「若い人たちに、こんなカッコいい映画がある」とアピールする狙いがあるのだとか。サイン会後のプライベートフォトセッションでは、ポスター前で各々が好きなポージングを決め、とても楽しそう。映画さながらのグッドムードで、観客の皆さんとの交流を深めました。

世界初上映の意欲作。繊細な「音」の話にまで至った『アイニ向カッテ』

《インディ・フォーラム部門》『アイニ向カッテ』の上映後、高山康平監督と音楽を担当された唐沢寧さんが挨拶に少しの時間でしたが駆けつけてくださいました。

高山康平監督

唐沢寧さん

本作の音楽のクレジットにも名前が入っていた高山康平監督は「たいしたことやってないです」とおっしゃれば、唐沢寧さんは「あまり表に出過ぎないように工夫しました」と話されました。会場からは劇中、聞こえるか聞こえないかというぐらいの小さな音で音楽が鳴っている場面が印象的でした、との声に意図的に雑音のような音楽をつけたというエピソードも語られました。

また「愛なんてない。そこに向かう道があるだけ」と主人公や彼の元彼女から同じフレーズが出てくることについて触れられると、高山康平監督は「これがこの映画で最も言いたいことであり、元彼女のそもそも言っていた言葉にしばられている主人公の状態を表しているのかもしれない」と話されました。

20年の時を経て上映。監督の変わらぬ映画道に触れ会場も高揚!
『メイド・イン・ホンコン/香港製造[デジタル・リマスター版]』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2018》『メイド・イン・ホンコン/香港製造[デジタル・リマスター版]』が上映され、フルーツ・チャン監督が登場。「大阪にやって来ました。本当に嬉しいです。東京にはよく来ますが、こうして大阪アジアン映画祭に参加できて本当に嬉しいです!」とご挨拶。

1997年製作の本作。デジタル・リマスター版を最初に観た時の感想を求められると「非常に綺麗ですね。ですが、香港ではフィルムの方が好きという人が多い。なぜならフィルムの質感は生々しく、デジタルにはないものですから。実はこの作品は全部期限切れのフィルムを使って撮影したもので、デジタル・リマスター版でも綺麗になりすぎないように要求したのですが、綺麗すぎましたね」

「みなさん、オープニングで画面に1本の毛があったのを気付かれましたか?あの毛はわざと残しておいたのです。当時、色々なメーカーの期限切れのフィルムをまぜて撮影していたので、カラーも乱れていて。それでも観客の皆さんはそれがいいとおっしゃってくれました。90年代以降に生まれた若手の皆さんと我々とは、フィルムとはデジタルとは、という考え方も全然違いますが、それはそれでいいと思っています」と時間を経て変わっていく映像技術について語られました。

また「私自身はいわゆるメジャー系の映画製作に関わっていますが、もうひとつ成功していません。それだったら自分の好きな映画を撮ろうかなと96年ごろに思い、『メイド・イン・ホンコン』を撮りました。実際はスタッフ5人だったので、私自身も監督をやったりスタッフをやったり運転手もやりながらでした。当時、すでに20年後の香港をある程度予想していて、それが描かれています」と話されました。

今後つくりたい作品や予定について聞かれるとフルーツ・チャン監督は「映画はリターンがないとなかなか次をつくることができないので、インディーズ映画を離れてCMを撮ったり商業映画を撮ったりしました。大陸向け商業映画を3作つくりました。2作はあまり成功しませんでしたが、あと1作は間もなく公開になるアクション映画です。この私がアクション映画を撮ったんですよ!是非みなさんに観ていただきたいです」と答えられました。

また、この後、4月1日よりインディーズ系の撮影にはいるそうで、2〜3作はインディーズ映画が続く予定とのこと。「商業映画でお金を稼いで自分のつくりたいアート映画をつくるという、行ったり来たりの道のりです。私が商業映画を撮ると関係者に非難を浴びますが、これからも一生懸命がんばりますので応援してください」とフルーツ・チャン監督。客席からの質問に対し、監督自ら「はい、そこのあなた」と指名しながら進んだノリノリでエネルギッシュなQ&Aに会場も活気をおびました。

急遽キャスト登場!会場が映画から抜け出たような世界感に包まれた『クシナ』

初の長編映画『クシナ』で大阪アジアン映画祭《インディ・フォーラム部門》に参加した速水萌巴監督。映画祭期間中2回目となった上映は、平日の夜の遅い時間にも関わらず多くの観客が上映後のQ&Aに参加されました。当初、速水萌巴監督一人の登壇が予定でしたが、急遽キャストの小野みゆきさん、廣田朋菜さん、稲本弥生さんも参加し、劇場が一気に華やかな雰囲気に。

山奥にある女性だけで暮らす集落を舞台にした本作。観客からは衣装や登場人物の名前など、独特の世界観に関する質問が集中しました。「ヒロインの奇稲(クシナ)という名前は日本神話のクシナダヒメから?」という質問が来ると監督は“我が意を得たり“といった表情で「もちろんクシナダヒメからお名前はいただいています」と答えると観客だけでなく一緒に登壇した女優陣も驚きの表情。

速水萌巴監督、小野みゆきさん

廣田朋菜さん、稲本弥生さん

監督は続けて「私は手塚治虫や藤子・F・不二雄が大好きで、奇稲は手塚治虫の『奇子』を少しイメージしています」と答えると廣田朋菜さんは「それはキャストのみんなも初めて聞きますね」と監督の深い思考に驚いた様子でした。

さらに話は小野みゆきさんが演じた集落のリーダー鬼熊の話題に。小野みゆきさん自身も「すごい名前ですよね」コメント。監督が「とにかく強い名前をつけたかったのもあるんですけど、大正時代に実際の起きた“鬼熊事件”というのもありまして…」と語ると、またまたキャストは驚きの表情に。

また撮影時を振り返った小野みゆきさんは「色々面白いことがあったんですけど、一番驚いたのは私と集落のお婆さんたちのシーンを撮影する日に、現場に俳優が私とあと一人しかいなくてキャストが揃ってなかったんですよ」と告白。続けて「池袋で買い物していたスタッフの知り合いが急遽連れてこられてたんですけど、その人の芝居がすごくよくて」と語り、 どの役だったかを聞いた観客もあの人が!?とびっくり。

集落に住む人々の衣装や小物については、監督のお母様の古い着物を使った手作りだそう。細部にまで監督のこだわりが感じられたこの作品。最後に小野みゆきさんから「速水監督は、何があっても動じない芯の強い人。監督の器を持っている人です」と全面的な信頼を表すコメントがありました。

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