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偶然にも “水辺”が物語をつむぐキーとなった短編Aプログラム 『憧れ』『なぎさ』『帰ってきた少女』

《インディ・フォーラム部門》『憧れ』神保慶政監督、主演のホ・リンさん『帰ってきた少女』廣原暁監督、プロデューサーの井前裕次郎さん、プロデューサー兼助監督の佐野大さんが登壇されました。

『憧れ』神保慶政監督は「前回の長編(『僕はもうすぐ十一歳になる。』)に続き、この短編作品を大阪アジアン映画祭で上映でき意義深いです。ご鑑賞くださりありがとうございます」と挨拶。また、ホ・リンさんも「(日本語で)はじめまして。(韓国語で)今回、大阪アジアン映画祭に参加でき、心から喜んでいます。皆様ありがとうございました」と挨拶されました。

『憧れ』神保慶政監督

『憧れ』ホ・リンさん

印象的だった川辺でのシーンについて質問が及ぶと「個人的に川が好きなので、過去の作品も見直すと必ず川が無意識に入っています。この作品での最後の川のシーンは風景で5分くらい。あのシーンが撮りたいが為にこの話がある位凄く重要なシーンでした。表情は重要ですが、過信していなのです。見えない方が重要な瞬間が際立つのではないか、と思っているので。なので、あのシーンの為にその他の距離感を考えました。初めは遠く、最後は近く。あのシーンを基準に他のシーンを計算したぐらいです」と神保慶政監督は明かされました。

また、ホ・リンさんは「この作品に入る前に色々悩んだのです。私は実際、妊娠したことないし、撮影に入るまで監督やスタッフとも沢山意見を交わしました。撮影時は重めの毛布をお腹に入れて臨み、私も女性で母性があると感じて、母としての感情が自然と沸々と湧き出ました。演技で戸惑いはあまりなかった。最後のシーンは逆に音に集中出来たかなと思いますし。実際に映っている風景で録音した声、音なので凄く効果的だったのではないかと思いますが、皆さんいかがでしたか?と逆に質問したいくらい(笑)」と本作と向かい合った思いを語られました。

『帰ってきた少女』廣原暁監督は「今日は平日にもかかわらず、来て頂きありがとうございます。この作品は芳泉文化財団さんの助成と東京芸術大学の学生が協力してつくりました。この場を借りてお礼を言いたい。ありがとうございます」と挨拶。続けて、井前裕士郎プロデューサーが「本作品は東京芸術大学の学生、OB、講師、教授の皆さんの協力のもと撮影し、そのチームプレイが上手くまわった。その辺りも感じて貰えたらと思います。当大学は中国、韓国からの留学生が多数で彼らとも一緒に広範囲な映画製作を取り組めたらと、大阪アジアン映画祭を通して思いました。足を運んでくださった皆さん、ご覧頂きありがとうございました」と挨拶されました。

佐野大プロデューサーは「2人が良いことを言ったので、言うこともないですが…。お越し頂きありがとうございました。こうして皆さんに見て頂けて嬉しいです」と笑顔でまとめられました。

『帰ってきた少女』井前裕士郎プロデューサー(中)、佐野大プロデューサー(右)

本作でも『憧れ』同様、川辺のシーンが印象的に使われていることについて「僕も川が好きです」と廣原暁監督。「都内、横浜で撮影していると建物が沢山あって景色が壁のように迫ってくる感じがします。川があると多少ひらけて、心地いい、という意味で好きですね。あと、ランニングするにはやっぱり川だなと」と語られました。

会場からこの作品テーマを選んだ理由を聞かれると「こういう(誘拐、監禁、軟禁)という事件が起きた時、報道やネットの関心はそこで何があったか?それによりどれだけトラウマを負ったか?傷つけられたか?のという後ろ向きなものが多く、それがイヤだなと感じていました。それより大事なことがあるだろう!?と。実際はどうか分からない勝手な思いかもしれないけれど、映画というものは1カット1カット、時間が流れていく。事件に関しても、その流れ方のほうが僕はとても興味があり、そういう映画をつくることに意味があると思いこの作品を作りました」と廣原暁監督は説明されました。

神保慶政監督、廣原暁監督、はすでに長編映画も手掛けた注目の若手監督。残念ながらゲスト来場がなかった古川原壮志監督『なぎさ』も含め、短編Bプログラムの上映に客席も大満足の様子でした。

3作品3様!つくり手の話で短編作品の面白さ膨らんだ!『予定は未定』『優しい日常』『CYCLE-CYCLE』

《インディ・フォーラム部門》より短編プログラムとして3作品が上映され、『予定は未定』より磯部鉄平監督、脚本の永井和男さん、出演された屋敷紘子さん、南羽真理さん『優しい日常』より湯浅典子監督、プロデューサーの渡邉直哉さん『CYCLE-CYCLE』より金井純一監督が登壇されました。

『予定は未定』磯部鉄平監督より「本日はありがとうございます。バイオレンス映画の制作部に携わっていた時に屋敷さんが出演されていて、アクション以外で自分が監督するときに屋敷さんを撮ってみたい、と思っていたのですが、今回企画があって実現した映画です」と挨拶されました。それをうけ、主演された屋敷紘子さんは「すごくこの映画祭に来たいと思っていました。大阪の人間やし。今回、磯部さんとこの作品でここに来れてとてもうれしいです」と話されました。

南羽真理さんは「最後までご覧いただきましてありがとうございます。主人公の後輩役をさせていただきました。私的には、こんな後輩いたら、いやだなと思って演じていたつもりです」とご挨拶。また「いい本ないですか?と監督から話があり、胸キュンというテーマを与えられて、普段はコメディ映画が多いのですが、フレッシュなテーマだなと思って、お受けして書かせていただきました」と脚本を担当された永井和男さん。「普段自分で映画をとっていると、現場の空気を思い出すことが多いのですが、今回は3ヶ月程度、毎週脚本の打ち合わせをずっとサイゼリヤでしてきたので、この映画を観るたびにミラノ風ドリアの匂いを思い出しました」と話され、会場も和やかに。

『予定は未定』
屋敷紘子さん、磯部鉄平監督

『予定は未定』
南羽真里さん、脚本の永井和男さん

会場から作品へのこだわりを聞かれた磯部鉄平監督は、「走るシーンをアクション女優である屋敷紘子さんにやってもらうのをこだわったのですが、自分で自ら台車を押してカメラを回すことになって大変でした。20回くらいテイクを重ねたので一番しんどいのが僕ということになり、監督って大変だなとあらためて思いました」と撮影を振り返ると「最初はなかったシーンを監督がやりたいって言い出したので監督の責任かなと思います(笑)」と永井和男さんが暴露。因みに、道でこけるシーンは1回で撮られたとのこと。「屋敷さんに『こけるシーンいけますかね?』と聞いたら、『いけます』ということで、リハのときから勢いよくこけるので、本番は一発でしたね」と磯部鉄平監督は話されました。

『優しい日常』湯浅典子監督

『優しい日常』渡邉直哉プロデューサー(右)

『優しい日常』湯浅典子監督は「サスペンス・ホラーのオムニバス3作のうちの1作品としてつくりました。私自身、スプラッターなどのビジュアル的に怖いものよりも、“人間”が一番怖いと思っているので、外から見られている“家族”って何が一体本物なのか、をテーマにしてみました」と制作の経緯を話されました。

続けてプロデューサーの渡邉直哉さんからも「ホラーをずっとやりたいと思っていて、短編で海外向けにつくりました。信頼している監督3人にお声掛けをして、『サスペンス・ホラーです。お願いします』という形でお願いし、新しいやり方でつくってみました」と説明がありました。また「ハンバーグを食べているシーンの撮影時に現場に行ったのですが、中をのぞいたら、『てめえこのやろう!』と女性の声が聞こえてきて、撮影の中身がサスペンスになっていて、監督が怒っているのが一番怖かったです」と話され会場から笑いが。

『CYCLE-CYCLE』金井純一監督

『CYCLE-CYCLE』金井純一監督は「初めての日本上映が大阪になり、赤いトレーナーの山﨑悠稀君が大阪、黄色い服の塩﨑太智君が和歌山の子だったので、関西弁でつくってもよかったのかな、とも今日思いました」とし、また「たくさんの方に観ていただけてうれしかったし、メンバーも喜んでいるかと思います。会う機会があれば出演者にも『お客さんたちも笑っていたよ。』と伝えようと思います」と述べられました。

本作出演の“M!LK”メンバーの裏話を聞かれると金井純一監督は「ワークショップ時代の若い頃に彼らにあっていたのですが、久しぶりに会うと成長して男っぽくなっていて、純粋にまっすぐ育っているなという印象でした。ほんとにいい表情で撮影に入ってくれて、旅をした感が最後にはでていました」と話し、「今回は2日間で撮影したのですが、雷も偶然で、天気で表情がでました。真冬並みに寒かった時期だったので、水浴びのシーンもほんとに大変だったと思います。ファーストカットがタンデム自転車で坂道を上るシーンで、スタッフでテストはしていたのですが、上り坂だったのもあって、自転車に1時間ほど乗れなくて焦りましたね。これ乗れなかったら映画撮れないぞ!という感じでした。が、NGはみんなあまりありませんでした」と撮影時の様子を語られました。

最後に屋敷紘子さんより「映画って今、様々な形でとれるようになっているのですが、短編映画を観る機会はあまりないので、このような場を設けていただいているのは本当にありがたいです。役者としては短編でも長編でも関係なく出る気でいるので、お客様も短編って最初はピンとこないかもしれませんが、20〜30分の中に面白さがたくさん詰まっているので、こういう機会があったらまた映画館に来てほしいなと思いますし、今日来ている監督たちも良い作品を長編でとっていく素敵な監督だと思いますので、これからも応援よろしくお願いいします」と会場中があたたまるお言葉でこの回はしめられました。

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