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“不思議な映画”への反応に監督も納得?!の世界初上映『ゆっくり』

短編Cプログラムが上映され、《インディ・フォーラム部門》の『ゆっくり』から、ふくだももこ監督とプロデューサーの井上純平さん、そして特集企画《台湾:電影ルネッサンス2019》の『じゃあまたね』よりポーリー・ホアン監督と出演のティファニー・シュエさんが登壇されました。

ふくだももこ監督

井上純平プロデューサー

まず、大阪ご出身という『ゆっくり』のふくだ監督が挨拶に立ち「この作品は、不思議な映画なのですが、ゆったりした気持ちで観ていただけたらいいな、と思っていたので、上映中ちょっと笑いも起きたりしていい環境かなと思いました」と世界初上映への感想を述べられました。またプロデューサーの井上さんは「今日はありがとうございます。監督は『ゆったり』といいましたけど、僕は『のんびり』という感じかなと思いました」とご挨拶に。

その井上さんが本作では脚本も担当されていることについて「普段は自分で脚本をかいて監督をしていることが多いのですが、この脚本を見せてもらった時に、単純にすごく好きな物語だなぁ、セリフのやり取りとかテンポいいなあ、と感じたのです。それに、全体的にすごく余白のある脚本で、『これ、私が撮ったらどうなるのかなぁ?面白くなるかな』と思い撮らせてもらいました」とふくだ監督は話されました。

映画の画作りについて会場から質問がでると監督は「ロケハンの段階で決めたりしていました。いつも組んでいるカメラマンも私も、フィックスであまり動きが無く長く撮っていますね。全身で表現することが芝居だと思っているので。今回は脚本の題材も“ゆっくり”なので、そんなガツッと撮るものではないと思っていましたし」と語られました。

監督の丁寧な映画づくりと演者の努力に惜しみない拍手!『じゃあまたね』

続いて『じゃあまたね』のポーリー・ホアン監督にマイクがわたると「ハーイ!日本の皆さん、こんにちは!本当に嬉しい、大阪!」と日本語で挨拶の後、「台湾から参りました。このような機会で私たちの映画を上映することができて本当に光栄に思います。本当にありがとうございます」とご挨拶に。

主演のティファニー・シュエさんは「こんにちは。短編映画『じゃあまたね』に出演しています。台湾からこの大阪アジアン映画祭に来ることができてとてもうれしいです。映画をご覧いただきありがとうございました」と日本語で話され、会場からは大きな拍手がおこりました。

ポーリー・ホアン監督

ティファニー・シュエさん

本作でエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねた世界的に有名なカメラマン、リー・ピンビンさんについて聞かれると「私自身、映画の現場では助監督やスクリプターという仕事をしていて、2010年から私はリー・ピンビンさんと一緒に仕事をするようになりました。彼は中国、台湾ですごくたくさんの映画を作ったり参加していたりして、非常にラッキーなことに私はその場面すべてに立ち会うことが出来ました。ずっと、この期間彼から色んな指導をしてもらいまして。また、現場の仕事以外にも、私の映画、私の映画人生にも指導してくださいました。この場を借りて彼に『ありがとうございます』と感謝したいです」と監督は丁寧に答えられました。

会場から映画の最後にながれた“想い出に捧ぐ”というコメントについて聞かれるとホアン監督は「この映画をつくった理由は、私達人間が抱いている感情を映画を通して表現したかったからです。私の友達、家族…周りにいる特に年配の方がどんどんこの世を去ってしまってとても寂しい。去った人はガラスの向こうにいて、私達はガラスのこちら側にいて、いくら向こう側に手を振っても声をかけてもつながらないわけなんです。こういった気持ちは、なんとも言えない、すごく大切なものだと思います」と語られました。

スタントマンは使っていない、という水族館水槽内で魚への餌やりシーンに話がうつると、ティファニー・シュエさんは「予想できない出来事がいろいろ起こってくる可能性がありますので水槽の中で演技するのは難しかったです。水中に潜ってしまえばカメラがどこ?アングルは?など見てもわからないですし。とにかく自分に言い聞かせたのは、その魚たちの動きを観察しそれに合わせるように餌をあげて、コミュニケーションをとろう、ということ。結果、魚たちは非常に上手に演じてくれました!私の演技よりうまかったと言われています」と笑いながら話されました。苦労はなかったと話すシュエさんに、監督が横から「彼女は撮影の一か月前から毎日この水槽に潜り、魚に餌付けの訓練をしたのですよ」と暴露し、会場から笑いが起こるひと幕となりました。

男が全員クズなのです!衝撃の題材で迫った一作『JKエレジー』

《インディ・フォーラム部門》の『JKエレジー』の日本初上映があり、松上元太監督、出演の希代彩さん、芋生悠さんが登壇されました。

最初に司会者より、本作の題材となる“クラッシュビデオ”に関して直球質問が及ぶと松上監督は「最初、クラッシュビデオを知ったときに、世の中にこういんものがあるのだなあと、しか思わなかったです。ただ世界中にそういう愛好家はいるのですね。それは、たぶん誰もまだ映画ではやってないのではないかなと思って。ただ、この作品で、クラッシュビデオを描きたいわけではなくて、彼女たちの今の世の中での生きにくさを表現できないかなと思い、色々調べ取材もし、実際にクラッシュビデオを撮られている監督にも話を聞いて、映画に落とし込んでみました」と説明されました。

松上元太監督

また「色んな人間が登場しますが、大きな規模の映画でもないので、いろいろな手段で役者さんを探し、その候補の中に希代彩さんがいました。最初写真で顔を見たときに、非常に強い印象の顔をされていたので、いけるのでは、と。ただ実際に会うと小さくて華奢な可愛い印象でした。そこでおやっとは思ったんですけども、顔のつくりがクラッシュビデオにはまるということは間違いなかったのでオファーしました」と監督からキャスティングについても話されました。

芋生悠さん

希代彩さん

これが演技初挑戦だった希代彩さんは「自分の性格は、この役とは全然違う、真逆ですから、こんなにも健気な人がいるのかと思いました」とお話しに。

エンドロールにも記載されていた桐生市との関係について聞かれると監督は「もともとこの映画は桐生市で開催されていた映画祭で企画を出したものです。それでこの企画をやりましょう、ということになったのですけど、映画祭の規格で50分以内におさめなければなりませんでした。そこで一旦50分以内で制作しました。ただせっかく長尺で撮影しているので再編集して88分に再編集したものがご覧いただだいたものです」とご返答。

劇中のカラオケシーンで中島みゆきの「ファイト」を歌っていた女子高生役の芋生さん。その渋い選曲について「あれは自分で選んだわけじゃなくて、歌ってくださいと言われて練習しました。知っていましたし好きな曲です」とコメント。続けて監督から「選曲が悩ましいところで。この曲だったら親世代も知っているし、よい曲で歌詞もよいので選びました」と付け加えられました。

最後に松上監督は「この映画は基本的に登場する男が全員クズなんですね。父親、兄、教師など。男は全員だめだと、そこは脚本の段階からぶれずに行こうと思っていました。そこがぶれなければ、彼女たちに観る方々が共感してくれるかなと思いましたね」と話し、「ダメですね男は」という言葉でQ&Aの時間をしめられました。

“美味しい映画”は観客の胃袋までも刺激した!『アルナとその好物』

チケットも完売していた特集企画《ニューアクション!アジア》の『アルナとその好物』上映後、プロデューサーのメイスク・タウリシアさんが登壇されました。「こんばんは。今日は私たちの作品を観に来て下さりありがとうございます。全ての出演者、監督、そして我々のチームから皆様によろしくとの伝言を預かっています」とご挨拶。この映画と同様、軽快に手振りを交えてテンポよく作品についてお話しになりました。

この作品は、2014年に出版された同名の小説をもとに映画化。小説は各地の食を探訪し、鳥インフルエンザを解決する、という物語で、劇中でみられた料理の描写やレシピについてもふんだんに触れてあったそうです。しかし、映画の中では全てを描ききれないため、原作者と相談しながら料理の数を絞られたとか。「因みに、レシピについては、ナシゴレン(焼飯)は、かなり詳しく記載されていますよ」とタウリシアさん。

また、撮影地について会場から聞かれると「インドネシアの中でも食文化が異なるジャワ島とカリマンタン島を選びました。原作者は『人は色々異なるが、政治問題で対立しても食を通して分かり合うことができる』とのメッセージを発していて、私はそれに共感しています」と話されました。

スクリーンに映し出された大量の“美味しそうな料理”。それらを作っていたのは誰ですか、という声にタウリシアさんは「ナシゴレンはスタッフが作りました!でも、それ以外は映画を撮影した現地のレストランのシェフ達が作っています」と明かしました。

夕飯時に上映されたこのプログラム。会場全体が物語にはもちろん、劇中の料理にくぎ付けになる時間となりました。

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