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監督の感謝の念が溢れた世界初上映『ピア~まちをつなぐもの~』

《特別招待作品部門》『ピア~まちをつなぐもの~』が世界初上映されました。

登壇された綾部真弥監督は「映画祭初日の日中に来てくれて嬉しい。少しでも琴線に触れる、共感できるところがあれば嬉しいです」と挨拶されました。

在宅医療と介護をテーマにした本作。出演の水野真紀さんについて「痩せていたでしょ。食べるのが好きな人がこの映画のために痩せてくれた。すごい気合いでした」と監督。本作でデビューされた水野真紀さんの娘さんについては、「演技経験はありませんでしたが、子役あがりのいろんな引き出しのある子よりもいいかな、と。オーディションで初めて会って、まっすぐなところにかけてみました。最期の徐々に泣いていくところとか、良い演技だったと思いますよ」と監督は初演技についてねぎらいました。

また、本作のテーマについて監督は「介護、医療の現場を知っている人もこの中にいるかもしれない。現実はこんな甘いものじゃないよ、という声をあるかも。ただ、いろんな人々がいて地域を支えるという理想を描きたかったのです。その希望、応援歌にしたかった。地域医療は地域差があるけれど、映画を通して知ることで、普通の人々にアクションを起こしてほしいと願っています」と語られました。

上映中には涙する観客も多く、上映後には心に沁みたという声が寄せられるなど、この世界初上映を好意的に受け取ってもらえたことに監督は感謝の意をあらわしていました。

香港から世界へ届けたい!偽りのない挑戦的な一作『女は女である』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2019》『女は女である』の上映後、メイジー・グーシー・シュン監督、プロデューサーのミミ・ウォンさん、出演のトモ・ケリーさんが登壇されました。

「ヨロシク、オネガイシマス」とゆっくり日本語で挨拶された監督に、会場からは温かい拍手がおこりました。続いてウォンプロデューサーからの 「ワタシハ、ニホンゴ、ワカリマセン!」の言葉には会場が大爆笑に。トランスジェンダーの少年を演じたトモさんは、「トモ・ケリーです。どうぞよろしくお願いします」となめらかな日本語でご挨拶。お名前の“トモ”も日本語の“友”から付けられたとの説明に、会場も一気に親近感をもつ空気となりました。

メイジー・グーシー・シュン監督

ミミ・ウォンプロデューサー

劇中描かれた父親像について質問がでると監督は、「香港の若い男性は優しいです。香港では、『香港男子はモメることが嫌い』ということになっています。でも年配の男性は違う。威厳を保つことばかり考えて、家庭では意地を通し、不機嫌な態度を崩さない。こういうキャラクターを作るにあたり、いろいろな男性にお話をうかがいましたが、やはりみんな少し拒否感を示していました」

本作が取り組んだトランスジェンダーというテーマについて、ウォンプロデューサーは、「私たちの映画の特徴は、本当にトランスジェンダーの俳優を使ったこと。トモさん以外にも十数人がトランスジェンダーの俳優です。気づきましたか?気づかないのなら、どうして差別するのかと問いかけたかったんです。私自身もトランスジェンダーです。この映画を通して、海外の人にも私たちを差別しないで、と呼びかけたいです」と語られました。

トモ・ケリーさん

劇中では親の反対にあうトランスジェンダーを演じたトモさん。実際のご自身のことを聞かれると「私は映画とは違い、性別より愛情や家族を大切にする家庭で育ちましたから、殴られたり反対されたりはなかった。でも家の外では別。今でも悪気なく“お兄さん”と呼びかけてくる人がいて、ちょっと傷ついたりします。でもこれは、外見や声を向上することで変えていけることだと思う。日本ではトランスジェンダーの方がテレビにいっぱい出ているけど、香港ではほぼゼロ。この映画を通じて、自分も彼女たちみたいにいろいろ発信できたら」と答え、会場は彼女を応援するかのように、大きな拍手に包まれました。

本作が長編デビュー作となる監督は「私は運がよくて、何度もウォンプロデューサーと一緒に仕事をする機会に恵まれました。また、様々なトランスジェンダーの人とも出会った。家族の関係でカミングアウトできない人や、カミングアウトすること自体を怖がる人もいた。そんな人たちの物語を、みなさんに知ってもらいたいと思って、この作品をつくりました」と話されました。

「最後にもうちょっと」とトモさんが自らマイクをとり、「これをきっかけに、もっとトランスジェンダーのことを知ってください。知らないことは怖いけれど、いろんなことを見て知れば怖くないことがわかっていただけると思います。ぜひこれからもよろしくお願いします」と流暢な日本語で上映後のトークを結びました。

トモ・ケリーさんには、「どこで覚えたの」「すごいね」と声を掛ける人続出。「こうやって日本語を使う機会が来るとは思わなかった」とトモさんからも笑顔が。

友人の死をきっかけにスター女優が初監督に挑戦!『サッド・ビューティ』

特集企画《ニューアクション! アジア》『サッド・ビューティ』ではタイのスター女優でもあるボンコット・ベンジャロンクン監督がQ&Aにご登壇。初監督作品を大阪アジアン映画祭で上映することができてとてもうれしいとご挨拶されました。

「私の亡き友に捧げる」という最後の字幕について、そのことが作品を撮る動機になったのかとの質問には「確かに友人の病気とその死がこの作品をつくる動機になりました。しかし、私が描こうとしたのは、2人の女性がいつも一緒にいて冒険をしていく姿です。そのため脚本には楽しい要素やミステリーの要素を取り入れました。また友人の家族がまだこの話をそれほど詳しく語ってほしくないという事情もありました」と話されました。

次にこの映画を作るにあたって影響を受けた作品があればと聞かれたベンジャロンクン監督は「具体的に何かの作品の影響を受けたわけではありません。ただ『テルマ&ルイーズ』という女性と女性の関係を描いている作品が好きです。でもその作品は女性が男性に失望するという話ですが、私の作品はそれぞれの女性の人生について描いています。例えば、一人はスターでありながら心の病にかかっている。もう一人は、体は病んでいるけれども心は強い。そういった女性のあり方を描きました」とご説明。

さらに劇中でピムの義父が妻子に暴力を振るうシーンについて、タイでもこのような問題が起きているのかという質問については、家庭内暴力の問題はタイでもそれなりに社会問題になっていて、例えば、加害者が刑務所に入るといったケースや、子供を安全な場所に避難させるということもあると語られました。

またこの作品のミステリーの部分で描かれている、意図せずに殺してしまった義父の死体処理について、ベンジャロンクン監督はタイの歴史書からヒントを得たとのこと。司会者からも「ヒッチコックの『サイコ』みたいに沈めるのかなと思ったら・・・」と予想外の展開に驚きの声があがりました。

大胆で美しいドレス姿で登壇されたベンジャロンクン監督。今までに20本以上のタイ映画に出演した人気女優で、『トム・ヤム・クン!』では妖艶な演技を披露。上映後のサイン会も大盛況で終わりました。

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