開催レポート
 
3月15日(土)9日目 vol.2

 

3回目の登壇で監督の素顔ものぞく

シネ・ヌーヴォにて3度目の舞台挨拶となり「緊張が解けてきた」と言われるくらいリラックスされていた遠藤監督。上映後のQ&Aは監督自ら「質問、意見をよろしくお願いします」とスタートしました。

『友達』が作られた背景について、最初は俳優の物語をしようと思い調べる中で、実際に劇中の舞台となる「友達」のようなサービス(演技の代行)があることを知ったそうです。特にアメリカでは代行を行う会社もあるようで、立派な舞台ではない所で演技をする”演技の消費”がテーマとなったと語られました。それに関して「実際にサービスを受けるリサーチをどのように行ったのですか?」という質問に「サービスのあり方としてはイメクラのような風俗事業をイメージし、つくった」と答えた後に「行ったことはないですけど」と付け足して会場が笑いに包まれました。

これから撮りたい映画について聞かれると「なんともいえない人間のイメージに興味があるし、全く別なものにも興味があります」とまだまだ未知数な次回作も楽しみな遠藤監督の舞台挨拶でした。 ちなみにヌーヴォ名物壁サインもいただきました!

 

 

 

人の内面を意識して…青石式映画制作法を語る

『トシの客』上映時(3月14日)に引き続き、青石太郎監督が『PLEASE PLEASE ME』の舞台挨拶に再びシネ・ヌーヴォに来場されました。

『PLEASE PLEASE ME』は、『トシの客』より2年前に撮られた作品で、「『トシの客』では耽美主義とならないように、きれいなものにつられすぎないように気を付けました。共通していえるのは、カメラを回していると物の配置などを気にしてしまうので、内面を見ようと意識しました。」と、脚本、撮影、編集などすべてご自身でこなしている監督らしいコメント。

本作のタイトルや『トシの客』でも使われていた楽曲から「ビートルズがお好きなんですか?」聞かれると「ばれました?!」とニッコリ。「登場人物の人物造形がすばらしい」と会場から感想がでると「あまり強い女性にならないように、スキや欠点を考えつつ、自分の女性的な部分にも注目しました」と説明。また、1カット、セリフは脚本通りの約6分の長回しのシーンがあり、このカットを10テイクほど撮ったとのこと。このことを振り返り、「光には気をとられるので、次の制作で変えたい反省点です」と話されていました。

 

 

 

金門島を知りつくした男 ピーター・タン監督再登場

この日の『戦酒』では、登壇の予定がなかったピーター・タン監督が、急きょ、来場くださいました。

登壇前にはスタッフに、朱色の酒瓶に金色の文字でタン監督のサインが入った高粱酒の写真をみせてくださった監督。お値段は、なんと日本円で350万円相当だそうです。「かっこいい」とスタッフが言うと「持って来ればよかった」と笑顔。

上映後のQ&A。「なぜタイトルは”戦酒”なんですか?」という質問に監督は、「金門島が戦地であり、金門島が無ければ台湾は中国に攻め落とされていた。そういった歴史からひも解いて、胡連将軍のことや高粱酒のことなどを知ったので」と答えられました。ちなみに、タン監督はこの映画を通して金門島に貢献したということで、「飛行機などが無料になるカードを持っています。」とカードを掲げられると、会場からどよめきの声が。

作中の映像について「撮影は実際に金門島でされたのか、セットでされたのか?」という質問には、「すでに残ってない施設や場所に関してはセットで再現しました。」とのお答え。司会者が「高粱酒に一番あうつまみを教えて下さい」というと、即座に「ピーナッツ」と答えてくれました。ピーナッツは落花生ともいい、それをつまみに酒を飲むことを「花酒」というそうです。「ぜひ皆さん一度試してください」という一言でQ&Aの時間は終わりました。

 

 

 

前売り完売、ゲストも多彩で大盛況!

プラネット・プラス・ワンでは、3回目となる『僕はもうすぐ十一歳になる。』の上映が行われました。神保慶政監督に出演の紫英ちゃん、鳥居敏明さん、真弓さん、平本たかゆきさんが登壇しました。

英語が堪能な紫英ちゃんは、舞台挨拶ではおなじみとなった聴き応えのある英語のスピーチを披露。「まとめると、“最初は緊張しましたが、段々慣れてきて撮影を楽しみました”」神保監督の簡潔過ぎるに紹介に観客は爆笑となり、すかさず富岡事務局長から「短いね(笑)」と突っ込みが入っていました。

作品の脚本に関して神保監督は、10稿ほど事務局とのやりとりを重ねたとのこと。主人公の少年・翔吾くんのキャラクターについて、「最初は大人の様々な価値観に揺らぐ設定でしたが、子どもはもっと強いんじゃないかということになり、意思の強い少年が成長するというキャラクターになりました」と話されました。

  • 神保慶政監督
  • 紫英ちゃんと神保監督

上映後、観客から「監督自身の哲学、宗教観はどの時点で培われましたか?」という問いに、「輪廻転生は信じていません。色々な死生観があるが、どれが正解というわけでない。これは旅行会社で大部分が培われたのかなと思います」とのこと。大学卒業後、秘境専門旅行会社に勤務していた神保監督。アジアの担当としてインド・ブータン・パキスタンによく行ったことが本作の元になっているそうです。「経験の少ない役者への演出で大変だったことは?」という質問には、「そんなに大変と言う印象はありません。子役の2人は説明し過ぎると子どもの自由さが失われると思ったので、否定は避けました。登場人物の要素が必要なところは僕が考えて指示を出しましたが、それ以外は役者本人の性格が出ています」と監督の演出方法が語られました。

  • 平本たかゆきさん
  • 真弓さん
  • 鳥居敏明さん

最後に再度、役者陣が登壇。 紫英ちゃん演じる花音の父親役・平本たかゆきさんは、「監督から台本のセリフに捉われず喋ってください、と言われたのが印象に残っています。役者としてやり易かったです」と、現場の様子を紹介。そして、第8回CO2ワークショップ短編作品『邪魔するな』で主演した真弓さん。本作では花音の母親役で虫嫌いの女性を演じました。「虫は嫌いじゃないけど、標本が嫌いなので脚本をそれ寄りに変えました。」神保監督は、セリフの内容もシーンに応じて提案があれば変えて行くというスタンスを取っていたそうです。

 

 

 

草野なつか監督×脚本・高橋知由さん、ディープに語る

この日の『螺旋銀河』上映終了後は、草野なつか監督と脚本の高橋知由さんがトークに登場しました。

高橋さんは濱口竜介監督(『不気味なものの肌に触れる』)とのタッグで知られる注目の若手脚本家。東京でのバイト先が草野監督と同じだったという高橋さんは、当初、草野監督から脚本のアドバイザーを頼まれたと思っていたら、脚本自体をオファーされた、とのこと。「元々草野さんが書いたものが、シナリオをみんなの前で発表するという設定だったんですが、せっかくやるなら“音”“声”に注目したいと思いました」と高橋さん。ある専門学校が授業で企画した番組を、学校が番組枠を買うことで実際に公共電波にのる番組として成立させたという実話を聞き、脚本に取り入れ、クライマックスのラジオドラマの舞台が成立したそうです。第一稿では、劇中劇(ラジオドラマ)まで高橋さんがすべて書きましたが、すんなり流れすぎるためにフックがないと思い、草野監督に逆発注したとか。富岡事務局長から高橋さんに、真逆の二人の女性像について質問があると、「お互いを理解できないと言いながら一緒の場所にいる関係性が男性としては理解しにくい。その辺は監督に任せました。」

  • 草野なつか監督
  • 高橋知由さん
  • 石橋征太郎さん

観客の男性から「役者さんの演技も淡々としていて、カメラも一歩引いた位置でFIXがメイン。移動の手持ちも使わなかったのはどういった意図ですか?」と言う質問が挙がりました。草野監督は、作品に対していいか悪いかは別ですが、と前置きした上で「元々の考え方として、物語を過剰に盛り上げたくないというのがありました。観ている側を突き放したい。寄ったり切り返したりは、なるべく大事なところに取っておきたかったんです」場所を意識して欲しかったと語る草野監督。聞える音も含めて、その場所で何が起きているかを見せたかったそうです。「脚本を越えられるのはそこで、自分が映画として勝負できる部分だと思いました」

最後に、マスター役の石橋征太郎さんも登壇し、30分に及ぶトークは終了しました。

 

『螺旋銀河』を鑑賞していた『KIL』のニック アミール・ムスタファ監督にインタビューしてみました。

「とても面白かったです。演技のトーンの質問が出ていましたが、何故淡々と演じるか、監督が仰っていた目的、コンセプトは凄く面白いと思うんですが、キャラクター設定についてはわからない部分があるので、監督に聞いてみたいと思います(笑)」

また、マレーシア映画と日本映画はかなり違いを聞くと、「結構違う部分が多くて、日本の映画の方が、キャラクター同士がお互いを尊敬していて、やりとりが丁寧。マレーシアではそういう扱いではないんです」ムスタファ監督でした。ありがとうございました!

  • (右端)『KIL』のニック アミール・ムスタファ監督