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多才な武術家の監督が描く世界に観客も大満足 『師父』

《特別招待作品部門》『師父』は、天津を舞台に、広東から来た武術家の主人公と地元・天津の武術各流派の思惑が火花を散らすアクション映画。スタイリッシュな演出と二転三転する展開、そして息をのむ武術対決シーンにすっかり魅了された会場では、終映後、大きな拍手が起こり、それはシュー・ハオフォン(徐浩峰)監督リー・シア(李霞)プロデューサーが舞台に登場するまで鳴りやみませんでした。

「扉の外で待っていたら、会場から拍手が聞こえて来たのでとてもうれしかったです」シュー監督は満面の笑みとともにそう切り出されました。

武術映画の脚本・監督として映画製作に携わるだけでなく、武術家、武侠小説家という顔も持つ監督は、ご自身も存在感のある大柄な方。この映画を撮った動機を尋ねられると「中国では武術映画は衰退しているジャンル。今回私は一つの職業という視点から考え、そこに詩的な表現などのクリエイティブな要素を加えて、今までの武術映画とは違う新しいものをつくろうとしました」とのお答え。監督の話を継ぎ、リープロデューサーからも「今回の映画では“職業としての武術”を描きましたが、そこで語られることは、武術以外の他の業界、職業についても何かあてはまることがあると思います」とのこと。

シュー・ハオフォン(徐浩峰)監督

リー・シア(李霞)プロデューサー

天津を舞台にした理由については「中華民国時代の天津は、多くの武館が集まり中国における武術の中心だったのです。実は私の母や、映画の主要俳優であるジャン・ウェンリー(蔣雯麗)さんの出身地だという縁もあります。ここ数十年、天津は“相声(漫才)が盛ん”という、すこしコミカルなイメージでみられることが多かったのですが、この映画で天津人がまた誇りに感じてくれるとうれしく思います」と監督は語られました。

観客と監督の「いいものを観た」「観た人が喜んでくれている」というそれぞれの満足感が会場を包む素敵な時間となりました。

映画の世界だけじゃない!ミステリアスな街の本当の話を語る 『心からの複製』

ジャカルタを舞台に、スリリングな恋愛模様をアート的な映像づくりで魅せる一作、特集企画《ニューアクション!サウスイースト》の『心からの複製』が上映となりました。

映画が終わって、拍手喝さいを浴びながらジョコ・アンワール監督とプロデューサーのティア・ハシブアンさんが登場。会場からたくさんの手があがり一気にQ&Aと流れていきました。

本作でキーアイテムとなる“海賊版DVD”。それがインドネシアにおいて日常的なものなのか、という質問に「結構危ない地域でもあるので、隠しカメラを使って撮影した部分もあります。海賊版のDVDは日本円で40円、5枚買ったら1枚無料というのが相場で、マフィアが裏で絡んでいるように思います」とリアルな環境を明かしたジョコ・アンワール監督。また、カメラワークのことについて質問がでると監督は「一般的に数年前までのインドネシア映画ではカメラワークがたいしたことなかったのですが、最近は違う。今回は撮影が8日間しかなかったので、かなり苦労しました。ちなみに撮影は8日間でしたが、そのあとの編集は8ヶ月かかりました」と驚きのスケジュールを告白。

ジョコ・アンワール監督

ティア・ハシブアン プロデューサー

バイクがたくさん走るシーンについては「インドネシアでは道でバイクレースをして賭博をすることが多いです。ちなみにジャカルタは渋滞がすごくて、夜中の1時ぐらいでもまだ渋滞していることがあるぐらいです」と日本国内にいては想像しえないインドネシアの事情についても知る機会となりました。

出口の見えない香港での政治、文化、社会を真っ向からとらえた意欲作
オムニバス作品『十年』

特集企画《Special Focus on HongKong 2016》で上映された『十年』は、5人の監督が「十年後の香港」を想像して描いた5編のオムニバス作品。現地では「十年後ではなく“今の”香港の状況そのままだ」と口コミで話題になった作品です。

上映後の舞台挨拶には、5編のうち『冬蟬』のウォン・フェイパン(黃飛鵬)監督、『方言』のジェヴォンズ・アウ(歐文傑)監督、『本地蛋(地産卵)』のン・ガーリョン(伍嘉良)監督、そして作品全体をまとめているアンドリュー・チョイプロデューサーが登壇しました。

ウォン・フェイパン(黃飛鵬)監督

ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)監督

さっそく会場から、かなり直接的に政府を批判している作品だが香港での反応はどうだったか、を聞かれると、チョイプロデューサーが「昨年の12月、最初は1館のみで公開されました。9週間の上映の間、最終的に上映館が6館まで増え、興行収入は600万香港ドルとなりました。これは香港のインディペンデント映画としてはかなり良い成績です。観客からも “共感した”という反応が多く聞けた。私たちは、出口が見えないような状況にあるこの香港にまだ希望を見出したいと思ってこの作品をつくったので、とても嬉しかったです」と答えました。

ン・ガーリョン(伍嘉良)監督

アンドリュー・チョイ プロデューサー

また、『自焚者』のインタビューシーンで登場する何人かの識者たちは実在の方々かどうかを質問。来日していない『自焚者』のキウイ・チョウ(周冠威)監督の代わりに、ン監督が「あれは全部俳優です。ただ、彼らが語っていること、批判している意見などの内容はすべて監督自身の体験で、監督が実際に考えていることや実際に批判されたことなどをそのまま反映させています」と答えました。

Q&Aの後には、監督、プロデューサー4人全員によるサイン会も行われ、その場で直接感想を語りかける観客も多く見られました。

夢からアイデアを得た インドネシア発アクション作品『3 TIGA(原題)』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》『3 TIGA(原題)』が上映となりました。Q&Aには、アンギ・ウンバラ監督がご登壇されました。

ハリウッド顔負けのアクションシーン満載の本作。役者陣のアクション経験を聞かれると「主演の3人は俳優ですが、アクションシーンは初めてでした。そこで2ヶ月間の猛練習を行いました」とアンギ・ウンバラ監督。お父様がアクション映画をつくられていた影響を受け、このジャンルになじみがあるという監督。本作では脚本も手がけました。「はじめは夢からアイデアを得たので、その後、兄とともに3ヶ月ほどかけて脚本を練っていきました。」

タイトル“TIGA”の意味について監督は「インドネシア語で“3”の意味。はじめは“Three Fighter”にしようとしましたが、西洋らしくなってしまうと思いやめ、次に3人の名前を使用し、“アリフ・ラム・ミム”というタイトルも考えましたが、アラビアっぽさが出すぎてしまうと思い、これも却下しました。この映画ではインドネシアの伝統的な武器が使われたりしていて、インドネシアの映画であることを強調したかったので、最終的にはインドネシア語の“TIGA”をタイトルに採用しました」と語られました。

続編をつくる予定を聞かれると「どなたかスポンサーになっていただければ、ぜひ!」個性的な監督のつくるアクション映画、さらに観てみたいものです。

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