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「言葉も文化も異なるところで」海外初上映を楽しみにされていた
『ベトナムの怪しい彼女』

海外初上映となった〈小特集:刷新と乱れ咲き ベトナム・シネマのここ数年〉『ベトナムの怪しい彼女』。「ことばも文化も異なるところでの上映はどう感じてもらえるのか楽しみにしてきました」とファン・ザー・ニャット・リン監督が登場されました。

韓国の『怪しい彼女』のリメイクということで、韓国プロデューサーからは唯一“ベトナムらしいものをつくってほしい”というリクエストがあった、とのこと。そこで、主人公の憧れるアイドルや主人公が老人クラブで歌った唄など、ベトナムでは誰もが知る有名なものを散りばめたそう。

主人公のキャスティングについて聞かれると「若い女性なのに老人っぽい、コメディもでき、涙もながさないといけず、さらに唄も歌わなきゃいけない。このキャスティングは難航しました」と監督。実際、国内で活動するこの年代の女優さんほぼ全員に会ったとか。当初、誰もが知る別の女優さんに内諾していたものの、スケジュールが合わなくなりミウ・レさんが起用へ。「彼女は若いのですが、老人みたいなところがあって(笑)。でも、稽古をつむにしたがって彼女こそがこの役にふさわしい、と変化していきました」と監督は話されました。

最後に「この作品に含まれているメッセージはグローバルなものになっていますが、そこに、自分の祖母たちも投影してつくりました。観客の皆さんの反応も間近で感じられたので嬉しかったです。ありがとうございました」としめられたファン・ザー・ニャット・リン監督でした。

ご当地自慢対決勃発?!『想い出の中で』と『ともに担げば』一緒にご登場

《インディ・フォーラム部門》にて併映された、『想い出の中で』完山京洪監督『ともに担げば』で出演し主題歌も担当したillyさんが共に舞台挨拶に立ちました。

『想い出の中で』の舞台は、3万5千人が暮らす福岡県大川市。市の中央にある市役所を起点に車を走らせると15分ほどで市の境に届くという小さな街で、その街を活性化させる一手として製作された作品です。

一方、『ともに担げば』は、新潟県の隣り合う燕市と三条市を燕三条市として撮り上げた作品。金属加工技術で栄えてきた伝統産業の地を舞台に、夏祭り中止の発表に市民たちが気持ちをひとつにして地域の誇りを取り戻そうとしていく姿を描いています。

早速、完山監督から「神輿を担ぐ」シーンについて聞かれると「2日間の撮影で、40度近い炎天下の中をずっと走ってらっしゃいました」とillyさん。日差しが直に来る過酷な環境での撮影で、音声さんは日焼けし過ぎのあまり水ぶくれになっていたとのこと。しかし鶴岡慧子監督は一切妥協しなかったといいます。

逆に寒さで苦労したのが、完山監督の現場。筑後地方に伝わる三大火祭りの一つ「裸ん行」。2月の極寒の中、松明を手にしたしめこみ姿の男衆が市内を激走します。撮影時、寒さは並大抵ではなかったようで、インタビューに登場する小学生も震えながらの撮影となったそう。

illyさんはロケハンにも同行しており、スタッフの苦労や作品に向ける思いを知り感謝していると語ります。この作品には千人以上の市民が映画に関わっており、主題歌は新潟の20あまりの幼稚園、保育園の780名以上の子供たちが一緒に歌うという素敵なシーンが実現しました。

その後も、美味しいラーメンなどご当地グルメの魅力や地域の皆さんの暖かさ、そして伝統産業など、ご当地自慢対決の様相になってきた完山監督とillyさん。それぞれの地域に対する思いの深さが、作品を超えて伝わってくる時間になりました。

また函館で作品を撮りたいという野望あり!『函館珈琲』

《インディ・フォーラム部門》『函館珈琲』が上映となり、西尾孔志監督、出演の黄川田将也さんに加え、Azumiさん中島トニーさんも駆けつけました。本作は、函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ作品の映画化で、会場にいらしたその受賞者、いとう菜のはさんも紹介されました

4年間に渡ってCO2のディレクターを務め、監督業としても大阪で活動してきた西尾孔志監督。第七藝術劇場での上映に「地元に届けることが出来て嬉しい」とご挨拶。主演の黄川田さんは西尾監督について「これをしないでということがなかった。方向性は伝えて、後はよろしくと言ってもらえるのが信頼されていると感じました」と振り返られました。

黄川田将也さん

西尾孔志監督

中島トニーさん

Azumiさん

また、ミュージシャンでもあるAzumiさんはエンディング曲の『CARNIVAL(カーニバル)』を手掛けており、曲を書くにあたり「未来を見られるような曲になればいいなと。そんなイントロがエンディングに流れたら、と思って作りました」と曲に込めた思いを語りました。日本には2年前に来たと話す中島さんは、日本語が出てきにくいと戸惑った様子を見せながらも流暢に「言葉の壁がありましたが、あたたかい環境を作ってくださった」とお話しに。

「現場の雰囲気が良くて函館が大阪に次いで好きな場所になりました」と語る西尾監督。また函館で作品を撮りたいという野望も着々と育っているようです。『函館珈琲』は、劇場公開も決定。西尾監督は「小さな映画は皆さんのお気持ちでどんどん広がっていくのでよろしくお願いいたします。またAzumiさんの『 CARNIVAL(カーニバル)』のビデオクリップを僕と助監督の高橋明大くんが手掛けましたので、ぜひ観てください」とアピール。今後の展開も気になるトークとなりました。

“京都の時代劇とは何であったか”への徹底追及を形に
スペシャル・プレゼンテーション 『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』

スクリーンを見て、音を聴いて、初めて内容がつたわるドキュメンタリー映画、中島貞夫監督の『時代劇は死なず ちゃんばら美学考』が国立国際美術館にて上映されました。上映後には中島貞夫監督がご登場。このドキュメンタリーについて、監督のトークが展開しました。

本作は、監督が次に企画している時代劇映画を準備するあいだ“京都の時代劇とは何であったか”を徹底して考えようと思い製作にとりかかった作品。「牧野省三監督が築いた京都の時代劇の基礎に、日本の文化伝統の中心地である京都の特性や、震災・戦争といった近代の歴史がからまって、京都の時代劇は形づくられていきました。京都という土地は、時代劇を製作するために有利な条件が最初からそなわっていたことも、京都で時代劇が盛んになった大きな要素です」と解説。

また、時代劇にとって“ちゃんばら”とは何か、という話になると「時代劇というドラマが必然に追求するのは“動くものの究極の形”です。“動くものの究極の形”のなかに含まれる“パフォーマンス”は、日本人に独自の“生と死”の考え方を、ムダを削ぎ落とした極限の対比のうちに浮かび上がらせます。それが目に見えるものになったものが“ちゃんばら”なのです」と監督。

その後、会場からは、中島貞夫監督の過去の作品のエピソード、日本映画史110年のうちほぼ60年を撮影所で生きた監督の経験、次作の準備状況などが聞かれ、熱心に、かつ笑いを交えてやりとりされました。続いてサイン会でも、そのおひとりお一人に、中島監督は親しく語りかけお話を聞き、あたたかい雰囲気が会場に満ちました。

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