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国民的アイドルを想う優しさ漂うトークに 『3688』

ラストシーンで流れる曲の余韻としっとりとした感動が残る中、《コンペティション部門》『3688』ロイストン・タン(陳子謙)監督と主演のジョイ・チュア(蔡淳佳)さんが登壇されました。

「こんにちは。ロイストンです。はじめまして。あいしてるー、オーサカ!ハハハ!」と響きのいい素敵な声で日本語の挨拶で、会場は一気に和やかムードになりました。続けてジョイ・チュアさんも「皆さんこんにちは。大阪に来られてうれしいです。(最後は日本語で)コンニチワ」とご挨拶。

本作は、監督にとってアイドルだったフォン・フェイフェイが亡くなり、いつか自分の両親を彼女のコンサートに連れて行ってあげたかった……という夢を叶えるため、映画でその夢を実現させたいところから始まった、とのこと。

初めて映画に主演された歌手のジョイ・チュアさん。劇中ではのびやかなすばらしい歌声を披露されています。「役柄を理解するにつれ、のめりこんでいきました。演じること、そしてフォン・フェイフェイの歌を歌うということは私にとってプレッシャーではありましたが、同時に大きな満足を感じています」とジョイ・チュアさん。監督からも「彼女が歌うシーンは8分間と長かったのですが、それをライブで一気に歌い上げて、あのようなシーンを撮ることができました」とのコメント。

ロイストン・タン監督

ジョイ・チュアさん

物語で描かれる認知症そして介護問題について聞かれると「アルツハイマーは、シンガポールでも非常に社会問題となっており、この映画は実話をもとに脚色、製作された」とのこと。そして、「私たちは忘却というものを責める必要はない、むしろそのこと自体を、過ぎ去ったものに対して祝福を与えるということをしていきたいと思った」と優しい語り口で述べられました。

時にコミカル、時に切なく、作品全体に漂う温かさ。認知症の父を思う娘の気持ちがフォン・フェイフェイの歌と相まって、胸にぐっとくる作品です。

人間味にあふれる登場人物は監督の周りの人たちがモデルだった
『豚のような女』

《コンペティション部門》『豚のような女』上映終了後、拍手に迎えられて、チャン・ムニル監督登場。「みなさん、お会い出来て嬉しく思います。私の映画が日本で上映され、日本の皆様が観て下さって、本当にありがとうございます」とご挨拶。

「島育ちの人たちには、都会の人たちと違う“どんなことがあっても、くじけず生きて行く”という気質があるのです」と早速作品内容について話がすすむ監督。確かに主人公をはじめ3人の女性はとてもパワフルで魅力的。彼らのモデルとなった人は?の質問に「3人の女性だけでなく、全ての人物が私の周りの人たちをモデルにしています。私が近くで目撃したエピソードばかりです。ほんとに何でもないことで喧嘩したりする姿が微笑ましく美しく映りました」と監督。

また前作から久しぶりの新作。次回作までまた長く待つことになるのか、というファンにとっては切実な質問には「私は80年代に大学で勉強した世代です。80年代というのは民主化闘争が盛り上がった時代で、私も大学で勉強するよりも、街に出てデモに参加していました。多感な時期をそういう時代で過ごしたもので、映画のなかで何かをしなければならない、と考えるタイプです。そして、映画には、“人間探求”が必要だと思っています。韓国社会が積み上げて来たものの中に希望をみいだし、力強く生きて行く人間の美しい生命力を描いていくことに大きな意義があると思っています。ただ、そういう映画への資金は簡単には集まらないです」つまりは、またしばらく待つことになるのかもしれませんが、楽しみに待つとしましょう。

全裸シーンでは、撮影現場みんなが裸に?!

瑞々しさが光る『レイジー・ヘイジー・クレイジー』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2016》『レイジー・ヘイジー・クレイジー』が上映となりました。本作は、女性の監督が女性の性を自然体に描き出した、香港映画新世代のジョディ・ロック(陸以心)監督デビュー作。『恋の紫煙2』『低俗喜劇』(共にOAFF2013にて上映)で、パン・ホーチョン監督のもと脚本家としての腕を磨いたジョディ・ロック監督が、女子高校生3人を主人公に彼女たちの性や恋を独特の感性で描いています。

上映後のQ&Aでは前日の《HONG KONG NIGHT》にも登壇した出演のアシナ・クォック(郭奕芯)さんコイ・マック(麥芷誼)さん、そして撮影監督のジャム・ヤウ(邱忠業)さんが再びご登壇。大きな拍手が起こりました。

全裸シーンも多い本作ですが、「最初から全裸になることを聞いていたが、少女の気持ちを描く話なのでやろうと思った」とアシナ・クォックさん。またコイ・マックさんは「『恋の紫煙2』などを観て、パン・ホーチョン監督が大好き。今までの香港映画と違うと思っていたので、彼が関わる映画で新人が出られるチャンスはなかなかないはずだから」と出演の理由を明かしました。

アシナ・クォック(郭奕芯)さん

コイ・マック(麥芷誼)さん

撮影監督 ジャム・ヤウ(邱忠業)さん

撮影中は一切妥協を許さない、怖いイメージがあったというジョディ・ロック監督。「本作のために監督も含めて出演者が3ヶ月以上一緒に住み、みんなが一つになれるように手配してくれた」と語りながらコイ・マックさんが感極まって涙しながら監督への感謝を口にする場面も。

本国香港でも反響が大きかったというこの作品。「プロデューサーのパン・ホーチョン氏はいわゆるドラマの芝居が嫌いで、とにかく自然さを求めるため、全裸シーンの撮影ではパン・ホーチョン氏の提案で全員裸になり、主演の3人にプレッシャーを感じさせないようにした」と明かしたのは、現在大阪に移住した日本語が堪能なジャム・ヤウさん。終始ムードメーカーとなり、初々しい主演女優の二人を見守っている姿も印象的でした。本作は日本での劇場公開も決定。香港映画の枠を超えた女性の本音を描くジョディ・ロック監督。今後の活躍が本当に楽しみです。

前日の《HONG KONG NIGHT》での『レイジー・ヘイジー・クレイジー』チーム。

美しいお二人とともに、ここでもジャム・ヤウさんがムードメーカーとなり、
会場を盛り上げてくださいました。

女優・モデル・歌手としてマルチな活動をするジェス・チョン監督登場

『わたし、ニューヨーク育ち』

特集企画《ニューアクション!サウスイースト》『わたし、ニューヨーク育ち』の上映後、ジェス・チョン(張爵西)監督が笑顔で登場。Q&Aの時間がもたれました。

日本でも 『男たちの挽歌』シリーズの出演が印象強い名優ティ・ロン(狄龍)さんのキャスティングについて監督は「2012年、マカオの映画祭で初めて会った時に、じっと座ったまま全く笑わないかっこ良さに、この役をやってもらいたい!と思いました」とのこと。

一方、“ニューヨーク育ち”である子役については「可愛いがどこか言動が憎らしい。だから笑顔がいい、また、演技をつくらない、初めて演技をする子がいい」という条件で、起用されたのがタン・チンリン(陳沁霖)。泣く演技だけ比較的苦手だったらしく「監督、今日は泣けるかもしれないから今日、泣くシーンを撮って」と言ってきた、というほほえましいエピソードも披露されました。

これまでのプロデューサーという立場でもあったジェス・チョン監督。しかし、今回脚本を書いたことで「自分で監督してみたら」と言われたのがきっかけでメガホンをとることに。「やってみて気づいたのは、プロデユーサーだと予算を常に気にしなくてはいけないけれど、監督は『もっとお金をかけさせて下さいよ』と強く言える立場だとわかったこと」とユーモアを交え答えられました。

また、字幕に頼る上映では内容が理解してもらえないのではと心配していた、という監督。しかし「この大阪での上映では皆様が笑ったり泣いたりの反応をして下さり、安心しましたし嬉しく思っています。みなさんありがとう」と述べられ、会場中が笑顔となり、この時間が終了しました。

大阪観光中のジェス・チョン(張爵西)監督。
ミナミで出会った“なんでやねん”少女たちとパチリッ!

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