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ラジオDJの映画監督デビュー作には、たくさんの想いがつまっていた

『王家欣 ウォン・カーヤン』

日本初上映となる《コンペティション部門》/特集企画《Special Focus on Hong Kong 2016》『王家欣 ウォン・カーヤン』の上映がありました。Q&Aには、ベニー・ラウ(劉偉恒)監督が登場。

本作の舞台となる1992年について監督は、「アダム・ウォン監督の作品(『私たちが飛べる日』)も1992年が偶然舞台であったので驚いた。ちなみに、彼とは同じ年の生まれなのですが」と話し、「92年当時の人々は、いまでこそインターネットがあるけれど、そんなの関係なしに困ったことがあると実際にやって来て助けてくれた。それは、僕にとって非常に懐かしい思い出。だからこの映画の中には悪い人物が現れません」と語りました。

劇中、幾度とうたわれる「ウォン・カーヤン」の歌。監督曰く「非常に音痴であるが、せっかくラジオDJやっているのだから、自分の音楽を一曲ぐらい持たなければと思っていた」そうで、2009年のころに海辺を歩いていたら、そのメロディをふと思いつき、録音したものだそう。

また、そもそも「ウォン・カ―ヤン」という名前の使用について、「創作の名前だが、香港にはカ―ヤンという名前は非常にポピュラー」と監督。香港で映画の宣伝で、ウォン・カ―ヤンという名前の人は映画を無料で観られるといった企画をしたら、老若男女を問わず会場に来た人全てウォン・カ―ヤンだった、というエピソードも出てきました。

最後に監督は「これはデビュー作。今後はもっともっと良い作品を撮っていきたいと思っているので、また意見、感想などありましたら、ぜひ聞かせてほしい。将来また大阪にやってきて、皆さんにお会いしたいと思っています」と嬉しい言葉でしめられました。

大胆演技で観客を魅了したキム・コッピさん、西野翔さん登場!『部屋のなかで』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》より『部屋のなかで』が上映に。出演のキム・コッピさんと場内で鑑賞していたという西野翔さんが登壇されました。

『部屋のなかで』は老舗のホテルの27号室を舞台に訪れる様々な人々の愛の姿を描いた作品。奔放な逢瀬を楽しむ中で、失った恋の重さに苦しむ人妻を演じた西野さん。今回初めて日本語字幕で作品を観たそうで、「自分の中で想像していたものと違った解釈が出てきてとても楽しめました」とコメント。撮影はエピソードごとだったため他のパートの出演者と会うことがほとんどなかったというお二人。キム・コッピさんも「初めてこういう映画だったのだとわかり楽しみました。皆さんも楽しんで頂いたと思います!」と挨拶されました。

キム・コッピさん

西野翔さん

様々な言語が出てくる本作。脚本は各パートの演者の国籍に合わせてその国の言語でルビが振ってあったそう。これを受けてコッピさんはゆっくりと日本語で回答。「通訳、いました。英語と韓国語。私のパートは韓国語でやるから最初は英語で書いた台本で、翻訳した韓国語の台本をもらって、演技も韓国語でやりました」日本製作の映画(本映画祭『つむぐもの』も!)にも多く出演している彼女の日本語レベルに西野さんから「日本語で書かれていても大丈夫なくらい日本語話せますね!」と太鼓判。

一昨日台湾プレミアが行われたという本作。現地でエリック・クー(邱金海)監督は「シンガポールが建国50周年で、シンガポールの歴史が進んでいく様をホテルのひと部屋が変わっていくことで表現したかった」とコメントされたとか。

お互いの役について西野さんは、「いいですよね。純粋に可愛い。ナチュラルで可愛い女の子がやるべきなのだろうなとは思いますが、やってみたいですね」一方、キム・コッピさんは、「印象的でとても素敵でした。大人っぽくて、優雅で私もそういう役が出来るなら一度してみたいなと思いました」と語られました。

シンガポールでは赤裸々なセクシー描写のせいでなかなか公開が決まらなかったという『部屋のなかで』。しかし、アジア映画の醍醐味がつまった本作に会場は酔いしれる時間となりました。

息子のように感じている初長編作品 『けんじ君の春』

女優である森田亜紀さんの初めての長編監督作品《インディ・フォーラム部門》『けんじ君の春』が上映されました。上映が終わると会場が暖かい拍手に包まれ、森田亜紀監督がご登壇。森田監督から「去年は女優として大阪アジアン映画祭に来たのですが(『デュアル・シティ』)、今回は監督として来られて感激しています」とご挨拶。そして森田監督が呼び込む形で、出演の那波隆史さん隆太郎さん、そして柴田明良さんが登壇されました。

森田亜紀監督

「森田監督が他の監督と違うところは」という問いに那波隆史さんは「昔からの長い付き合いですが、女優から監督になった変化を感じ、彼女なりの映画感がこの作品に出ているように感じる」と話されました。また、隆太郎さんは「監督は独特な感性をもっていて、僕が好きな“The 映画”的な作品になった」とのこと。柴田明良さんは「女性特有のすごさを感じる」とお答えに。

那波隆史さん

隆太郎さん

柴田明良さん

監督の一番こだわったシーンについて聞かれると「女の子たちがケンジにお金を貸すシーンで、頻繁にお金を借りているケンジを表現するために1万円ではなく、あえて5千円にするなど細かいところにこだわった」と森田監督。「息子のように感じており、長く成長させたい」と仰っていた森田監督に答えるように、家族のような空気さえあったキャストの皆さんの表情が印象的でした。

他人事である人の死を、どこまで自分に近づけられるか…

監督の狙いが伝わってくる一作 『夢の女 ユメノヒト』

《インディ・フォーラム部門》『夢の女 ユメノヒト』が上映。上映後、坂本礼監督と脚本を担当した中野太さん、出演の佐野和宏さん峰岸宏典さんが登壇されました。

この作品の意図として監督は「どこか他人事である人の死を、どこまで自分に近づけられるか、ということです」と語られ、またこの物語については「テレビで福島のことを観たりする中で、福島に関するものを撮りたい」と強く感じたからだそう。

中野太さん(左)、峰岸宏典さん

佐野和宏さん(左)、坂本礼監督

会場からの「主人公は声がでない設定にしたのか」という質問に対し、監督は「佐野さんと映画をつくりたいとの思いがまずあって、この作品をつくったので」とのお答え。90年代、ピンク四天王の一人として異彩を放った監督であり、映像の世界に名をはせる佐野和宏さんは、2011年に下咽頭がんで声帯を切除し、声を失っていらっしゃいます。その何ともひょうひょうとしながらも地に足がついた存在感を、まさに監督は求めていらしたのでしょうか。

Q&Aの後もロビーで登壇者と観客の語らいが続いていきました。

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