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「この映画が、技能実習制度について考えるきっかけになれば」

監督渾身の短編『KISARAZU』

衝撃の7分。世界初上映となった《インディ・フォーラム部門》『KISARAZU』の上映前に、齋藤俊道監督が登場されました。

「7分という短く、少し重たい内容ですが、楽しんで……楽しい話ではないですが……観ていただければと思います」と挨拶。また、監督から作品について紹介。「この映画は、“技能実習制度”という日本政府の政策の問題を扱っています。みなさんの中で何人の方がこの制度をご存知でしょうか?中国や東アジア諸国の人たちが最長3年日本で働き、技能を故国に持ち帰るという制度。しかし、実際には劣悪な環境にあります。この技能実習制度の実態を、2006年に実際に起こった事件を一つのインスピレーションにし、フィクションの部分も入れて撮影しました」。

特に主人公の中国人実習生のキャスティングには苦労されたようで、結果、実際の技能実習生の方が演じたとか。上映前の短い挨拶でしたが、監督の人となりもみえ、貴重な登壇となりました。

「この島をありのまま撮った」監督の決断が魅せる『雲の国』

特集企画《台湾:電影ルネッサンス2016》『雲の国』が海外初上映。上映時間57分の一切台詞が入らないドキュメンタリー映画。上映後、会場は観客の皆さんの色々なお話を聞いてみたい、という前のめりな空気に包まれました。

そこに、ホアン・シンヤオ(黃信堯)監督がにこやかに登場。

制作された経緯については「10年ほど前、沖縄の記憶を撮りたいと思っていました。幼い頃より身の周りに溢れていた日本の食品や家電製品。その貿易航路が台湾と沖縄の間にありましたが、10年前に廃止。そこで、沖縄県でも、台湾から最も近い島ということで与那国島を企画として選びました」。

会場からは「何故このような人間がほとんど出てこない映画を作ったのですか?」と直球な質問。監督は「台湾の人たちは与那国島についてよく知っていると思っていました。実際、台湾東部の町では、与那国島との行き来があったのです。しかし、2013年に与那国島に行くと、台湾人の物語は何も残っていなかった。一方その時期は、尖閣諸島や竹島等、日中、日韓で島をめぐる問題が起こっていました。そこで、思いました。島というものは、どの国の所属でもない、地球のものなのだ、と。だからこの島を、ありのまま、人間の存在を感じられないように、シンプルに、動物、植物、地球に存在している生物を撮ったのです」とご説明。

最後に、監督はこうしめられました。「これは退屈な映画だと言われてきました。しかし、この島にしばらく居るうちに、“このように撮れ”と言われたような気がします」と。 圧巻の映像美で魅せるだけでない、島と真正面から向き合った監督の想いが伝わってくるお話でした。

カタログにサイン中にも、それぞれの質問に丁寧に答えてくださいました。

アジアの若き映画人が「死ぬ気で作品に向き合った」『ファイブ トゥ ナイン』

20時15分開始の上映でしたが、多くのお客様が詰めかけた《インディ・フォーラム部門》『ファイブ トゥ ナイン』の日本初上映。上映の前に、オムニバス映画である本作の日本パートの監督である宮崎大祐監督と出演された永瀬正敏さんがご登壇。

宮崎大祐監督

永瀬正敏さん

宮崎監督は永瀬さんに出演をオファーされた理由について、「(企画当初)僕自身が人生の山場にさしかかっていた感じで、どうしても一度はお仕事したい俳優さんにオファーしようと思った」とのこと。永瀬さんは「規模に関わらず監督も演者もみんな死ぬ気で作品に向き合ってきました。後は観客の皆さんに楽しんでいただけたらと思います」と挨拶されました。

上映終了後のQ&Aには宮崎大祐監督、シンガポールのテイ・ビーピン(鄭彌彬)監督、中国のヴィンセント・トゥ(杜海)監督がご登壇。

「なぜ2014年のサッカーW杯ブラジル対ドイツ戦の日の午後5時から翌日の午前9時が舞台なのか?」という会場からの質問に宮崎監督は「ある程度共通の“何か”が欲しかったこと、そして2014年に撮影したことを強く印象づけたかった。その年、一番印象深かったことを考えたら、サッカーW杯ブラジル対ドイツ戦が国際的な認識として印象的な事件だったかなと思い選びました」と説明されました。

「恋愛群像劇ということだが、どの作品も不倫が多かったように思った。これは各国の愛の傾向を表しているのか?」という質問に対し「(映画のように)生徒が教師の愛人になるというのはシンガポールではよくあること」とテイ・ビーピン監督。

宮崎大祐監督

ヴィンセント・トゥ(杜海)監督

テイ・ビーピン(鄭彌彬)監督

ヴィンセント・トゥ監督は「2〜3年前、中国の南の方ではとても労働力が安かった。だから移民の労働者がたくさん働いていたのですが、今はその安い労働力が東南アジアに流れています。なので、不倫を描きたかったというよりその社会的な変換が中国で起こっているということを描きたかった」と語られました。

終始、和やかな雰囲気で進んだQ&A。それぞれの監督の今後にも注目していきたいです。

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