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伝統芸能の世界を新たな解釈、若き発想で映像化 『花、香る歌』

日本での劇場公開をひかえる《特別招待作品部門》『花、香る歌』が日本初上映を迎え、朝早くから会場の外には長蛇の列ができました。

上映後、拍手に迎えられてイ・ジョンピル監督が登場。本作は、韓国伝統芸能パンソリの女流初の唄い手、チン・チェソンさんを主人公にした実話を映画化したもの。「韓国ではパンソリは『恨(ハン)』を表す歌、と言われています。この『恨』のお話は、チン・チェソンさんが、名唱、立派な唄い手になるところを描いているのではなく、女性が唄うことが禁じられていた時代に、『唄いたい、上手くないかもしれないけれど唄いたい』という気持ちを映画化したものです」と解説。

その主役を演じたぺ・スジさんは、韓国でみんなに愛されているトップスター。撮影に入る1年ほど前から練習を受け、時間がある限り熱心に練習されていたそう。「スジさんがこのシナリオを読んだ時、『歌手になりたい、歌いたい』という彼女自身の夢をかなえた姿が重なるので、是非この役をやりたいと言ってくれました」とのお話も。

また監督自身の注目して欲しいシーンについて「チェソンが歌の練習がうまくいかなくて困っているシーンが好きです。スジさんが困って慌てふためいている表情が、私の幼い頃の表情に似ているな、と。スジさんと私を比べるなんて言語道断ですが……。でも、そのシーンが自分の子供時代と重なり、とても気に入っています。」

30代の監督が描いた伝統芸能の世界は、西洋文化も取り入れた新しいもので、若い世代にも届く一品になっていました。

ベトナム人として文化、精神、歴史をもりこんだ作品に 『ベトナムの怪しい彼女』

〈小特集:刷新と乱れ咲き ベトナム・シネマのここ数年〉より『ベトナムの怪しい彼女』が上映となりファン・ザー・ニャット・リン監督が登壇されました。

中国、日本でもリメイクされた韓国映画『怪しい彼女』のベトナム版。リメイクにあたり、苦労されたことを聞かれると「他の国のバージョンと同じだと思われないような“ベトナム映画”をつくってほしいといわれた。そこでベトナム人として文化、精神、歴史をもりこんだ作品に、と意識しました」とファン・ザー・ニャット・リン監督。役柄の細かな設定も使用した楽曲も、ベトナムではなじみ深いものになっているそうです。

会場から今回のキャスティングについて聞かれると「大スターというわけではないのでチケットが売れるかは心配でしたが、大切なのは俳優さんたちにも私たちの思いを感じてもらって演じてもらうことだと思い選びました」と監督は語り、まさにその思いが通じてか、結果的にはベトナム映画史上興行収入1位の大ヒット作となった本作。

また、韓国版ではオードリー・ヘップバーンになっていた主人公のアイドルが、ベトナム版では70年代に大活躍された歌手・女優であるタン・ガーさんを起用。彼女の息子が誘拐され、その子を助けるため立ち向かい犠牲になるという悲しい事件に巻き込まれた方でもあり、美しいというだけでなく、この映画の「母親の子供にたいする自己犠牲」というテーマにもあう人物ということで選ばれたそう。因みに写真館の主人役には、タン・ガーの実の息子さんが演じられているとのこと。

止まらないエピソードの数々に、会場も熱を帯びたQ&Aの時間となりました。

未来への希望を捨てずに香港映画を良い方向へ 『私たちが飛べる日』

《特別招待作品部門》/特集企画《Special Focus on Hong Kong 2016》の香港作品『私たちが飛べる日』の上映後にQ&Aが行われ、脚本・プロデューサーのサヴィル・チャン(陳心遙)さんとプロデューサーのテディ・ロビンさんが登壇されました。質問していただいた方には木製の飛行機プラモデルがもらえるというプレゼント付きのQ&Aに盛り上がりました。

92年という年代設定が『王家欣 ウォン・カーヤン』と同じだった本作。脚本を担当されたサヴィル・チャンさんは「まさか『王家欣 ウォン・カーヤン』と同じ92年になるとは思ってもみませんでした。おそらく私たちがその時代に学生時代を送り、そして80年代、90年代以降に生まれた監督たちも、90年代の頃を良いと思う人が多いので90年代を設定にしているものが多いのではないでしょうか」とお話しに。テディ・ロビンさんは「未来への希望は捨てずに、ここにいるサヴィルやアダム監督といった若い才能のある人たちを前にどんどん推し進めていって、彼らを助けながら香港映画を良い方向に発展させていきたいなと思っています」とその抱負を述べられました。

テディ・ロビンさん

サヴィル・チャンさん

アダム・ウォン監督のカメオ出演が見つけられなかったという観客からの声に「18歳の主人公二人が訪れるライブハウスのバーテンダー役で、『狂舞派』(OAFF2014)のときも同じ役でした」とサヴィル・チャンさん。「アダムはあのシーンの中で一番演技が下手だったよね!」とすかさずテディ・ロビンさん。さらに「私が監督だったらカメオ出演じゃなくて主演をするけどね、アハハ!!」と会場を沸かせました。

Q&A終了後にはサイン会が行われ長蛇の列に。お客さん一人ひとりと楽しそうに会話を交わすお二人が印象的でした。

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