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リー監督作品に香港映画を愛する人たちが集結した『荒らし』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2016》『荒らし』の上映後、ファイヤー・リー(火火)監督、プロデューサーのポール・チェンさん、主演のデレク・ツァン(曾國祥)さんが登壇されました。

「皆さんと同じように私も初めて完成したこの映画を観ました。観る前はすごく緊張していたのですが、今観終わってすごく楽しかったです。皆さんどんどんお友達にシェアしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します」とデレク・ツァンさんはご挨拶。その彼が、脚本を初めて読んだ時の感想を聞かれると「今回、リー監督作品に主演として立たせていただいてすごく嬉しかったです。元々私自身もちょっといかれた映画がすごく好きなので、これは絶対やりたいなと思いました」とのこと。

デレク・ツァン(曾國祥)さん

ポール・チェン プロデューサー

ファイヤー・リー(火火)監督

プロデューサーのポール・チェンさんは「監督になるべく良い映画をつくらせてあげる、そして、なるべく良い俳優たちを探してくるというのが私のミッションだと思っています」と語り、本作で注目すべき、香港映画界を代表する名優、スタンリー・フォン(馮淬帆)さんとラム・シュー(林雪)さんの出演について触れられました。また監督からも「大先輩と一緒に映画をつくることができたことは光栄なことでした」と話されました。

ファイヤー・リー監督は今回が初来日とのことで「日本は綺麗なところですね。私なんかはこんなにボロボロで、口も悪いし恥ずかしいくらい……。皆さんには、こういう映画はいかがでしょうか?」と観客に問いかけると、会場からは盛大な拍手が。「皆様と大阪アジアン映画祭に感謝します。どうぞ、皆さんに私の映画だけでなく、他の香港映画も好きになってくださいね」としめられました。

若き映像作家が刺激し合い形になったオムニバス作品 『十年』

前売りで完売となっていた特集企画《Special Focus on Hong Kong 2016》のオムニバス作品『十年』が上映となりました。上映後、満席の会場は大きな拍手に包まれ、『冬蟬』のウォン・フェイパン(黃飛鵬)監督、『方言』のジェヴォンズ・アウ(歐文傑)監督、『本地蛋(地産卵)』のン・ガーリョン(伍嘉良)監督が登壇されました。

本作を5人の監督でつくろうと思ったいきさつについて尋ねられると、ン・ガーリョン監督が「監督同士のそれぞれのつながりから2013年末にこの5人が集まり、1997年以降変わってきた香港が今後さらにどのように変わっていくのだろうか、という疑問に対して答えを出そうと思い、制作にいたった」とのお答え。

ウォン・フェイパン(黃飛鵬)監督

ジェヴォンズ・アウ(歐文傑)監督

ン・ガーリョン(伍嘉良)監督

会場から「制作途中で雨傘運動があったが作品に影響はあったのか?」という質問に対し、ウォン・フェイパン監督は「作品自体は影響を受けていないが、この運動を通して香港人が変化を求めていることに気づいた」と答え、ジェヴォンズ・アウ監督は「もともと広東語に関する作品を撮りたいと思っており、さらにこの運動の影響は受けたくないと思い自分で探求したが、やはり制作時、情緒の面に関して影響はあった」と明かしました。また、ン・ガーリョン監督は「ちょうど脚本を書いていたときにこの運動が起こり、そこに影響があった。ただ私は自分の考えを作品に出そうと思った」とのお答えでした。

観客から次々と質問がとび、それぞれの心が揺さぶられた上映会となりました。

「実習生に寄り添って描きたい」という気持ちが生んだ衝撃の7分『KISARAZU』

7分という短い時間の中で技能実習制度の問題や実態について深く切り込んだ《インディ・フォーラム部門》『KISARAZU』の上映後に、齋藤俊道監督のQ&Aが行われました。

大学時代に技能実習制度を知り関心を持っていたという齋藤監督。昨年の夏に、社会問題を扱う5分程度の映画を作らないかとデンマークの映画製作団体から打診があり、技能実習生の実態はある意味人身売買にも近いのではないのかと思っていたことを、この企画のテーマに決めた、とのこと。ただし、デンマークの団体から制作費は出なかったため、制作費をクラウドファンディングで集めたそうで、会場にいらっしゃる出資者の友人たちに感謝の意を述べられました。

監督の過去の作品について質問がでると「短編作品がほとんどで最長で40分のものです。これまでは家族の関係を描いたドラマやロマンチックコメディを撮ってきました」と意外にも社会問題を扱ったのは今回が初めてとのお答え。今回、キャスティングについてはかなり苦労したとのことで、技能実習生を保護する団体に連絡を取り、雇用主に怪我をさせ拘置所に入れられた経験を持つ技能実習生の方を紹介してもらい出演してもらったそうです。「キャスティングは映画製作の中でもっとも大事だと思うので妥協しなかった」と齋藤監督。そして「実習生に寄り添って描きたい。彼らの視点から描きたいという気持ちが強くありました」と真摯に語られました。

会場からは「技能実習制度というものを初めて知りとても考えさせられた」といった感想が多くあがり、齋藤監督は「皆さんの心の中に少しでも何かを残すきっかけになればうれしいです」と述べられ、温かい拍手のうちにQ&Aが終了しました。

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