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お昼時の『ご飯だ!』上映は、空腹を満たすほどの充実のトークに

冷たい風が吹く中、たくさんの観客が詰めかけた《コンペティション部門》『ご飯だ!』。入口に飾られたポスターの前では写真を撮るための行列ができ、海外初上映となる本作への期待が感じられました。

上映後のQ&Aには、プロデューサーのテック・リム(林德)さんがご登壇。数々のおいしそうな料理が色鮮やかに映しだされる本作の上映は、まさにお昼時。12時半過ぎに始まったQ&Aの冒頭には、「ランチを前に参加してくれてありがとう!」とリムプロデューサーの言葉で、会場には笑いが弾けました。

『ご飯だ!』は、香港映画でお馴染みの俳優、チャップマン・トー(杜汶澤)さんの初監督作。トーさんはOAFF2015で上映した『セーラ』(ハーマン・ヤウ(邱禮濤)監督)で、プロデューサーも務めている多彩な方。「トーさんは非常に才能のある方で、いろいろなことに挑戦するのが好き。彼の大好きな料理の映画をつくるにあたり『監督は誰に?』となった時、『あなたがやれば?』と提案。彼は『映画の中でたくさん食べたり料理したりできるなら!』ということで引き受けてくれました」とリムプロデューサー。トー監督の料理の腕前はなかなかのものだそう。

使用された音楽については「本作で様々な音楽を使った理由は、中華圏以外にも多くの国の人々に映画を楽しんで受け入れて欲しいから。同じ理由で海南鶏飯を日本の寿司風にアレンジしたりして工夫しています」と話され、このアレンジは、トー監督が長い間あたためていたアイデアとも明かしました。

今日のマレーシア・シンガポール映画界では政府の支援体制も整いつつあり、香港などのスター俳優たちもこの地域を目指していると話すリムプロデューサー。これからも、アジアの様々な国が手を組む「アジア作品」から目が離せません。

おおいに盛り上がったQ&Aは、終始笑いの渦に!『ないでしょ、永遠』

フィリピン発のラブコメディ、《コンペティション部門》『ないでしょ、永遠』。上映後には会場から大きな拍手が沸き起こりました。

その後のQ&Aでは、ダン・ヴィリエガス監督、脚本のアントワネット・ハダオネさん、主演男優のジェリコ・ロザレスさんがそろって登壇。監督とハダオネさんが「映画を観に来てくれてありがとう!」と挨拶。ロザレスさんが「楽しんでくれたらいいな。(涙をふいた)ハンカチはもう乾きましたか?」と続けます。

脚本のハダオネさんから「自分たちの実生活を脚本にしてみたらどうか」と提案をうけたという監督。劇中の主人公ミアは、自分の身に起きた恋バナをもとに脚本を執筆しています。「ということは、ミアのように、ハダオネさんにもロマンスが?」との質門に、3人はクスクス笑い。ハダオネさんは「私たち脚本家がどんな生活をしているのかを映画の中に入れれば、それは永遠のものになります。私は監督もしているので(OAFF2015『運命というもの』)、とても思い入れの深い作品になりました」と話しました。

アントワネット・ハダオネさん

ダン・ヴィリエガス監督

ジェリコ・ロザレスさん

また会場から「ミアの首筋にはタトゥーが入っているけれど、回想シーンでは入っていないが」との質問。ヴィリエガス監督は「時間の違いを出すためにしたことです。フィリピンでは恋人と別れるとタトゥーを入れたり髪を切ったりする人が多い。だからタトゥーがたくさんある人は恋愛した数が多いと言える」とお答え。ここでロザレスさんがニヤリと笑って指差す監督の腕にはたくさんのタトゥーが……。ゲストも会場も大笑いに。

フィリピンの恋愛事情について聞かれると3人はマイクの譲り合いに。結果、マイクを握った監督は「フィリピンの人々は恋愛に対してオープンです。FacebookなどSNSにうまくいっている恋のこと、失恋のことを書き込んだりします」と解説。でも物語の中で、主人公のイーサンは彼女に大切なことを話していないことに触れられると、ロザレスさんが「イーサンはちょっと日本人っぽい(シャイな)んだよ!」と声をあげ、会場は再び笑いに包まれました。

Q&Aの終わりには、観客席をバックに3人で記念撮影。そんな姿に最後まで温かい拍手が送られました。

規則に縛られず撮りたいものを撮るために

自分の身を投じた『そんな風に私を見ないで』

モンゴル出身のウィゼマ・ボルヒュ監督が、在学しているドイツのテレビ映画大学卒業作品として制作した《コンペティション部門》『そんな風に私を見ないで』。故郷モンゴルの祖母に思いを馳せる回想シーンをはさみながら、奔放に愛を求める姿や、近所に住むシングルマザー親子との関わり合いを描き、思わぬ展開をみせていきますが、美しい映像も見どころです。

上映後にはウィゼマ・ボルヒュ監督と撮影のスヴェン・ツェルナーさんがご登壇。大阪の印象を聞かれたツェルナーさんは「関西空港から直でここについたばかりで」と長いフライトを経て会場までかけつけてくださったようで会場もより喜びに沸きました。

スヴェン・ツェルナーさん

ウィゼマ・ボルヒュ監督

「私自身が二つの文化の間で生きていることから、自伝的要素も入った映画になった」というボルヒュ監督。撮りたいものを規則に縛られずに撮るため、自分の身を投じたと語りました。生き方も性も奔放な印象を与える主人公、ヘディについて「自由を満喫し、感じたままに生きる女性を描きたかった」と。

また、衝撃的なラストはあらかじめ決まっていたとのこと。実生活でも親友のイヴァ役、カトリーナ・シュテマーさんとボルヒュ監督、主演のお二人ともが素人なので、その場で即興的にセリフを決めながら撮影したことを明かしました。ヘディが心を通わすイヴァの娘ソフィア役の女の子は「保育園の頃から知っている。感性豊かで、方向性を示しただけで、自分で台詞にしてくれた」。制作の手法、脚本から作品の解釈に至るまで、自由さを貫いたからこそできた作品だと感じられるQ&Aになりました。

上映前から場内がわいたゲスト登場 『つむぐもの』

《コンペティション部門》『つむぐもの』の上映前に犬童一利監督と主演のキム・コッピさんが登場。場内の空気は一気に熱を帯びました。

「久しぶりに大阪に来ました。ぜひ楽しんでください!」と挨拶されたキム・コッピさん。

この作品の撮影は、東京1日、韓国3日間の合計2週間だったそうで「相当タイトなスケジュールでしたが、コッピさんの日本語がだんだん上手くなっていくように撮影していくのが大変でした」と犬童一利監督が話せば、「そんなに大変でもなかったですよ。台本の時からちゃんと教えてくださっていたし、感情の表現のほうが難しかったです」とキム・コッピさん。

犬童一利監督

キム・コッピさん

彼女自身と劇中の役どころの女性との語学レベルを比較しながら、意見を出しあいセリフを決めていったそうだが、最後には、ほとんど日本語で会話していたとか。「聞くのは大体わかるんですが、しゃべるのが難しいです」とキム・コッピさんが話せば、「いやいや、コッピさんは結構しゃべれますよ。撮影の最後のほうとか勝手に『じゃあ行きましょう!』とか指示出していましたから(笑)」と返答。すると彼女が「(日本語で)今はお客さまの前なので、緊張してしゃべれないです」とおどければ、「ほら、ちゃんとしゃべれています」と監督が突っ込む場面も。

最後にコッピさんから「この映画はセリフが多かったですが、撮影も楽しかったです。皆さんにも楽しんでいただけたらと思います」そして、監督から「この映画は介護、日韓、伝統工芸という3つのテーマを扱っていますが、メッセージとしてはすべて“心を通わせることの大切さ”を訴えたいと思っています。大阪では第七芸術劇場で公開決まっており、来週から東京で公開されます。皆さんにぜひ広めていただければと思います」としめられました。

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