開催レポート 5日目
3月12日(火)vol.2
アドリブに託していた!監督のねらった自然な会話が吉『左様なら』
《インディ・フォーラム部門》の『左様なら』が上映となり、石橋夕帆監督、出演の芋生悠さん、祷キララさんが登壇されました。
18ページの短い漫画を原作に膨らませて長編作品にされた本作。象徴的な海岸でのシーンについて監督は「海のイメージは原作から感じました。全体の抑揚を波で表現。いろんな出来事が起こっては引いていく、波が寄せては引いていく、海。それを物語と重ねました」と話しました。
石橋夕帆監督
教室のシーンなど、とても自然で、リアルな会話が展開されている。これに関して「アドリブは多いですね。海のシーン、図書館のシーン、全部アドリブ。どうしても必要なセリフはほんの少し。台本上のセリフは一応あったけど、自由でした」と監督が話される間、芋生さんや祷さんも、合いの手を入れながら答えられました。実際、皆さんで長い時間、話し合い、相談しあって、セリフや動きをつくられていったそう。
祷キララさん
芋生悠さん
「誰か偉人の詩かと思った」という原作者の優れた感性で紡がれた詩。この詩は作品の冒頭とラストに使用されていて「様々なキャストが朗読し、映像が混じる、そんなカオスをつくりたかった」と監督。祷さんは「最初と最後にこの詩の朗読があって、最初を私が読み、最後のシーンではクラスメート達の声が重なって出来た詩。全然違う感じ方、印象になっています」と話されました。また、この作品について「私にとって特別な作品になりました。少し時間が経ってもう一度観てもらえたら、印象がまた変わるかもしれません」と祷さん。
芋生さんは「今回の上映では幅広い年齢層に来てもらえた。学生の話だけど、セリフどおり、大人になっても変わらないものがあると思います。そういうことを感じ取ってもらえたら嬉しいです。大阪で上映できて嬉しかったです」と述べられました。
会場から花束も贈られ、ゲストたちの笑顔もひろがった時間となりました。
驚くほどの長セリフに泣いたのは監督だった『恋するふたり』
芋生悠さん(左)、稲葉雄介監督
特別招待作品部門『恋するふたり』が上映され、稲葉雄介監督と主演の芋生悠さんが登壇されました。
長セリフが印象的な本作。監督は「主人公のふたりとも不器用ゆえに言葉が多くなる役柄でありました。そこを主演の染谷俊之さん、芋生さん、それぞれに異なるアプローチで長いセリフを消化してくれました」と述べられました。
芋生さんは「実は何度も撮り直してもらっています。感じたものを伝えたい、その一心で挑みました」と話されました。50行にも及ぶ長セリフで、13テイクを要した時には、泣いてしまったのは監督だったそうで「女優さんに何度もやり直しをさせてしまい、申し訳ない気持ちでした」と話すと芋生さんは「監督に先に泣かれてしまい、自分は泣けなくなりました」と続けられました。
当初、四輪駆動の車にこだわるセリフがあり、車種も選定していたものの、そのセリフは編集でなくなってしまったそう。しかし「特徴的な赤い車であったり、主人公のノロノロ運転の演技によって、だんだんと愛着の湧くドライブの映像になりました」と監督は話されました。そのドライブシーン。染谷さんも芋生さんも運転免許を持っていないとのこと。では、その運転シーンの撮影方法は?の問いに「マジックです」と芋生さん。また、役柄と自分との性格の違いについて聞かれ、芋生さんは「自分に近いと感じます」と答え、「ロードムービーの撮影とともに、徐々に、役柄に溶け込むことができました」と話されました。
本映画祭では、芋生悠さんの出演作品を三作上映しています。「どの役も、自分の中にある」と芋生さん。それを受け監督も「芋生さんはそういう人なのです!」と彼女の女優魂に太鼓判を押していました。
“JK”が、現場でも仲良く楽しく盛り上げた『JKエレジー』
《インディ・フォーラム部門》の『JKエレジー』が上映となり、松上元太監督、出演の希代彩さん、芋生悠さんが登壇されました。
群馬県の桐生映画祭という短編映画祭で桐生を舞台とした映画をつくらないか、と声がかかったのが制作のきっかけとなった本作。
現場での印象的なことを聞かれると監督は「ほぼ順撮りだったんですが、希代さんが、初めての映画だったのに、撮影が進むに連れて徐々に強くなっていって…これはいい映画になるなと思いました」と述べられました。また希代さんは「現場には、みんな頑張ろう!という雰囲気がありました。みんな仲良いです」と話すと、芋生さんも「お祭に若手みんなで行ってワイワイ騒いだのが、楽しかったですね」とお話しに。
希代彩さん
松上元太監督
ストーリーについて会場から質問がでると監督は「日本の若者の抑圧されている状況をからめ、それでもあきらめずに何とかやっていく…という映画を考えました。下品なものにはしたくなかったし、性の表現で勝負する映画ではないです」と力強く答えられました。
芋生悠さん
その監督の印象を聞かれると、芋生さんは「監督ぽくないというか、偉そうなところがなくて、若いお兄ちゃんみたいな方です」と笑顔に。続けて「上から、こうしろ!ではないので、初めは緊張もしましたが、しだいにほぐれていって、すごくやりやすかったです。私たち友達同士のシーンは、この映画の中で唯一の癒しの部分だったので、そういう意味でもやりやすかったです」と話されました。
そこに、監督は「この映画に出てくる男はみんなクズですが、彼女たちはそうではない。彼女たちには役を離れてもいい関係でいてほしいと思っていました。そういうのは映画の中にも出てしまうので。」と付け加えられました。