← Back
  • LINEで送る

“自分自身をちゃんと見つめる”ことを表現した秀作短編『小死亡』

特集企画《台湾:電影ルネッサンス2019》より短編『小死亡』上映前にイヴェット・チョウ監督が挨拶に立たれました。

監督は「この映画は、企画から制作までかなり長い時間をかけてつくりました。スタッフたちはここに来ることができませんでしたが、日本のみなさんがどんな風に感じてくださるのか、とても楽しみにしています」述べられ「本作は中年になった女性が、自分はどういう人生を生きたいのか、自分の欲望をさぐっていく“自分探し”の映画です」と紹介されました。

制作の動機について「私の母や、母の周りの中年になった女性たちが、人生を生きていく中で、100%満足しているとは言えないけれど、何かしら自分たちの着地点を見つけてなんとか幸せに生きていくという、そういう女性たちを見て、撮ろうと思いました」と明かし「“自分が欲望を持っている”ということを、自分で認めて、それを人生の中で実現していくということ、“自分をちゃんと見つめる”ということを表現したかった。私は、自分が内に秘めた欲望や自分が本当に何に感動しているか、ということをちゃんとみつめて行くということが、人生を素敵にすることだと思っています」と語られました。

時、環境によってとらえ方がかわる自身のアイデンティティを体現『WHOLE』

《インディ・フォーラム部門》の『WHOLE』が上映され川添ビイラル監督、脚本を担当し、出演もした川添ウスマンさん、そして出演の伊吹葵さん、中山佳祐さんが拍手の中、登壇されました。また、会場にいらした出演の尾崎紅さんも一緒に登壇。賑わい溢れるゲスト陣となりました。

川添ビイラル監督

川添ウスマンさん

(左から)伊吹葵さん、中山佳祐さん、尾崎紅さん

日本で暮らすハーフの人を描く本作。自分の状況を全く気にしていない“誠”と社会からの疎外感さえ感じ悩む“春樹”を軸に物語がすすみます。こうした実体験を元にした映画をつくることで変化したことを聞かれると監督は「僕は、実は誠にちょっと近いと思うんです。今まで、全然気にしなかったです、いろいろ。でも、この映画を作ってからいろいろなことに敏感になりました。なので、逆に今そういう変化をしているところでもあると思うんです」と話されました。

一方ウスマンさんは「「僕は15歳までインターナショナルスクールに通っていたので、環境がすごく国際的で、いろんな国、宗教の人がいました。その時は全く何も感じていませんでしたが、15歳で学校をやめて働き始めて、その時ちょうど“春樹”の気持ちになったんです。自分自身は日本人だと思っていたんですけど、なかなか受け入れてもらえないことがあって、まさに“春樹”でした。2〜3年経って18歳くらいの時に“誠”みたいに『何を言われようと僕は日本人』という感じだったんですけど、今はなんて言うんですかね、ちょうど“春樹”と“誠”の間です」。実際、日本のパスポートを持っている監督に空港の係員が必ず英語で話しかけてくる、というエピソードが披露され「『もう一つのパスポートを見せてくれますか』って言われるんです。これしかないのに」と監督。

『WHOLE』チームのみなさんによる、飛び出る3Dオバチャーン!

スタッフ・キャストがブレない姿勢で描き切った『女は女である』

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2019》より『女は女である』上映後、メイジー・グーシー・シュン監督、プロデューサーのミミ・ウォンさん、脚本を担当されたジャッキー・ウォンさん、出演されたトモ・ケリーさんとブベー・マクさんが華やかに登壇されました。

製作のきっかけについて「2〜3年前にミミさんとトランスジェンダーに関するドキュメタリーを撮りました。その作品は、トランスジェンダーの人は観てくれましたが、一般の人にはなかなか観てもらう機会がなかった。ならば、映画として一本撮ろうということになりました。ドキュメンタリーでは、トランスジェンダーの方が持っている感情を表現することが難しかったので、映画では彼女たちの感情や生きている様を込めたいと思いました」と監督が説明されました。

メイジー・グーシー・シュン監督

ミミ・ウォンさん

また、ミミ・ウォンプロデューサーは「監督とは20本くらいの映画をつくってきた関係がありましたので、監督、脚本、私のゴールデントライアングルで、一緒にやりましょう!と準備をはじめました。そして、大胆にもクルーも全員女性で、と目指しましたが、香港の映画界では女性のクルーが少ないという現状もあり、すべて女性でとはいきませんでした。それでも、ほとんどを女性で固めました」と重ねて製作過程について語られました。

ジャッキー・ウォンさん

トモ・ケリーさん

苦労した点としてジャッキー・ウォンさんは「難しかったのは、監督、私がトランスジェンダーではないので、わからないことがあったこと。その時に、ミミが助けてくれて、お友達やいろんな背景を持つひと人を紹介してくれて、脚本に結び付きました。この作品で、トランスジェンダーについて、理解を深めてもらいたいと思います」と話されました。

キャスティングについて監督は「脚本を書いたとき、ドキュメンタリー撮影時にインタビューしたことのあるトモさんがいいなと思い、早くから出演を想定していました。そして、多くの人に見ていただきたかったので、アマンダ・リーに出てもらいたいと思いました。彼女は、香港でLGBTを支持してくださっており、脚本を見て決めていただきました」と話されました。

ブベー・マクさん

本作に出演された感想を求められるとブベー・マクさんは「香港で上映され、『トランスジェンダーと一緒に作品に参加して、何か特別な思いを持ったか?』と、多くの人に聞かれました。でも、特別なことは何もありませんでした。女性は女性ですし、人は人です。日本の人たちのものの見方は開放的だと思っていますが、これから、香港の人、世界の人が今からいろんな境遇の人、背景を持った人を理解し、受け止めてもらえればいいなと思います」と語られました。

トモ・ケリーさんは「日本では、LGBTについての情報量が多いと思います。香港はほぼ作品もありません。LGBTの人がどんな人物で、どんな考え方なのかというのが、香港、日本の人にも、より理解していただけたらと思います。香港で、トランスジェンダーがトランスジェンダー役をするのは初めてかもしれません。香港でも日本でも、チャンスがあれば、自分の立場から情報を発信していきたいと思います。自分の活躍を見ていただいて、少しでも、友達の関係や信頼しあえる関係になれたらいいなと思います」と完璧な日本語で話されました。

会場から惜しみない拍手がゲストたちに贈られました。

← BackNext →