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ふんわりとした雰囲気に会場も癒された『ココロ、オドル』

《インディ・フォーラム部門》『ココロ、オドル』の上映後、岸本司監督と出演の尚玄さんが登壇されました。島の自然と3つの家族の物語を描いた本作。岸本監督は「時間と場所を考えて、物語を3つ並べてつくっていきました」と話されました。

岸本司監督

尚玄さん

また劇中、“満月荘”という民宿で働いている役を演じた尚玄さんは「監督とはもう10年以上一緒にやっているので、リラックスして楽しみながら演じました」と話され、笑いのテンポに気をつけて演じたことを付け加えられました。監督からも「キャストが皆ふんわりとした雰囲気で演じてくれた」とのコメントが。

その他のキャストについても話がおよぶと、「妻に逃げられた父親の役を演じた加藤雅也さんについては、短編で賞をいただいた時に会って、ナンパしました。男性をナンパしたのは初めてで」と監督から告白。すかさず尚玄さんが「男性をナンパしたのは初めて?じゃ女性は?」と監督をからかい、会場の笑いを誘いました。

沖縄の海の美しさに感動したという声に、ドローンなどを使いながら、移り変わる海の色など、じっくり時間をかけて撮影したと語る監督。海の自然の美しさや人々のふんわりした雰囲気の作品に、会場も温かな空気に包まれていました。

監督の持つ10代の若者たちへの想いが垣間見えた『ワイルドツアー』

《インディ・フォーラム部門》の『ワイルドツアー』が上映され、三宅唱監督が登壇されました。はじめに監督より、「2010年の大阪CO2助成作品として制作した『やくたたず』が自分の原点であり、その大阪で『ワイルドツアー』を上映できたことを嬉しく思います」との挨拶がありました。

この映画は、2017年8月から8ヶ月にわたり、山口県に滞在し撮影したもので、前作の『きみの鳥はうたえる』の編集も同時進行で進められていたとのこと。当初は主演3人のキャラクターがそれぞれ面白く、ドキュメンタリー映画でもいいのではないかと監督は思っていたそうですが、彼ら自身が「素の自分を撮られるより演じた方が恥ずかしくない」と言い、「では、いっそのこと一番恥ずかしい恋愛ものにしよう」ということでこの作品が完成したそうです。

「演技未経験の若い出演者と本音で対話し、関係性を築くことで、自然な演技が引き出せました」と監督は話されました。その上で「若者には、恋愛をはじめ、失敗や思い通りにいかないことを経験し、成長して欲しいです」とも語られた監督。

タイトルの『ワイルドツアー』には3つの意味を込めているそうで「一つは、近未来的な風景ともいえるロケ地、山口の自然環境。二つめは、中高生の持つリアル、大胆さや繊細さ、生々しさ、三つめは、中高生がこれから向かう世間の荒波を意図しています」とも明かされました。

リアリティを追求するための丁寧な映画づくりが見えてきた『ピア~まちをつなぐもの~』

《特別招待作品部門》より『ピア~まちをつなぐもの~』が上映され、綾部真弥監督と出演の細田善彦さんが登壇されました。

最終上映回だったこともあり、お二人から「遅くまでありがとうございます」とお礼の言葉からのスタートとなりました。更に細田さんからは「今、何時ですか?」と時間を気にされ「早めに切り上げないと。一番遠くからきている方は?」と会場へ投げかけると「韓国から!」との声。「韓国へ帰る終電は…(笑)」と会場が一気に和む場面も。

この作品のオファーを受けた時の心境を聞かれ細田さんは「“在宅医療”という言葉は知っていたんですけど、どういうことをおこなっているか、中身を知らず、台本を読んで難しいなと思いました。その後、訪問診療の同伴をさせてもらって、改めて、“在宅医療”のイロハや基礎的なことが詰まった素敵な台本だと思い、ぜひ参加させていただきたいと思いました」と答えられました。

細田善彦さん

綾部真弥監督

演じる上で難しかったことについては「聴診器の使い方です」と細田さん。「色々な先生に現場にきていただき、医療指導していただいたのですが、みなさん使い方が違うので、どのように僕がするか、先生方に向けた気遣いも含めて難しかったです」と話されました。

本作で描かれているリアリティさへの取り組みについて質問がでると監督は「ストーリーはオリジナルストーリーです。特定のご家族の話ではないですね。プロデューサーが、医療・介護のたくさんのかたと深い付き合いをされていて、こういう流れはどうでしょうか?という提案をもとにシナリオライターさんが起こしていくのを一緒に進めました。一つ一つのエピソードは実際に起きた出来事を折り込み、リアリティを損なわないように気を付けました。それから撮影の時は、医師の方や医学療法士の方々に全現場立ち会っていただきました」と説明されました。

細田さんのキャスティングの決め手について聞かれると 「医者としての存在感というか、うそがなさそうなところ。医者としてのスマートさと医師としてのインテリジェンスも感じるし、嫌味なところもできるしというところですかね」と答えられると、細田さんは「冒頭のBMWが似合っていたということころですかね(笑)」と茶目っ気たっぷりに答えられていました。

劇的なことが起こるだけが映画じゃない!監督の持論が語られた『ゆっくり』

短編Cプログラムが上映され、その中の《インディ・フォーラム部門》『ゆっくり』のふくだももこ監督とプロデューサー、脚本の井上純平さんが登壇されました。

早速、この物語が生まれたきっかけについて聞かれると、脚本を担当された井上さんは「映画学校での勉強会に参加することで“男と女がなんか大きい物を運んだら面白くなるんじゃないか”と思いついたんです。大きい物って、石臼とか他も考えたのですが、審判台が面白いということになりまして」と説明されました。

すると監督からは「私はその勉強会には出てなかったんですが、脚本を読ましてもらって、めちゃ面白いやん!となって。出来上がった作品をみて、“脚本面白いな”と思ったことはあるのですが、他の人の脚本を読んで“撮りたい”と思ったことはなかったんです。でもこの脚本は“何か変な話やな”と思ったのと、すごく余白があって…。ト書きも「審判台運ぶ」とか「テニスする」とだけ書かれていて、人物はどういう顔してんねんやろとか考えるのが楽しかったです」と関西弁でお話しに。

ふくだももこ監督

井上純平さん

また、主演の裵ジョンミョンさんは、過去に監督の短編映画に出演されていて「変な空気感があって、こっちが演出しなくても台詞と台詞の間を埋めてくれるいい役者さんだな、と思っていたので、お願いしました」と明かされました。

会場からの声にこたえる形で、自らの映画論を語られた監督。「人と関わることによって何かが劇的に変わることってそんなにたくさんあるわけではないと、今までの自分の生きてきた中で思っています。何か明確なテーマがあって、社会に何かを訴えたいという映画だけじゃ、映画は面白くならないと思っているし、テーマのない映画があってもいいと思っています。劇的なことは何もなかったけれども、いつかこの映画を観た日を思い出した時に『ああ、私の人生もこんな瞬間があって、それによって今があるんかもしれへん』と思ってくれたらいいな、という気持ちでつくってきました」と語られた監督。

更に本作について「何かを提示する映画ではなくて、観ている人に補足してもらわなければいけない映画だと思っています。まず大前提で“映画を観て何かを感じ取ってくれるだろう”という気持ちを私は持っているので、できればそういう気持ちで観て欲しいと思います」と伝えられました。

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