← Back
  • LINEで送る

グランプリはイ・オクソプ監督の『なまず』(韓国)に!
新世代の革新的な作品に、驚きと歓喜の輪が広がった授賞式

今年の映画祭も最終日を迎え、クロージング作品『パパとムスメの7日間』上映前にグランプリをはじめとする各賞の発表が行われました。

司会:ABCアナウンサー北村真平さん(右)

審査委員・プレゼンターの皆さん

観客賞

この映画祭での上映が日本初上映となる作品を対象に観客の投票による得点平均が最高の作品に授与される観客賞は、プレゼンターの落合賢監督(『パパとムスメの7日間』)が、オリヴァー・チャン監督の『みじめな人』(香港)を読み上げました。発表の瞬間、観客からも「待っていました」と言わんばかりの大きな拍手が沸き起こりました。 副賞として薬師真珠より真珠装飾品が贈呈されます。

芳泉短編賞/スペシャル・メンション

60分未満の作品(協賛企画《芳泉文化財団の映像研究助成》を含む)のうち、日本初上映の作品を対象に最も高い評価を得た作品に授与される芳泉短編賞。

芳泉短編賞審査委員のカズ・ワタナベさんにより、スペシャル・メンションはサニー・ユイ監督の『2923』に決定したことが発表されました。

芳泉短編賞

引き続き芳泉短編賞は、ポーリー・ホアン監督の『じゃあまたね』が受賞と発表されました。副賞として次回作研究開発奨励金10万円が贈呈されます。

監督の代理として、台北駐大阪経済文化弁事処文化教育課の羅国隆課長が、プレゼンターの芳泉文化財団静敬太郎代表理事より表彰状を受け取りました。

JAPAN CUTS Award/スペシャル・メンション

次に、インディ・フォーラム部門の日本映画を対象に、米国ニューヨーク市のジャパン・ソサエティー(日本映画祭「ジャパン・カッツ!」主催団体)がエキサイティングかつ独創性に溢れると評価した作品に授与される JAPAN CUTS Award が発表されました。

プレゼンターのジャパン・ソサエティー能恵アンバーさんより、まずは川添ビイラル監督『WHOLE』へのスペシャル・メンションを発表。

発表の瞬間、驚きの声をあげた川添監督は「心臓がすごいことになっています。パトロンの方々、スタッフ、キャスト、友達、家族のおかげだと思います。会場に(関係者は)誰もいませんが、どこかで聞いていたら、ありがとうございます」と感無量の面持ちでした。

JAPAN CUTS Award

そして、JAPAN CUTS Award は松上元太監督の『JKエレジー』が受賞。松上監督は、「今東京で映画を撮っていますが、大学生の頃、最初に映画を作ったのは大阪でした。それから18年ぐらいが経ち、大阪で受賞できたことが感慨深く、やってきて良かったです」と、原点である大阪での受賞を心から喜んでおられました。

薬師真珠賞

次に、最も輝きを放っている俳優に授与される薬師真珠賞は、『アサンディミッタ』の主演女優ニルミニ・シゲラさんが受賞。映画祭に観客としても足繁く通われ、会場の皆さんと交流を重ねたシゲラさんの受賞に、客席から温かい拍手が起こりました。

プレゼンターの薬師真珠・三宅正子さんからニルミニ・シゲラさんに、副賞として真珠装飾品が授与されました。真珠を受け取り、記念撮影後のご挨拶では、「スリランカ映画が大阪アジアン映画祭で上映されたのは2回目だと思います(『パンツ泥棒』(OAFF2018))。しかも私にとって初の出演作品ですので、感動しております。皆さんのことが大好きになりました」と朗かな笑みで、喜びを表現されました。

ABCテレビ賞

次に、朝日放送テレビによって創設され、映画祭で上映された新作映画を対象に、朝日放送テレビが最も優れたエンターテインメント性を有すると評価した作品に授与されるABCテレビ賞について、プレゼンターの朝日放送テレビ株式会社営業局長補佐ならびに総合編成局コンテンツ戦略部の板井昭浩さんから発表。

エドウィン監督の『アルナとその好物』(インドネシア)が受賞し、在大阪インドネシア総領事館総領事ミルザ・ヌールヒダヤットさんが代理で表彰状を受け取りました。インドネシア映画初の同賞受賞に、観客からも歓喜の声が沸き起こりました。
副賞としてテレビ放映権として賞金100万円が贈呈、2020年2月頃にABC放送でオンエア予定です。

コンペティション部門
スペシャル・メンション

来るべき才能賞、グランプリ発表の前に、コンペティション部門国際審査委員のヤクブ・クロリコフスキさんから、リマ・ダス監督の『ブルブルは歌える』(インド)と、ハン・ガラム監督(韓国『アワ・ボディ』)へのスペシャル・メンションが発表されました。

ハン・ガラム監督は、「観客の皆さまがすごく熱心に私の映画を見て下さったので、とても力になりました。スタッフから『いつ賞を取れるの?』と催促されていたのですが、ついに喜びの報告をすることができます」と映画を通しての観客との交流や、スタッフへの素直な気持ちを口にし、喜びを滲ませました。

来るべき才能賞

引き続きコンペティション部門国際審査委員のイヴェット・チョウさんが来るべき才能賞を発表。バイ・シュエ監督(中国『過ぎた春』)が受賞しました。 副賞として賞金20万円が贈呈されます。

グランプリ(最優秀作品賞)

いよいよグランプリの発表!コンペティション部門国際審査委員のサマンサ・リーさんが、授賞式直前の上映でQ&Aを終えたばかりのイ・オクソプ監督『なまず』(韓国)の受賞を発表。その瞬間に、どよめきと歓喜の声が沸き起こり、イ・オクソプ監督とプロデューサーかつ出演者でもあるク・ギョファンさんが驚きと感激の面持ちで舞台にあがり、表彰状を受け取りました。また、 副賞として賞金50万円が贈呈されました。

イ・オクソプ監督は、「こんなに大きな賞をいただけて光栄です。タイトル“Maggie”は韓国語では“マジック”と読み方が似ているのですが、今日この会場でまさにマジックが起こりました」と、心に残る受賞コメントをされました。

最後に、審査委員を代表してサマンサ・リーさんからコンペティション部門各賞の授賞理由が読み上げられました。

スペシャル・メンション 『ブルブルは歌える』(リマ・ダス監督)

「自分たちのアイデンティティを受け入れていくティーンエイジャーたちの成長物語。都会を遠く離れたインドの一地方での若い女性の体験を、率直に誠実に描き、見る者の心を捉えました」

スペシャル・メンション ハン・ガラム監督(『アワ・ボディ』

「一人の女性が自分の体を、そして自分自身を変えていこうとする様子を、成熟した視線で、重層的に描いています。中・上流社会の様々なプレッシャーや期待と折り合いをつけつつ生きていく人間の、嫌な部分にも目をそらさず、優しさをもって表現されました」

来るべき才能賞 バイ・シュエ監督(『過ぎた春』

「地理的、政治的な境界、人と人との境界、私たちの内や外にある様々な境界。多文化社会の中で、子どもから大人へと未知の領域に踏み込んでしまう少女の姿を、伝統的な構成と語り口を用いながらも、監督の新鮮な目線で観客の目を釘付けにしました」

グランプリ 『なまず』(イ・オクソプ監督)

「革新的な語り口。抽象的で複雑なコンセプトを軽妙に描いた手腕に敬意を評します」

記念写真では、グランプリを受賞した『なまず』のお二人をはじめ、晴れやかな表情で受賞者、審査委員、プレゼンターの皆さんが観客の声援に応えました。

授賞式に出席されたゲスト全員で記念写真
素晴らしい作品をありがとうございました!

日本人監督がベトナムで撮影。キーワードは“以心伝心”!
クロージング作品『パパとムスメの7日間』

授賞式に引き続き、クロージング作品『パパとムスメの7日間』の上映前に、登壇中の落合賢監督による舞台挨拶が⾏われました。授賞式の登壇者が去った後、「居残りの学生みたいな感じ」と切り出し、司会のABC放送の北村真平アナウンサーとの掛け合いを始めた落合監督。観客の中にベトナム人がいるか挙手を促し、ベトナム語で観客と挨拶をするなど、瞬時に会場と一体になったトークになりました。

五十嵐貴久氏の人気小説「パパとムスメの7日間」をベトナムで映画化した本作は、昨年12月28日に公開後、すでに100万人近く動員しているといい、日本初上映のこの日のお客様にSNSでの拡散を呼びかけ、日本公開にも意欲を滲ませておられました。

昨年のOAFFで韓国版も上映されましたが、ベトナムで映画化する上で変更を加えた点については、「原作が書かれたのは10年前なので、ストーリーを現代に合わせることと、ベトナム風にすること」でした、と監督。北村アナウンサーからベトナム人キャスト、スタッフとのコミュニケーションについて聞かれると、「ベトナム語は同じ言葉でも色々なトーンがあるので、一生懸命勉強していますが、なかなか習得は難しい。でも、日本にある素晴らしい言葉“以心伝心”を実践し、言葉に出さずとも思いを伝えることもあります」と監督は、むしろそのコミュニケーションを楽しんでいるご様子でした。

ベトナムのチャップリン的存在である喜劇俳優のタイ・ホアさんは、アドリブをどんどん入れてくるそうで、「リハーサルをしても本番にアドリブを入れてくるのはベトナムならでは。僕は現場でしか生まれない魔法を大切にするタイプなので、アドリブをガンガン入れるように伝えています。スタッフがたまにクスクス笑っているのを、英語通訳から聞いて、私が5秒ぐらい遅れて笑うような現場ですね」と撮影での面白いエピソードを語られました。

笑いの話題から、撮影地のホーチミン(ベトナム南部)と北部のハノイを、大阪と東京に例えた落合監督。「ベトナムの北部と南部ではアクセントが全然違うだけでなく、南部・ホーチミンの笑いは、大阪の笑いと似ています。字幕も関西弁の方が通じるかと思ったけれど、そうすると字幕が伸びてしまうので。頭の中で関西弁を想像してご覧ください」とコメント。

最後に、本作でぜひ見てほしいところについては「クライマックスのコンサートは1000人ぐらいのエキストラを導入し、力を入れて撮影しましたが、やはり父と娘の入れ替わりシーンでしょうか。ベトナムは家族の構成人数が多く、家族の繋がりが大きいですが、パパと娘の2人だからこそ強まった親子の愛を共有していただきたいですね」とコミカルさの中にある父娘の物語を味わってほしいと力を込めました。

← BackNext →