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出演者から監督の演出秘話が飛び出した『恋とさよならとハワイ』

《インディ・フォーラム部門》『恋とさよならとハワイ』の上映後、まつむらしんご監督と出演の綾乃彩さん、篠原彩さんが登壇されました。

演技指導について問われると、綾乃彩さんは「リハーサルで役者同士練習する機会があって、監督はその様子をずっと横で見ている。基本は自分でイメージを作って演技していくが、監督が求めるものと違った場合は、また指摘してもらう、の繰り返し」。それを受け、監督は怖いですか?の声に、まつむらしんご監督が「すごい優しいですよ(笑)」と合いの手。

まつむらしんご監督

綾乃彩さん

篠原彩さん

セリフ回しについて綾乃彩さんは「監督の作品では、点や丸などの間やテンポが非常に大切だということを聞いていたので、特にそれらを意識しました」と話すと、監督は「脚本に実際に“……”が多いので、台詞の言い方よりもそちらの表現を重視していました」と答えられました。また篠原彩さんも「演技をする上で、語尾がほんの少し変わるだけで、ニュアンスも大きく変わってきてしまうことに気付きました。なので、なるべく台本に表されている意図に忠実に演技するよう気を付けました」とコメント。

また、演じたキャラクターについて綾乃彩さんは「自分のイメージを大切に演じました。女性として共感できる部分が多く、自分も愛せたキャラクター。初主演映画で、とても思い入れのある作品になりました。このような素晴らしい映画祭で皆さんに見ていただけて感謝しているし、胸がいっぱいです」と述べられました。篠原彩さんも「誰かをモデルにしたというより、むしろ素の自分を出した感じ。キャラクター同様、自分も食べることが大好きで、後から食べるシーンを追加されたくらい、いつも何か食べていて(笑)。初めての映像のお仕事でしたが、監督をはじめとして、皆さん優しく楽しい現場で、恵まれた環境で撮影できて感謝しています」と話されました。

映画の制作方法としてまつむら監督は「予算など、限られた条件の中で娯楽作品をつくるには、やはり閉じた作品でなく、日常の中での思いや考えをベースとして、その上に物語を付けていく方法が、一番良いのではと思った」とのこと。本作に描かれるテーマを選んだ理由として「僕自身が同棲していて、この映画と違って結婚した。自身のエピソードをそのまま取り入れることはしていない。何事も、決意してから行動を実際に起こすまでが大変というか、また一歩踏み出す必要があるので、その部分の葛藤を映画の軸として取り入れたのです」と明かされました。

登壇された皆さんの仲睦まじさに、会場にも笑顔が広がりました。

1人芝居から映画演出へ。監督の人柄に魅了された『29+1』

《コンペティション部門》《Special Focus on Hong Kong 2017》『29+1』の上映終了後、キーレン・パン(彭秀慧)監督が登壇されました。

キーレン・パン監督は「字幕がつくということは、それに心を砕いていただいて、私の映画を大切にして頂いたということ。関わって下さった方々に本当に感謝しています。それにしても、アメリカの映画祭で上映に立ち会った時には、涙を流さなかったのに(笑)。私自身、香港と日本の文化はとても似ていると思っているからなのか。例えば笑いどころであったり、歌であったり、特にこの映画では香港でレジェンドだと言われているような曲を使っているが、それらのファンでいらっしゃる方も多かったり。映画と芸術は時空を超えて、皆さんの心に届くものなのだと強く思いました」と感極まった中で挨拶をされました。

本作はもともとキーレン・パン監督が演じていた一人舞台。女性主人公を一人二役で演じられていたが、映画版では2人の役者が演じました。「キャスティングに関しては、ある日突然光が見えて上手く収まったんです。一人二役できる女優がなかなか見つからなかったので、役を分けてみてはどうかとひらめきました」とキーレン・パン監督。舞台をもう一度見ることはできるのですか、の問いに監督は「2013年の舞台を最後にしようと思った、というのも自分自身が40歳になるので、“29+1”という年齢から大きく遠ざかってしまうから」と語り、その時に観客と約束をしたのが「2035年に、59プラス1をやるということ。その時には、これよりさらにパワーアップしたものができていると信じています(笑)」と明かしました。

また話は物語の内容へ。キーレン・パン監督は「自分に厳しい性格の女性が仕事や恋に挫折し、そんな中、もう一人の女性の日記を読んでいくという流れ。厳しいほうの女性は、自分自身と違って、なぜこの日記を書いた女性がこんなにも楽しく生きていることができるのかがわからない。だからこそ日記をもっともっとと読み進めてしまう。そのうちに、日記の女性の中に入り込み、彼女の経験を自分のもののように体験した気になっていく。こうして、お互いの挫折を交換し、感じあうことで、日記の女性が楽しく生きている理由がはっきりとわかるようになっていく。これをよりリアルに伝えるために、お互いの体験が時空を超えて共有されるといった演出にしていきました」と語り、会場も納得の様子。快活なキーレン・パン監督のトークに観客も映画以上に魅了されたようでした。

根気強い取材が生んだ入魂の一作『ポエトリーエンジェル』

《インディ・フォーラム部門》『ポエトリーエンジェル』の上映後、飯塚俊光監督と音楽を担当された小島一郎さんが登壇されました。

本作は、ボクシングのリングに見立てた舞台の上で、二人の朗読者が詩などを朗読し、どちらの表現がより観客の心に届いたかを競う“詩のボクシング”を扱っています。飯塚俊光監督は小さな頃からこの“詩のボクシング”をご存じで、長年取材を続けていたそう。「『詩のボクシング』は、結局コミュニケーションを鍛えるスポーツなのだ、ということにたどり着いた」と語る飯塚監督。映画をつくるとなった時、キャストには観客や自分に近い人物を配し、ドラマ性を追求されたそう。観客から「キャストはどのように詩と向き合ってああいう詩を作ったのか」という問いに、監督は苦笑い。「女子高生の詩も基本、僕が書いています。キャストに渡して、気持ちが入らないなら変えていいからと伝えました」とのこと。驚くことに、最後の試合のシーンはシナリオ上どちらが勝つのか決めていなかったのだそう。「できすぎだろうというような展開になりましたが、あれは審査員が実際に投票してその場で決まったもの。演者も最後は呼吸できないです、と言うくらい追い込まれていましたね」と飯塚俊光監督は明かしました。

飯塚俊光監督

小島一郎さん

音楽を担当された小島さんは制作中の困った点を聞かれると「実際は20曲以上作ったけれど、数曲しか使っていません。やはり朗読者メインの映画なのでここは音楽いらないよね、ということもおこりまして。重要なポイントだけ音楽を使う、となると、それがまた難しくて。飯塚監督と一緒に色々と話しあいを重ねました」と語り、監督もうんうんと頷きながら「結構話しましたよねえ。すみません、という感じで…」。それに対し小島一郎さんが「いえいえ」と壇上でお二人が頭を下げあう光景も。

「本当は王道のメロドラマを撮りたい」という飯塚俊光監督。劇場公開の決まっている本作が、ますます飛躍するよう、会場では温かな拍手が起こっていました。

コメディ作品制作の裏話、エピソードで会場は終始笑顔に『敗け犬の大いなる煩悩』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》『敗け犬の大いなる煩悩』の上映後、アドリアン・テイ(鄭建国)監督と主演のイアン・ファン(方伟杰)さんが登壇されました。

アドリアン・テイ監督はまず「みなさん、こんにちは」と日本語で挨拶。「元になった中国の作品は、飛行機で観ました。学校の中に、校内一の美少女がいて、変わった友達がいる。脚本もよく練られていました。マレーシアでも共鳴してもらえる内容だと感じました」とリメイク版制作理由を述べられました。

イアン・ファン(方伟杰)さん

アドリアン・テイ(鄭建国)監督

日本語字幕を担当した大阪大学の学生チームにメッセージを求められると、監督は「本当にありがとうございました」と感謝の意を表された後で、「今回の上映では実は日本語字幕にずっと注目していました。かつて日本語を学んでいたこともあって。台詞にはダブルミーニングを持つものが多かったので、難易度が高かったでしょう」と労いました。

また、多くの懐かしいヒット曲やそっくりさんが登場する演出については、「元の中国大陸のバージョンで有名な歌手や曲が、東南アジアではまた変わってくるので、それに合わせて置き換える必要がありました。もちろんそれらは自分が好きな曲でもあります。著作権料を払って使用しています。また、台詞の中に歌詞の一部を混ぜたりもしています」と、こだわりを述べられました。一方、歌手のそっくりさんを見つけるキャスティングチームが大変苦労されたようで“本当に似ている人”を探すのは時間のかかる作業だったとか。その甲斐あってか、観客からは「本物だと思った」という声も聞かれたそう。

主演のイアン・ファンさんは、シンガポールで活躍されている役者さん。今回の出演について「マレーシアの監督から声がかかって嬉しかった。今回、初めて完成した映画を観たが、すごく大好きな作品です」と話されました。また、撮影を振り返って「音楽が一番難しかった。四年前のある仕事で喉を痛めてしまったので、習っていたピアノよりも、歌が心配だったのですが…」と、歌う場面の多い本作は、まさに挑戦であったと語るイアン・ファンさん。「演技指導で監督自身が歌ってみせてくれて、素晴らしい歌で感動しましたよ」とのエピソードも飛び出しました。

上映中に沸いて起こった笑いが、Q&Aまで続いた愉快な時間となりました。

本映画祭で大活躍中のホー・ユーハン監督の挨拶に沸いた『ミセスK』

《オープニング作品》『ミセスK』の二度目の上映回を迎え、上映前にホー・ユーハン(何宇恆)監督が挨拶に登場しました。

今年の映画祭では、《コンペティション部門》の国際審査委員を務めるホー・ユーハン監督の姿は、あちらこちらの会場で見かけられているはず。 おなじみのキャップ姿で登壇され「GOOD EVENING!オオサカ!」とご挨拶。

ホー・ユーハン監督にとっては初めてのアクション映画となった本作。「予算も限られていたけれど、十分にいい映画が撮れたと思います」とはにかむような口調のなかに自信のほどものぞかせた監督。本作は、マレーシアではまだ上映されていないそうで「マレーシアの人たちは、きっと皆さんを羨ましく思っていますよ。見終わって面白かったら、マレーシアの人たちに教えてあげてください。でも、もしつまらなかったら、黙っていてくださいね。」と語り、ホー・ユーハン監督独特のユーモアのある言葉に、会場はあたたかい笑いに包まれました。

審査のためあちこちの会場を駆け回ってくださったホー・ユーハン(何宇恆)監督。ありがとうございました!

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