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“初めてづくし”に緊張の監督も、最後は笑顔に『たぶん明日』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》『たぶん明日』の上映後、サマンサ・リー監督が登壇されました。

「お時間を使ってわざわざ私の映画を観に来てくださりありがとうございます。初めての長編映画で、海外の映画祭に出すのもこれが初めて。このようなQ&Aの時間も初めての経験です」とご挨拶された28歳という若さのサマンサ・リー監督。本作はシネマワン・オリジナルズ映画祭で世界初上映後(観客賞、主演女優賞を受賞)、国内配給がつき、3月1日からフィリピン全土で上映されたとのこと。

物語で取り上げられている性的マイノリティについて、現在のフィリピン国内での捉え方を聞かれると、サマンサ・リー監督は「テレビにおいても有名な俳優がオープンに同性愛者だということは言っていません。映画の中でも、女優役のジェスがキャリアを追いかけるのか?それとも自分の心にしたがってアレックス(同性の恋人)とのことをオープンにするか迷っていた。オープンにできるよう、将来、状況がかわっていくことを願っています」と語られました。

また「もともとこの映画をつくったのは、主に10代の子達にカミングアウトすることを恐れなくていいんだよ、と伝えたかったから。自分たちにもっと問いかけて、自分自身がなれるようにすればいいのだ、と。ただ、完成後、様々な批判も受けました。特に同性愛者のコミュニティの中から、現状を描かれていない、というような批判を受けました。それはつまり、女性同士の関係を描いている映画なのですが、男性の同性愛をきちんと描かれていないと言われたのです」と監督はこの作品を通して感じられたことを語られました。

最後に、劇中で印象的だった楽曲について「とても人気のある歌手に曲を作ってもらう予定になっていましたが、撮影をはじめる2週間ほど前からテキストを送っても返事をしてくれなくなり、結果、映画完成後、7日間で曲を作ってもらいました」と明かされたサマンサ・リー監督。遅れた理由を聞かれると「その人はちょうどレズビアンの彼女と失恋したところで、仕事どころではなくなってしまったそうで…」と最後は監督も会場も笑いでしめくくられました。

やはり日本のヒーローもの、アメコミに影響されていた!これが見納め?!『パティンテロ』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》『パティンテロ』の上映後、ミーク・ヴェルガラ監督が登壇され「お越しいただきありがとうございます」とご挨拶。

日本の映画にも大変興味を持たれているというミーク・ヴェルガラ監督。本作をつくるにあたり影響をうけた作品について「『キック・アス』からも影響をうけたのですが、一番インスパイアされたのは『ピンポン』(監督:曽利文彦)ですね。日本のヒーローもの映画、漫画、アメリカのスーパーヒーローやコミックに影響を受けてつくりました。こういう映画をつくるのは最後にしようと思ったので、私の好きなものを全部詰め込んでつくりました!」とお話しになりました。

「劇中『フリーティングレインボー』という名前をパティンテロの技に名付けたのは、“レインボー”がゲイのシンボルということで名付けました」と監督が話された通り、本作ではセクシュアル・マイノリティについても触れています。「脚本で、『おじさん』と『おばさん』とするところ、『おじさん』と『おじさん』になっていたのですが、そのまま採用して、ゲイのカップルのおじさんが、子供たちを養子にするという設定でつくりました」とも語られ、性別に柔軟に対応しているという面で作品が良い評価を得ていることも明かされました。

ヒーローものには珍しく女の子が主役の本作。話は当然、彼らのキャスティングについて広がりました。「実際キャスティングには3ヶ月程かけました。1日100人オーディションをして、最後の日にやっと主役の女の子を見つけました。パティンテロの負け犬チームを作っていきながら進めていきましたので、彼女が見つかった時にはチームもできあがっていました」とミーク・ヴェルガラ監督。

またゲームとしての“パティンテロ”について問われると監督は「鬼ごっこのアレンジ版ですね。フィリピンでも地域によってルールが違い、暗黙のルールが存在するので、いろいろな地域のルールを取り入れて映画向けにアレンジしました」と説明されました。

ミーク・ヴェルガラ監督の知る日本映画、アニメの話をまだまだ聞き出したい、という空気の中、Q&Aは拍手の中、終了しました。

若き才能がフィリピン音楽界のレジェンドに吸引された一作 『墓場にて唄う』

特集企画《ニューアクション! サウスイースト》『墓場にて唄う』の上映後、ブラッドレイ・リュー監督とプロデューサーのビアンカ・バルブエナさんが登壇されました。

ビアンカ・バルブエナさんからは「この作品で日本を含み17の世界の映画祭をまわったが、大阪は今回が初めてです!」と喜びの挨拶がありました。また、ブラッドレイ・リュー監督は「主演のペペ・スミスさんは1970年に19歳で来日し、日本のロックグループの一員として活動した。J-ROCKの先駆けという意味でも日本との縁がある人です」と説明されました。

また監督は「私はマレーシア人だが、5年前にフィリピンに移住。フィリピンで活動している時に『雲のかなた』(東京国際映画祭2014)にペペ・スミスさんが出演されたのです。その際、彼に『あなたが作ったラブソングで有名なものは何ですか』と尋ねたところ『ラブソングを作ったことが無い』とのお答え。68歳の伝説的なロック歌手で、セックス・ドラッグ・ロックンロール漬けの生活を送ってきた人が、一度も本当の恋愛をしたことが無いというのに疑問を感じずにはいられませんでした」と、その疑問こそが本作制作のきっかけであったことを明かされました。

ブラッドレイ・リュー監督

ビアンカ・バルブエナ プロデューサー

ビアンカ・バルブエナさんは脚本の段階から参加されているそうで「周囲から『監督はマレーシア人なのに何故フィリピンで映画を作っているの』とよく聞かれました。しかし、映画づくりは国境や地理に縛られるものではありません。ペペに対して、今回新しい視点を持ち込んだので、私もこの映画をとても気に入っています」とお話しに。また「1人の老人の話など面白くないと言われ、資金調達には3年半かかりました。制作途中で助成金をもらうことができ、これがきっかけとなり資金調達が楽になりました」とご苦労を語られました。

印象的な引きの映像についてブラッドレイ・リュー監督は「ペペに対するフィリピン人のイメージというのは、アイドル、伝説、カリスマ、酔っ払いで、彼が歌いだすと皆も一緒に歌いだすというものです。しかし、撮影の間見ていると長いこと立っているのも大変といった一人の老人でした。正直な、あるがままの姿を撮りたいと思いカメラを引いて撮影しました」とお話しに。また映像に時々出てくる動物について問われると監督は「よく観てくれてありがとう。解釈はみなさんにお任せしたいと思います。が、動物は主人公の心情を表しているとも言えます。そのままの気持ちでいる時は山羊、自己中心的になると犬が出てくるというように」と答えられました。

ちなみに、撮影前にペペ・スミスさんは軽い脳卒中を患い、1日に6時間しか撮影できず、海外での映画祭プレミア前に2回目の脳卒中を患われたとか。「ただ、今でも酒を飲んでいるのでお元気だと思います(笑)」と伝説のロックンローラーへの愛おしきコメントを付け加えられたことが印象的でした。

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