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東南アジアの文化的一体感をも描く、新感覚作品への想いを語る『インターチェンジ』

《コンペティション部門》『インターチェンジ』上映後、デイン・イスカンダル・サイード監督がご登壇され「おはようございます。朝早くから観に来てくれてありがとうございます。大阪アジアン映画祭に来ることが出来て光栄です。嬉しく思っております」と挨拶をされました。

緻密なクライムサスペンスでありながら、ファンタジー要素もあり、定義づけの難しい今作。監督にあえてジャンルを聞くと「様々な人がいろんなことを言っていますが、『大人向けの困った人々の映画』ということになるでしょうか。西洋映画のジャンルの一部を取り入れて、私自身の文化的背景を含めると、このようになりました」とのこと。

またタイトルの由来について「きっかけは、タイのバンコクで仕事をしている時。うまくいかず、撮影の予定も全てキャンセルされ、くさって落ち込んでいました。そこで書き始めたのがこの映画のシナリオ。バンコクの中心にいて、大勢の人たち、林立する高層ビルとアパート、そして、バンコク・インターチェンジの標識が目に入ったんです。それをそのまま映画のタイトルとしたのが1つ目」とデイン・イスカンダル・サイード監督。「2つ目は、あらゆるものが変わりゆこうとしている、という意味を込めました」とタイトルへの想いを語られました。

物語の鍵ともなる“ティンガン族”についてデイン・イスカンダル・サイード監督は「“ティンガン族”と神話は創作です。ボルネオや私達の国の古くからの部族の調査はしましたが、具体的に選択すると問題が出てくるので、敬意を表して作り上げました。また、この作品ではファンタジーとして古代の部族を描いていますが、私たちは現代を生きているとはいえ、昔ながらの部族的な考え方も残しています。東南アジア一帯の、そういった矛盾を捉えてもいるのです」と答えられました。

写真を撮られると魂を抜かれませんか?の声に「とっくの昔に取られてしまっているから大丈夫」と監督。素敵な笑顔を振りまかれました。

マレーシアの映画でありながら、主要な役にインドネシアの役者を起用していることについて問われると「良い質問をありがとう」と監督は返答し「ボルネオというのは、マレーシアとインドネシアにまたがっている地域。マレーシアの人であってもインドネシアの人のように話す人がいるし、その逆もある。また今は、国境で分かれてはいますが、東南アジアでもインドネシア島近辺の一帯は昔から“サンタラ”と呼ばれ、文化的な一体感があるのです。私は出身国で役者を区別したくありませんでした。さらに、この地域では伝説や物語、文化的背景を共有していますから。なので、例えばシンガポール・フィリピンの人とも今後一緒に仕事をしたいとも思っています」と想いを説明されました。

羨ましいほどの仲の良さ! ゲストトークは笑いの渦に 『キタキタ』

デビュー作『アニタのラスト・チャチャ』(OAFF2014 スペシャル・メンション)の記憶も鮮やかなシーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督が、新作の世界初上映作品《コンペティション部門》『キタキタ』と共に嬉しい再来阪。

上映後には、シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督、撮影監督のボイ・エニーゲスさん、プロデューサーのピオロ・ホゼ・パスクアルさん、そして主演のアレッサンドラ・デ・ロッシさんが登壇されました。それぞれが「アリガトウゴザイマシター!」と元気な日本語の挨拶。

シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督

撮影監督:ボイ・エニーゲスさん

プロデューサー:ピオロ・ホゼ・パスクアルさん

主演:アレッサンドラ・デ・ロッシさん

北海道を舞台に描く本作。劇中、日本語のセリフも多かったアレッサンドラ・デ・ロッシさんは「日本語で知っているのは『コンニチハ』と『アリガトウ』だけ。撮影初日に日本語シーンがあり泣きました。もう少し後にしてくれたらもっと上手にできたのにー!」と笑いながらお話してくださいました。「とっても上手な日本語でしたよね」と司会が合いの手をいれると会場からも大きな拍手が起こりました。

作品制作の経緯として「最初にプロデューサーが脚本をくれたんだけど、私の好みじゃなかったの」とおどけてみせたシーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督。撮影地はオランダ、ヨーロッパ、日本が候補に上がった中から「日本は好きだし、北海道なら撮影許可もおりやすいということで選びました」とコメント。

また「足湯」について問われると「撮影するつもりだった場所が吹雪でだめになったのです。それで代わりに『日本と言えば温泉だから』と、足湯を取り上げることになったの」と監督。“足湯(あしゆ)”と「I see you」(アイ・シー・ユー)にかけて言葉遊びをするシーンは「現地で思いついたのですよ」と北海道で脚本を変更したことを明かされました。終始ジョークを飛ばしていたシーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督。彼女の言葉に大笑いする登壇者のみなさん。映画と同じくユーモアあふれる撮影現場だったことが推測できる光景に会場もハッピーな空気が溢れていました。

上映後のサイン会も長蛇の列。会場の外でもファンとの撮影にニコニコと応じてくださったチーム『キタキタ』の皆さんでした。

毎回チャレンジ!監督の映画制作への精神を垣間見ることのできた『77回、彼氏をゆるす』

《コンペティション部門》、特集企画《Special Focus on Hong Kong 2017》の『77回、彼氏をゆるす』世界初上映後、ハーマン・ヤウ(邱禮濤)監督が登壇されました。

発表される作品ごとに、異なるジャンルに挑戦されている印象の強いハーマン・ヤウ監督。本作はロマンティック・コメディーであることに触れ「純然たるラブストーリーは初めて。映画人として、僕はとてもラッキーです。様々なジャンルにチャレンジすることができましたから」と答えられました。さらに「監督によっては1ジャンルに絞る人もいますが、僕はそういうのは退屈でできない」と監督。

劇中に登場する小津安二郎監督の定宿“茅ヶ崎館”についてハーマン・ヤウ監督は「この場所はヴィム・ヴェンダース監督の映画で知りました。今回の撮影では、小津監督のファンとして、聖地巡礼をできて楽しませてもらいました!」と話されました。

会場からエンディングについて問われた監督は「ハッピーエンドの映画は多いけれど、僕が観客の立場になってみるとそれでは腑に落ちない。自分の映画を撮る時には、やはり現実そのものを表現したいと思っています。もし、主役の男性がもうちょっと丁寧に部屋を片付けていれば…ハッピーエンドになったのかも。このように人間はちょっとした過ちで、悪い結果を呼んでしまうことがあるものですよね」と話されました。また描かれる女性心理については「もちろん経験や観察で得られたものを映画に取り入れています。意識的にまたは無意識的に、男女の好みや価値観は違うものだと思いますが、クリエイターとして映画をつくる時には、男女の区別なくみなさんに気に入ってもらえるよう意識し、つくりあげていきます」とハーマン・ヤウ監督。

会場からの多くの質問にひとつひとつ丁寧に受け答えされる監督。時にはその正直さに笑いも起こる和やかな時間となりました。

上映前からファンに見つかり、さっそくサインに応じられていたハーマン・ヤウ監督。上映後も多くのファンが詰めかけました。

監督の目で、故郷で起きている現実をくみ取り映し出した『大和(カリフォルニア)』 

《コンペティション部門》『大和(カリフォルニア)』が上映され、宮崎大祐監督、出演の遠藤新菜さん、内村遥さん、加藤真弓さん、Kuroyagiさんが登壇されました。

まずタイトル『大和(カリフォルニア)』について宮崎大祐監督は「舞台が僕の故郷である大和市、そして日本という意味での“大和”だが、カッコは“フェンスの役割”を果たしている。つまり、大和(日本)の中に、カリフォルニア(米軍基地)がある、ということです」とご説明。「とはいえ、それほど政治的な意味合いを出そうとは思わなくて、あくまでもその手前で起きている現実といったものを撮りたかった」と続けられました。また、監督はこの作品を通し「日本人たるものはどうあるべきかといったイメージが、世間では非常によく流れていると感じているし、中には日本は単一民族国家だと言い切る人もいるが、果たしてそれは本当か?そんなわけはないよね、ということを見せたかったのです。一人の少女を通してハーフの方も、在日の方も、色々な出自の方が当たり前にいる国だという現実を改めて表したかったのです」と語られました。

それを受け、実際に演じられた側の遠藤新菜さんは「アメリカから来た役であって、その役がどういうものかはっきり説明するのがいまだに苦手。日本とアメリカを一番体現している役だと思うし、クラッシャーともとれるし、救いの存在でもあると感じています。役柄に共感できる部分は、同じハーフということで多かったけれど、どちらかというと役柄の方がアメリカ意識が強い。私は日本生まれ日本育ちなので」と話されました。また内村遥さんは「生きていくのに不器用な人たちが、割とはっきり切られてしまう今の世の中で、この演じた人物のような人が希望になればいいなと感じました」と語られました。

遠藤新菜さん

内村遥さん

加藤真弓さん

Kuroyagiさん

加藤真弓さんは「私は眼帯をした役で、その容姿でもうみなさんには何か感じるものがあったと思うし、キムという名前に関して、これは人格形成にはかかわっているとは思います。が、先ほどおっしゃったように、日本には在日の方もアメリカの方も、様々な方々がいる、という理解の中で育ってきた人物だと考え演じました」と話されました。

Kuroyagiさんは、「僕は大して演じていたわけではないですが(笑)普段はラッパーなので、映画のように台詞的なかんじでやったことは初めてでした」とのこと。

次回作について宮崎大祐監督は、何もないと思っていた大和に、実は色々あったという発見からつくりあげた群像劇を思案中とのこと。ゲストの熱心な話に、会場も引きつけられたQ&A時間となりました。

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