開催レポート
 
3月16日(日)最終日 vol.1 クロージング・セレモニー

 

グランプリは、シージ・レデスマ監督『シフト』(フィリピン)へ!

3月7日(金)より、梅田ブルク7、ABCホールをはじめ大阪市内の7会場にて開催してきた「第9回大阪アジアン映画祭」。ワールド・プレミアとなるクロージング作品『そこのみにて光輝く』(呉美保監督)上映前に、クロージング・セレモニーが行われ、グランプリをはじめとする各賞の発表および受賞者の挨拶や、審査委員のコメントが発表されました。

  • 司会は朝日放送 高野純一アナウンサー
  • (左から)国際審査委員のヤン・リーナー監督、トム・リン監督、ユージン・ドミンゴさん

 

観客の皆さんの支持を一番集めた観客賞は、オープニング作品のマー・ジーシアン監督『KANO』(台湾)が受賞。残念ながら授賞式に出席できなかったマー・ジーシアン監督とウェイ・ダーションプロデューサーより受賞のコメントが寄せられました。

「初監督作品で観客賞を受賞したことは、最高の激励で、大きな力を与えてくれます。『KANO』は今、素晴らしい花を咲かせ、飛び立とうとしています。」(マー・ジーシアン監督)

「大阪の観客が私たちの映画を気に入ってくれたことは、とても大きな意味があります。是非台湾に遊びに来てください。熱烈歓迎します。」(ウェイ・ダーションプロデューサー)

※マー・ジーシアン監督とウェイ・ダーションプロデューサーからの受賞コメント全文はこちら >>>

 

朝日放送でオンエアされるABC賞は、北村豊晴監督、シャオ・リーショウ監督の『おばあちゃんの夢中恋人』(台湾)が受賞。

「観客賞かと思っていたら『KANO』が受賞した」と会場を笑わせながら、「今一番したいのは、日本と台湾の架け橋になること。滋賀県出身なので、大阪と台湾にこだわっていきたい。文化的にもとても似ているので、これからも大阪と台湾を盛り上げていきましょう!」と感激のスピーチを披露しました。

 

スペシャル・メンションは、シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督の『アニタのラスト・チャチャ』(フィリピン)。

「ありがとうございます。スペシャル・メンションということで、私も共に上映された5つのフィリピン映画にも敬意を表したい。」(シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード監督/写真左)

「大阪アジアン映画祭のみなさんに心から感謝します」(アルマ・ロドリゲス・デラ・ペーニャ撮影担当兼プロデューサー/写真中)

 

最優秀女優賞『越境』(香港)のカリーナ・ラウさんが受賞しました。

 

来るべき才能賞は、『ローラーコースター』のハ・ジョンウ監督が受賞。代理で登壇した駐大阪大韓民国総領事館韓国文化院のパク・ヨンヘ院長は「監督として初めての作品をOAFFで受賞し喜んでいると思う。これを機会に大阪にも来てもらえるのではないか。」と述べられました。

 

そして、いよいよグランプリの発表。

今年はスタイリッシュな映像でマニラを舞台に、魅力的な主人公の自分探しと叶わぬ恋の行方を描いたシージ・レデスマ監督の『シフト』(フィリピン)が受賞しました。驚きの表情で登壇したシージ・レデスマ監督は、受賞をアナウンスした国際審査委員のユージン・ドミンゴさんと熱い抱擁を交わし、フィリピン映画界の新星の受賞を讃える姿が感動を呼びました。

シージ監督は「まだ信じられません。フィリピンではいくつかノミネートされましたが受賞には至りませんでした。こんな大きな賞に選んでいただき、ありがとうございます。一生懸命がんばったキャストやスタッフ、大勢の方々に感謝します。今回大阪に来れてうれしく、とても光栄に思います。ありがとうございました。」と喜びのコメントを語ってくれました。

 

最後に、審査委員を代表してユージン・ドミンゴさんから受賞理由のコメントが読まれました。コメントを書かれた紙を開きながら「このコメントはトム・リン監督が書いてくれました」と暴露し、会場は大爆笑。国際審査委員の中でスピーチをするときは必ずユージンさんが指名されることに対し、「コメントは書いて」と作成依頼したそうですが、ユージンさん自身の言葉も添え、心のこもったコメントが披露されました。

皆様、こんばんは。2014年の第9回大阪アジアン映画祭の審査委員を務めさせていただき、大変光栄でした。

審査委員は、韓国映画とフィリピン映画の印象が最も強かったということで意見が一致しました。短期間に多くの作品を審査するのは大変な作業です。どの作品も本当に力の入った素晴らしいものであり、たくさん観るのが辛くなかったのは本当にありがたかったです。審査委員は1日4〜5本観るように言われていましたが、本当に楽しい作業でした。

今年私たちが選んだのは、飾らないシンプルさ、正直さ、色々な境界を誠実に押し広げていこうという取り組みを示した映画です。ここで個人的なコメントを付け加えさせていただくと、大阪アジアン映画祭はこれまでにない5本のフィリピン映画を招待してくださいました。暉峻プログラミング・ディレクターがおっしゃったように、今日世界的にもフィリピン映画への関心が高まっていることを反映したもので、とてもうれしく思いました。

私たちがここに集うきっかけをつくってくれた大阪アジアン映画祭に感謝するとともに、観客の皆さん、映画祭のサポーターの皆さんにお礼申し上げます。参加作品の関係者全員に皆様からも大きな拍手をお願いいたします。今回一週間大阪に滞在し、審査の仕事をお二方と務めた訳ですが、色々な場面で観客の皆さんや、大阪の方と交流することができました。本当にみなさん声をかけてくださり、暖かい愛情をもって私たちを迎えてくれたことに、とても感謝しています。大阪アジアン映画祭は、大阪が世界へとつながるゲートウェイとなる、意義ある文化事業となりました。おおきに!

「滞在中に色々な方からチョコレートやクラッカーをもらい3kg太った」と最後まで笑わせてくれたユージンさん。映画祭史上最も笑いが巻き起こった感動のクロージング・セレモニーは幕を閉じました。

 

 

 

監督、出演者にとって大きな意味をもった作品、世界初上映へ

舞台挨拶クロージング・セレモニーに続き、クロージング上映作品『そこのみにて光輝く』の呉美保監督とヒロインを演じた池脇千鶴さんによる舞台挨拶が行われました。

本作の仕上がりについて呉美保監督は「がんばってつくりました。1、2本目は家族の映画でした(『酒井家のしあわせ』、『オカンの嫁入り』)が、今回はラブストーリーです。」と紹介。池脇千鶴さんは「出演している側ですが、台本を読んだり、演じている時よりも、出来上がった作品を観た時が一番面白かったです。」と手ごたえを語りました。この日、残念ながらご登壇できなかった綾野剛さんについて、当映画祭プログラミング・ディレクターの暉峻氏も「本作は間違いなく綾野氏の代表作となる。また2014年日本映画のトップ10には入る作品。」と太鼓判を押していたほど。

  • 池脇千鶴さん
  • 呉美保監督

『海炭市叙景』の佐藤泰志原作小説を映画化したことについて、呉監督は「普通のラブストーリーよりディープ。特に池脇さん演じる千夏のいろんな面を、綾野剛さん演じる達夫が見ていく姿など、普通のラブストーリーより深いものにしたかった。」と一筋縄ではいかない男女の姿を描き込んだ作品の見どころを表現。池脇さんもまた「私はいつも通り素晴らしい台本に巡り合い、その役を生きる、ただそれだけでした。この作品は私の中で大きな通過点になったと思います。」と語られました。

大学時代に出演作を観て以来、池脇さんのファンだったという呉監督にとって、池脇さんの出演は一つ夢が叶ったというエピソードが飛び出すと、池脇さんも「呉監督をご覧になって、みなさん、小さいな、若いな、と思われたでしょうが、そんなかわいらしい人が撮ったとは思えない大きな作品になっていて、びっくりすると思います。」と笑顔で紹介されました。

最後に呉監督は、「私にとっては、この作品はターニングポイントだと思っていますので、大阪で上映できることがうれしいです。よろしくお願いします。」と語り、池脇さんは、「ズンと胸に響く映画です。必ずしも幸せになるとは思いません。でもその中で皆さんなりの愛を見つけて、それを持って帰ってもらえれば一番うれしいです。今日は本当にありがとうございました。」と述べられました。

本作は4月19日(土)、テアトル新宿ほかにて全国ロードショー

公式ホームページ: http://hikarikagayaku.jp/