プレ企画|大阪アジアン映画祭・特別ゼミナール
第5回開催レポート(全6回)2014年1月12日@大阪歴史博物館

いよいよ2014年がスタートしました。映画祭まであと2か月を切り、年賀状すら書けないほど多忙なお正月だった暉峻プログラミング・ディレクター(以下暉峻PD)のぼやき節!?から始まった大阪アジアン映画祭特別ゼミナール第5回。作品選定真っ最中の暉峻PDから、「このお正月に海外でアジア映画を観た人はいらっしゃいますか?」との問いかけには、ソン・ガンホ主演の『弁護人(原題)』(韓国)、アンディ・ラウ(劉徳華)主演の香港が大破壊される話題作『風暴(原題)』(香港・中国)などの作品が挙がりました。

今回は、これから映画業界で注目必須のマカオについて、具体的な動向の数々を検証していきました。

 

■アジア太平洋映画祭開催地として脚光

 

まずは、アジア太平洋映画祭の話題から。昨年で56回を数えたアジア太平洋映画祭は、ここ数年は開催地問題で映画祭の存続すら危ぶまれたそうですが、2年続けてマカオが開催地に名乗りを上げ、このままマカオが開催地として定着する可能性すら出てきたのだとか。暉峻PDは「マカオに映画業界が存在しないことが、今まで業界のしがらみに縛られているがために本当に選出したい作品が選べなかった各国(特に日本)のノミネートにも大きく影響し、映画祭としての主体性を回復することができた」と、マカオ開催の成果を分析しました。カジノ以外のお客を呼び込みたいというマカオ政府の思惑も、映画祭誘致に影響しているそうです。

 

■マカオ、ロケ地としての魅力

 

最近マカオで撮影された映画が目立っているという話題には、アジア映画好きの受講生の皆さんも大きくうなずいたところでした。昨年公開作品の、韓国映画『10人の泥棒たち』は後半のほとんどがマカオでのロケ。また、昨年10月東京国際映画祭でジャパンプレミア上映された香港映画『激戦』は、北京から始まるものの、10分後に舞台はマカオに移っていきます。また、チャン・ツィイー(章子怡)が女優だけでなくプロデュースも手がけた中国映画『非常幸運(原題)』はマカオ、シンガポール、香港を舞台にした作品です。その他、今月末から旧正月映画として中国で公開されるチョウ・ユンファ(周潤發)主演の『澳門風雲(原題)』(中国・香港)など、数々のマカオロケ作品が紹介されました。これからマカオで制作される注目作は、『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』のリョン・ロクマン(梁楽民) 、サニー・ルク(陸剣青)監督コンビがジャッキー・チュン(張学友)、ショーン・ユー(余文楽)、ニック・チョン(張家輝)を迎えて描く香港映画の『大峡谷(原題)』。道路を封鎖しての撮影を含め、映画の重要な見せ場がマカオで展開していくそうです

  

■香港映画人はマカオが好き? インディーズの動きにも注目!

  

マカオには映画業界が存在しないので機材やスタッフが足りず、現時点で撮影地としては優位ではないと言われながらも、街自身の魅力や撮影のしやすさ、大きなホテルがあることなどの利点から、近年香港のインディーズ系監督たちがマカオで撮影することが増えていることも紹介されました。

ジョニー・トー(杜琪峰)やパン・ホーチョン(彭浩翔)など、香港を代表する監督たちだけでなく、アジア太平洋映画祭の組織委員会チェアマンを務めるエリック・ツァン(曾志偉)もマカオにオフィスを構えています。一方、『ビッグ・ブルー・レイク』(OAFF2012)のチャン・ツイシャン(曾翠珊)監督が所属する香港最大手のインディーズ集団「影意志」も、香港での補助金だけでは映画を撮ることが難しくなり、マカオに支部を構えています。「影意志」によるインディーズ作品『無花果(原題)』では、F1グランプリ開催地の1つであるマカオらしい轟音が響き渡る中で日常生活を撮影。また、エリック・ツァンがプロデューサーを務める『澳門街(原題)』は、香港映画界を引退しているエディソン・チャン(陳冠希)も出演している話題のオムニバス作品で、『恋人のディスクール』(OAFF2011 グランプリ受賞作)のデレク・ツァン(曾國祥)も監督として参加しています。

  

■マカオ映画界形成のカギは?

  

マカオでは長編映画製作補助計画が新しくスタートしています(募集は終了)。応募資格は、監督がマカオ人であること、マカオ人が製作することで、スタッフキャストの半分以上がマカオ人であればインディーズ系、商業系に関係なく申請できる補助金制度です。他にも過去に長編を1本製作している、もしくは過去に短編を2本製作していることが条件となっていますが、選ばれるとマカオ政府から150万マカオ・パタカ(約2000万円)の補助金が支給されるので、商業映画の経験がなくてもかなりの規模の作品を作ることが可能になります。暉峻PDは、「このような制度も利用しながら、今後インディーズ系からマカオ映画が増え、映画を撮る人の裾野が広がると、マカオ映画界が形成される可能性はかなり真実味を帯びてくる」と述べ、この日の講義を終了しました。

いよいよ最終回を迎える大阪アジアン映画祭特別ゼミナール。第6回は、2月2日に開催いたします。